第5話:一悶着
(ホノカ視点)
今いる場所はメロネ王国内、西側に存在する町に向かっている。馬車で…
本当は走って行きたいんだけど…
メロネ王国内は馬車での行き来が盛んで、昼夜とはず場所で行き来しているし、地面も綺麗に整備されている。
だから俺が走ったら行くと地面がボロボロになったりめっちゃ迷惑がかかる。
何で盛んなのかというと馬に由来している馬型モンスターと動物の馬のハイブリッドによる半魔獣の動物、通称モンスターホースがこの国には沢山いる。
これは『ミソクリ』と少し違う。ゲームではモンスターそのものを使用していた。この世界ではハイブリッドにする事により強靭なのに懐きやすいというメリットがある為そうしているらしい。
そして盛ん…発展しているが故に護衛の冒険者も半魔獣に騎乗している。
「お嬢ちゃん…これ食べるかい?」
見知らぬ老婆がポーラにパンをあげようとしてる。
「んー」
ポーラは食べていいか俺の顔を見てくる。
「いいよ」
「うん。いただきます!」
「ふふ」
老婆は美味しそうに食べるポーラを優しく見つめる。
「兄妹かい?」
「はい」
「年は離れてるみたいだけど仲良さそうだね」
「まぁ、大切な家族ですから…」
俺はポーラの頭を撫でる。
「そうかい…私達姉妹は不仲だったから貴方達が珍しく見えちまってね…」
げぇ、長い話になりそうだな…
「喧嘩別れしちまった妹に会いに行くんだよ。
もう50年くらいなるかね…もう何で喧嘩したかも覚えていないけどね…
夫が死んだときに会っておかないといけないと思ってね…」
成る程…互いに死ぬ前に仲直りでもしたいんだな…
「おい婆さん、そんな難しい話したってガキは面白くねぇだろ」
粗暴そうな男が老婆を注意した。
「確かにそうだね…ごめんなさいね」
納得してくれて良かった。老婆には悪いけど助かった…
一様会釈ぐらいはするか…
ペコ
「…」スッ
手で返事してくれた。
「妹さんと仲直り出来るといいね!」
俺と違って優しい妹が老婆を励ましている。
「ありがとうね。お嬢ちゃん」
老婆も満足そうで良かった。
「止まれ!」
何だ?御者に聞いてみるか…
「どうしたんだ?」
「護衛の方が何かを発見したようで止められてしまったよ」
「そうか…」
モンスターか?山賊か?
◇
ホノカが乗っている馬車に向かってくる馬型のモンスターに騎乗した集団がいた。
「ちっ、来たな人攫い共が…」ボソ
A級冒険者『槍馬』テウルは前方を睨みながら呟く。
「お前ら!手筈通り行くぞ!」
テウルは8人の部下に指令を出す。
「「「おう!」」」
彼らは馬で走り出し、扇状の陣形を組み始める。
「行くぞ、グレーランス」
テウルは愛馬に声をかける。
「「「“身体強化”!」」」
彼らは自身の愛馬に命令を下す。
「俺が真ん中に穴を開ける!お前らは早めに横を潰せ!」
「「「おう!」」」
テウルは万全を期す為に命令の内容を話す。
クンクン
「何だ甘い匂いが…」
「ヒヒブルルルアァ!!!」
甘い匂いが香り始めると馬達が急に興奮暴れ始める。
「どうした!グレーランス!」
冒険者がどんどんと落馬していく。
「痛…、!、くそ…」
テウル達は落馬したところを人攫いのモンスターに轢かれていく。
「畜生!」
御者は冒険者がやられた事により、反対方向に逃げようとする。
中では混乱が起きていた。
「おい!早くガキを隠せ!」
先程、ホノカを助けた粗暴そうな男が皆んなに支持を出していた。
「きっと奴らは盗賊だ!ガキを攫われない様に隠すんだ!」
「ママ怖いよ!」
「お姉ちゃんどうしよ…」
「リナ…」
彼らは荷台から子供を隠そうとするが…
「ヒヒブルルルアァ!!!」
しかし、逃げて最中に馬車の馬も暴れ出す。
「何だってんだよ!」
御者も混乱して行く中で悪態を吐く。
そして馬車が傾き倒れる。
「くそ…おい坊主…俺が時間を稼ぐ…お前はガキ共を連れて逃げろ…」
粗暴そうな男はホノカに支持を出す。
「私も手伝います!息子をお願いします…」
「俺もやるぞ!俺も(D級だけど)冒険者だ!やってやる!」
馬車の中の大人は決死の覚悟で子供達を逃そうとする。
「その必要はない」
ホノカは彼らの優しいで嬉しくなり、つい微笑んでしまう。
ホノカは馬車から出て行く。
「おい待て坊主!」
粗暴そうな男はホノカを止めるが、ホノカはそのまま盗賊達の前に出る。
盗賊達はホノカを見ると馬を止めて、馬から降りていく。
二人の盗賊がホノカに近づいていく。
「おい、ガキ、荷台に子供と女は何人いる?」
「…」
ホノカは盗賊の質問を無視する。
「おい!」
盗賊は無視された事により、ホノカの服の襟を掴もうとするが…
(“パンチ”)
ミシ…ミシ。
ホノカの拳が盗賊の腹に打ち込まれ、盗賊の骨が軋む。
「ごえ…」
盗賊は痛みに耐えかね気絶する。
「ガキィィィ!」
仲間がやられた事で盗賊が剣で襲いかかる。
ホノカはその手を掴む。
(“投げ技”)
ホノカが背負い投げで盗賊を地面にめり込ませる。
盗賊は受け身も声も出せずに気絶する。
「やれ!!!」
盗賊達は馬に乗り直し一斉に襲いかかる。
「困ったら馬頼りか…」
ホノカは盗賊達の攻撃仕方に芸が無いのに呆れる。
「“殺気”、“威圧”」
ホノカは“殺気”によりヘイトを集中させ“威圧”により敵を弱体化させる。
これにより、馬が恐慌状態になり冒険者や馬車の馬の比にならないほど暴れ出す。
「ヒャラララララララララッラ!!!!!」
盗賊達は落馬して馬に襲われていく。
「時空神法術 パーフェクトストップ」
ホノカは時間止めて、亡くなっている冒険者を蘇らせてはボコボコに傷つけていく。
ホノカは事実を隠蔽し終えて、元の場所に戻り神法術を解除する。
「解除」
「坊主!すげぇな!」
粗暴そうな男がホノカに近づいて来る。
「すまないが、冒険者を運ぶのと手当てを手伝ってくれるか?」
「それぐらい任せろ!」
ホノカと粗暴そうな男は軽症だった者を運び、重症をその場で治療する。
「御者、大丈夫か?」
「あぁ…でも手を貸してくれ…」
ホノカ達は馬車を立て直して目的の町へと負傷者を運んでいく。
(西の町)
「うっ…」
ホノカに助けられボコボコにされたテウルが目を覚ます。
「…?」
テウルは周りを見る為に起き上がろうとする。
「おっと、まだ起きない方がいいぞ」
粗暴そうな男が起き上がろうとするテウルを寝かせる。
テウルもまだ傷が痛むため、大人しく言う事を聞いて寝る。
「と、盗賊はどうなったんだ?」
テウルは喉を馬に潰されてホノカに再び軽く潰されたので声が聞き取りにくい。
「ん?盗賊?それならあの坊主…いや冒険者様が片付けたぞ」
粗暴そうな男は命恩人であるホノカを坊主から冒険者様に言い直す。
「冒険者?」
「あぁ…ちょっと待ってくれ、呼んでくるわ」
「あぁ…頼む…」
粗暴そうな男はホノカを呼びにその場を離れた。
「一体誰だ…?『金馬』か?『炎馬』か?」
テウルは自身が知っている中であの規模の盗賊に勝てる人物達を思い浮かべる。
「入るぞ」
「あ、あぁ…」(「随分若い声だな…」)
「目を覚ましたんだな」
「!?」
テウルは若い少年が入って来た事に驚く。
「どうした?変な顔して」
「いや…その…君は冒険者なのかい?」
「一様な…」
そう言うとホノカは冒険者証を見せる。
「S級!?」
テウルはホノカの冒険者証に驚く。
「ペンドラゴンでS級…その若さ…君はもしかして『黒刀』か?」
テウルはホノカの異名を知っていた。
「知ってたか」
「やっぱり…助かった…この仮は必ず返す…」
「気にすんな…俺は馬車に乗っていたのにあんたらがピンチになってから助けたんだから貸し借り無しでいい」
「そうはいかない…あんたは客として乗っていて俺たちは護衛として雇われていたのに、俺たちは客に助けられたんだ、お礼させてくれ」
「わかった、じゃあ美味いものでも奢ってくれ」
「あぁ、たらふく食わせてやる」
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