第1話: 混沌の転移者達
(20××年)
パシャ
卵が壁にぶつかる。
「おい、阿立!!動いてんじぇねよ!!」
阿立と呼ばれた制服姿の少年は同じ制服を着た5人組に囲まれ卵を投げられていた。
「ひっひっひ、大崩君ノーコン(笑)」
「ちっ…」
大崩は阿立に近づく。
ドス
大崩は実際にノーコンなのに逆恨みで阿立の腹を殴る。
「おい…次避けたら殺すぞ」ボソ
阿立の耳元で話す。
「あ〜あ、倒れちゃった…ゲームならないじゃん…」
大崩の仲間は倒れた阿立の心配ではなく、虐めが続けれない事に不満をもつ。
「スバっちの負けって事で!」
「はぁ〜?!」
「賛成!」
「ちっ…死ね!」
ドス
大崩は腹いせに阿立の腹を蹴り飛ばす。
「スバっちの負けだからメシ奢りね」
「ちっ、わかったよ」
大原はそう言いながら阿立の財布を取り出す。
「おい、お前ら」
このタイミングで担任の教師が来る。
「はい?」
「遊んでないで早く帰れ」
教師は阿立がボロボロの姿を目の当たりにしているのにも関わらずに、一言だけ残して帰っていく。
「「「「はーい」」」」
「って、小銭しか入ってなぇじゃねぇか!!」
大崩は他人の財布の中身に不満して財布の持ち主を理不尽に再び蹴り飛ばす。
「すばる…昨日奪ったのに入ってるわけねぇだろ」
仲間の一人が大崩を笑う。
「使えねぇ」
大崩は帰っていく。
「ゲホ、ゲホ」
阿立はゆっくりと腹を押さえながら立ち上がる。
「…」
阿立は何も言えずに財布をポケットに戻してハンカチで卵で汚れた制服を綺麗にする。
「こんくらいでいいかな?」
阿立は制服をある程度綺麗にすると歩きで帰っていく。
(阿立宅)
「ただいま…」
阿立は痛めで少しフラつきながら自身の立派な一軒家に入っていく。
彼はソファの横に座って机に常に置かれている救急箱を開き湿布を取り出す。
彼は服を脱ぐ…その身体は赤い痣がそこらじゅうにあり、所々切り傷のような物がある…しかし傷だらけの身体は細くはあるが筋肉がついていた。
今日の傷に湿布を貼る。
「うっ…」
湿布が傷に染みて声が出てしまう。
「よし…」
阿立はシャツを着て別室に向かう。
「ただいま…父さん、母さん…」
彼は仏壇の前に座り、手を合わせお線香と昨日の残り物をお供えをする。
「ごめんね…もうバイトに行って来るね…」
阿立は寂しく儚い笑顔を仏壇の親の写真に向ける。1
彼の親は数年前に他界した。遺産はあるが彼らに親の大事なお金を取らない為に殆ど手をつけていない。使う時はバイト代や食費、学費、電気代、水道代、カツアゲ代で所持金が無くなってしまった時だ。
しかも近くの銀行ではなく、大崩達に見つからない様に、一つの市を跨ぎ田舎のATMでお金を卸している。
「行ってきます」
阿立はしっかりと仏壇に挨拶をしてバイトへ向かう。
(次の日の教室)
「舞ちゃん!おはよ!」
「おはよ!るりちゃん!」
舞と呼ばれた少女を囲い、群がる様に女子生徒達が集まり談笑をする。
彼女は学校一の美女、桜舞だ。
そして此方では3人の女子生徒が他の楽しそうな女子生徒を睨みながら話している。
「うざ、ぶりっ子が」
「そんなに可愛くねぇのにもてはやされちゃってさ、社会に出たら苦労するよ。あれ」
「それな〜」
「ねぇ、りあ、スタバかってきって〜」
「は、はい…」
りあと呼ばれた彼女もまた阿立の様に女子グループで虐められている。
ガラガラ
「神無木座れ、ホームルームだ」
教師が二人入りホームルームを始めるようとする。
「はい…」
彼女は命令した女子生徒の方を見て、教師に従い、命令した女子生徒の目の前の席に座る。
「トロいんだよ」
ガン
ビク
命令した女子生徒は文句を言いながら神無木莉愛の椅子を蹴る。
ガラガラ
そしてボロボロの姿の阿立が入って来た。
昨日の腹いせの続きで大崩に暴行受けていた。
「阿立、遅刻だな」
教師はこんな姿を見ても何も気にせずにいつ通り進める。しかも教師二人ともだ。
何故虐めの対処をしないかは阿立に親がいない…ただこれだけだ。
大崩達もこの事を気づいていて阿立に対して犯罪行為をし続けている。更にヤクザの知り合いがいると嘯いて、他の生徒達も威圧している。
神無木莉愛は親がいるおかげで阿立程に酷くはないが、それでも酷い仕打ちを受けている。
阿立や莉愛の様子を見て教師は澄ました顔をしているが、数人の生徒だけは苦しそうな顔をしている。しかし殆どの生徒は教師と同じ様に何も気にしていない。
「…」
「返事」
ペコ
「ちっ」
阿立を口の中が切れていて何も言えないのに、教師は返事を強要しようとする。
阿立は教師達からも酷い仕打ちを受けている。ワザと点数を引かれたり、学費をネコババされたりと犯罪行為をされてる。
「全員いるな、じゃあホームルームを始める。ん?」
「何?」「何だこれ?」「は?」
「ちょ、何?」「光ってる」
教室全体に魔法陣の様な物が拡がる。
「「「うわ!!!!!!!」」」
こうしてある高校の生徒と教師、計42名が消えた。
(光神法国)
「ようこそ!勇者達よ!」
神官の様な男が転移者達に歓迎の言葉を述べる。
「何処?」「外国?」「何なの?」
「これってもしかして…」
殆どの生徒は混乱しているが数人の生徒はこれが異世界転移だと察していた。
「さぁ、勇者の皆さん此方へ」
修道女達が生徒達を別室に案内する。
「勇者だってよ!」
「異世界転生ってやつ?!」
「それを言うなら転移だろ?」
「え?ちょっと待って、帰れるの?」
「お父様、お母様…」
生徒達はこの異世界を楽しみする者や元の世界に帰れるか心配する者に分かれた。
生徒達は内装が教会の様なステンドグラスが美しく輝く場所に案内された。
そこにはこの国の騎士が並んでいた。
「皆さま、この水晶に手を置きになってください。そうしたら皆様が光神様より授かった力がわかります。」
修道女から言われて言葉に不安がっていた生徒達も少しだけ興味を持ち始める。
「じゃあ俺から!」
大崩は我さきに自身の能力を確認しようとする。
ヴォン
『重力魔法Lv.60』
「重力魔法、レベル60?」
「これは素晴らしい!希少な重力魔法です!」
修道女は大崩を褒め讃え騎士達も拍手喝采をする。
「さぁ皆さま!皆さまのお力をどんどん私達に見せてください!」
「やった!“剣術Lv70”だってよ!」
「俺は二つだぜ!」
「俺もだ!」
「よかった〜これなら戦えそう」
「異世界最高!!!」
「良いスキルじゃなかったみたいで舌打ちされた…」
「私…ゴミを見る様な目で見られた」
生徒は次々に自身のスキルを見ては褒められ、舞い上がったり、気分が良くなりまだ先が見えないのにも関わらず異世界を楽しみ始めた者が多い一方、戦闘スキルでは無い為に冷遇され始める者もいた。
「“身体強化Lv.MAX”??!。素晴らしい!恐らく貴方がこの中で最強です!」
修道女はある男子生徒のスキルに驚きながら、今日一に褒め讃える。
「三条!すげぇじゃん!」
「運動神経抜群なのにもっと凄くなるのかよ!」
「三条くんだ。すごい!」
他の生徒達も三条と呼ばれた少年を褒め讃える。
三条こと三条通は勉強はあまり出来ないが運動神経が優秀で色々な大会で賞を獲得している。
彼は自身の力が凄い事を知ると喜ぶ前に右手を胸に置き何かを決意をした。
「何と!?」
そして、また新しくスキルに恵まれた者がでた。
「嘘でしょ…?」
「どうしよ…」
「マズイんじゃない?」
その人物は神無木莉愛だ。
彼女を虐めていた女子生徒3人組は焦り始める。
神無木莉愛は彼女らに不気味な笑みを向ける。
そして今度は…
「『全属性耐性Lv.MAX』…戦闘スキルではありませんね…残念です…では早く退いてください」
学校1の美人、桜舞は戦闘スキルではなかった為、他の人同様に冷たい態度を取られる。
「は…はい…」
桜舞はこの様な態度をされた事がないので戸惑ってしまう。
「酷いあの人達…」
「大丈夫!私達が守って上げる!」
「うん!」
友達は彼女を心配して励ます。
学校の美女が邪険にされた事で男子数人も修道女達に不快感を覚える。
次は最後の一人、阿立の番だ。
「何ですか?これは?」
修道女と騎士達が騒ぎ始める。
「“不動…金剛”?一体このスキルは…?レベルもない…」
修道女は見たこともないスキルに困惑する。
「すみません…私どもにもわからないスキルですが…恐らく“硬化”スキルの上位スキルだと思われます。」
修道女は何とか説明責任を果たす。
「そうですか…ありがとうございます」
阿立は顔色を一切変えずに元いた端っこの方に戻る。
生徒や教師達は阿立の力に不安を感じ怪物を見る様な目で見始めた。
「おい。阿立」
大崩は性懲りもなく阿立に突っかかる。
「何かすげぇスキル得たみたいだけど…あんま調子乗んなよ?」
大崩は阿立の胸ぐらを掴んで凄む。
「お前と俺の奴隷と王様の関係は変われねぇから」
「止めろ」
三条通が大崩の腕を掴み止める。
「何?ヒーロー気取り?どうせコイツのスキルにビビってんだろ?」
「それは君がそうなんじゃないか?」
「んだと?!」
大崩は図星をつかれ三条に殴りかかる。
ドン
しかし三条の柔道の投げ技で倒される。
「此処には君を守ってくれるヤクザもいない!もう君の好きにはさせない!」
三条は阿立の事をずっと助けてあげたかった。しかし真偽のわからない噂があって、阿立を助ける事が出来なかった。
だが、この世界ではその噂も意味がない。
「落ち着いてください!」
修道女と騎士達が間に入り何とか二人を引き剥がす。
「ありがとう」
阿立は三条に感謝する。
「いや…今迄、僕は君の事を見て見ぬフリをしていた…僕も彼らと変わらない…だから感謝しないでくれ…
今迄ごめん…」
彼は頭を下げて阿立に謝罪する。
「しょうがないよ…誰も彼らを止める事が出来なかったし…君が責任を感じる事でもないよ…」
阿立は三条達、クラスメイト達の事を気にしていなかった。そして大崩達に復讐をする気も無かった。
この阿立の言葉に数人の生徒は安心する。
「畜生…三条の野郎…ぶっ殺してやる…」
何も格闘技をやった事もないのに殆どスポーツをやった事ある者に負けた事で恥をかかされた、俺が本気なら勝てると考えながら大崩は三条を逆恨みしていた。
(???)
「召喚は成功したようだな」
「はい」
「贄になった。失敗作達に感謝しないとな…
それで素体達はどんな感じだ?」
「戦闘系スキル26名、非戦闘系16名です。」
「そうか…非戦闘系はいつも通りにしろ」
「はっ、実はもう二つありまして」
「何だ?」
男は要件を直ぐに言わない部下を睨む。
「上位と思われる不明なスキルが一人と四つのスキルを持つ物が現れました」
「何!?ハッ、ハハッハッハッハ!!!素晴らしい!素晴らしいじゃないか!!」
男は歓喜の余りに椅子から立ち上がる。
「その2体は丁重に扱え。いいな?」
「かしこまりました」
「では素体を育ててこい。」
「はっ!」
部下は部屋を出ていく。
「ふふふ、ハッハッハ」
男は余韻で再び笑ってしまう。
「はー。異世界人とは実に不思議な生き物だ…スキルや魔法が無い世界に生まれ、それなのにこの世界に来た途端、成長したスキルを有して転移してくる…」
キュポン
男はワインを開けてグラスに注ぐ。
「私の研究がやっと昇華する時が来たのだ…育ってくれ異世界人…」
男はワインを持ち、ワイン越しに外にいる生徒達を見る。
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コロナワクチンの三回目接種をするので3、4日お休み致します。




