第20話:復讐
(デルーノー邸)
「糞糞糞糞糞糞ぉぉぉぉ!!!!」
ウンカ・デルーノーは憤慨していた。
何を隠そう今回学園を襲わせたのはウンカである。
バン
ウンカは机を叩く。
「アイツらぁ〜!お使いの一つも出来んのか!?」
部下が捕まった事を知らずに叫ぶ。
「このままではあの方に…」
今回の件はウンカの独断で行った上、結果も残せずウンカは焦りに焦っていた。部下を失っているため余計にウンカの立場がない。
「イカクッスにも頼れない…どうすれば…?」
「何をそんなに焦ってるんだ?」
「誰だ!?」
ウンカは急いで振り返る。
そこに立っていたのは仮面をつけた少年ホノカである。
「こ、こどもか?」
ウンカはホノカの事をまじまじと見る
「!、そういえば私兵と我らが同胞達はどうした?!」
ウンカはやっと気づかなければならない事に気づく。
「ソイツらは寝てるよ」
「はぁ?!、戯言も休み休み言え!
おい!誰か!早くこい!」
この状況はウンカの理解を超えている為に、必死に足掻く。
ホノカはウンカの様子に呆れて話を進める。
「何で学園を襲わせたんだ?」
「はぁ?襲って何が悪い?あそこには良い素材が沢山ある。素材を入手するためには手段を選ばないんだよ!!」
(「素材…?」)
「学園に息子がいるのにか?」
ホノカは素材という言葉に引っかかったが、最も聞いておきたい事を聞いた。
「ニルビの事か?、あんな役立たずどうでもいいわ!!息子はもう一人いるし、例え両方死んだとしても複製体を作ればいい!!」
「…」
ホノカは予想以上の答えに憤怒し過ぎて言葉が出なかった。
「糞!アイツらは何をしているんだ!?」
ウンカは未だ諦めずに増援を待っていた。
「もういい…喋るな…」
ボト…
「うぎゃああああああああ!!」
ホノカはウンカの手を切り飛ばした。
ウンカは床に転げ回る。
「そうだった忘れていた…まだ聞かなきゃいけない事があるだ…」
ホノカはウンカの手を無くした腕を踏みつける。
「うぎいいいいいいいい」
ウンカは激痛の為に言葉を話せない。
ホノカは仮面をゆっくりと外す。
「俺の父上は何処だ?」
ホノカの眼は怒りに満ちて声は怒気が含まれている。
「?、?…だ、誰だ貴様は?!」
ウンカはホノカが誰だかわからなかった。
「!!!」
自分でも他人のニルビですらホノカがクーガに似ていると思うのに、クーガを憎くて貶めたウンカが自身を見て、クーガを思い出せない事が信じられない。
ホノカは怒りのあまり震えながら話始める。
「クーガ・トライーガ…それが父の名だ…」
「?!!!」
ウンカはやっと気づいた。
「もう一度聞く…俺の父上は何処だ!?!?」
ホノカは怒号を放つ。
「ひ…ひっひっひっひっひ」
ウンカは急に気味の悪い声で笑い始める。
「そうか…お前は奴の子供か?闇ギルドが暗殺を失敗していたから、何処に隠れたんだとは思っていたがどうせ野垂れ死ぬと思っていた…」
ウンカはホノカに気味の悪い笑みを見せる。
「だが…奴の子をこの手で殺せるんだからなぁああああ!!!
…ない。ないぞ。何処だ?!」
勢いよく吠えるが、自身のポケットを真探り物を一生懸命に探す。
「探している物はこれか?」
ホノカは注射器を取り出す。
「な、何故それを?!!?!」
(学園)
遡る事2時間前。
「それは本当か?」
「は、はい!」
ホノカはウンカの部下を尋問していた。
そのウンカの部下は窶れていた。
(「ウンカが今回の黒幕か…ニルビ君には悪いが今すぐ国外に退避してもらわないと…」)
「約束だ!逃してくれ!」
「逃すわけないだろ…」
「話が違うぞ!!!」
「自分の奪ってきた命を思い出しても同じ事が言えるか?」
「うぐ」
ウンカの部下は図星を突かれて黙る。
「安心しろ殺しはしない…」
ホノカはウンカの部下の頭を掴む。
「闇神法術 ダークヒュプノス」
ヨハンに使った神法術をかける。
「自分達の悪事の証拠を持って王国に自主しろ。仲間が居るなら制圧して連行しろ」
「わかりました…」
ウンカの部下達は操られているとは思えないしっかりとした足取りで向かう。
「学園に行かないとな」
(学園)
「時空神法術 パーフェクトストップ」
ホノカは学園に着くなり、時間を止める。
そしてニルビを探し始め、直ぐに見つけた…教室の瓦礫を一人で外に運んでいた。
「いた。運のいい事に一人だ」
ホノカはニルビを見つけてガチガチに固まったニルビを抱えて運び出す。
ホノカは学園の森に入る。
「よし、解除」
「?、え?ここは?」
ニルビは急に場面が変わっているため、周りを見渡し続ける。
「ごめんね。ニルビ君勝手に連れて来て」
「え?ホノカ君…か」
ニルビはホノカがやった事だと察して少しだけ安心する。
「どうして此処に連れて来たんだい?」
「それなんだけど今回、学園を襲ったのは君の父親の部下だった」
「え?…成る程…」
ニルビは最初、動揺をするが直ぐに納得してしまう。
「これから君と君の家族を逃す。」
「わかったよ…じゃあ連れてってくれ…」
ホノカは手を差し伸べてニルビと握手を交わして転移する。
(デルーノー領の山)
ホノカは停止ささったニルビとその家族を人気のない山に運んだ。
「解除」
「え、ここは?」
「あれ?」
ニルビの母と弟は場面が変わった所為で困惑してしまう。
「シッシャ、母さん落ちついて」
ニルビがなんとか落ち着かせようとする。
「ニルビ!」「兄さん!」
二人はニルビに気づくと抱きつく。
ホノカはニルビの家族の様子をみる。
母親は数年前の流行の穴空いた服、濃い化粧で隠しきれていない痣の数々と痩けた頬…
弟にはサイズの合っていないダボダボの服…火傷の痕や痣が見えている。
「ニルビ学園は?此処は何処なの?」
ニルビの母は困惑したまま息子に質問し続ける。
「母さん…此処はソフィト山だよ。何故此処に来たかというと…」
「そこからは俺が説明します」
ここでホノカが割って入る。
「貴方は?」
ホノカは仮面を外した。
「!?」
ニルビの母はホノカの顔を見るなり泣き始める。
「貴方は…貴方はホノカ君ね?」
「はい…」
「やっぱり…お父様とグレンダ様の二人に似ているのね…
急にごめんなさい…私はその…ムーン家の使用人として働いていたんです…」
ホノカは泣きながら話続ける彼女を止められず唯聞く事しかできなかった。
「使用人でも…騎士爵家の出の私でも優しく接して頂きました…
私はグレンダ様四つ上なのにいつもグレンダ様に助けられていました。」
一通り話したニルビの母は土下座をし始める。
「ウンカの、夫のした事は許される事ではありません!ですが、どうか!どうか息子達は助けて上げてください!お願いします!」
ニルビの母は泣きながらホノカに謝罪と息子達の助命を懇願する。
ホノカは膝をついて話かける。
「ニルビのお母さん…顔を上げてください…」
ニルビの母は恐る恐る顔を上げる。
「貴方達に何かをするつもりはありません…
ウンカは学園に怪しい集団を送りこんで生徒を誘拐しようとしました。
恐らくデルーノー邸に騎士団がやってきます…来る前に貴方達を逃します」
ニルビの母は口を震わせながらゆっくりと喋りだす。
「貴方は…グレンダ様の、ように…お優しいの…ですね…」
そしてニルビの母は再び頭を下げる。
「…」
ホノカはそんなニルビの母親に手を伸ばす。
(風回復神法術 ゴッドブレス)
ホノカは神法術でニルビの家族を癒す。
「え?」「?」「!?」
弟の火傷や痣は綺麗に消える。
ニルビ母の痣は綺麗に消えて、頬も膨らみ、茶髪と額の間から紫色の髪がはみ出る。
ニルビの母は茶髪のカツラをとり、長い自分の黒と紫色の髪を見て泣きながら喜ぶ。
ウンカは妻の髪色がクーガの色と似ている為、炎で焼きとった。
そんな二人を見てニルビは自身の胸と腹を見る。
本来の彼の胸と腹には鞭で打たれた為皮膚が所々無かった。
ニルビと弟のシッシャは母の様に土下座し始める。
「「「本当に本当にありがとうございます…」」」
3人揃ってホノカに泣きながら感謝する。
「いいえ…気にしないでください…俺は最初は貴方達を殺そうとしていました…
ニルビの事を思い出してニルビにアイツの事を聞きました…
貴方達もアイツの被害者なのにアイツを理由に殺す事は出来ない…
すみませんが時間が惜しい…」
ホノカはこの状況に耐えられずに無理矢理話を進める。
「は、はい」
「まずこれに着替えください」
ホノカは3人に平民のような服を渡す。
「あとはこれを」
ホノカは更に金貨が3枚と銀貨が50枚が入った小袋一つと金貨が3000枚が入った大袋を渡す。
「こ、これは?!」
ニルビの母は受け取った袋の中身を見て驚く。
「こっちは俺の餞別です。そしてこっちはウンカが隠し持っていた2/3の財産です。」
「…」
ニルビの母は悲しそうな顔で大袋の金貨を見る。
「ホノカさん…これは王国に渡してください…」
ニルビの母はホノカに大袋を返す。
「どうして?」
「本当はホノカさん、貴方に渡したいのですが、これを貴方が受け取らないのはわかっています…なら故郷の発展の為に使ってほしいんです」
「わかりました…」
ホノカはニルビの母の顔を見て納得した。
「でも…」
ホノカは金貨を一枚だけ袋から取り出す。
「これで美味しい物を食べてください。慰謝料として貰ってもバチは当たりませんよ」
「そうですね…そうします」
ニルビの母は金貨を握れ締めて頷く。
「じゃあ行きます」
「え?」
4人は一瞬で転移する。
(デルーノー邸)
ホノカは3人を安全な場所をデルーノー邸に戻ってきて、時間を止めて隠し部屋を探していた。
「此処か?」
ホノカは怪しい切れ目と穴のある床を見つける。
「ここを」ガチ
ホノカは床の穴に指を入れてスイッチを押す。
ゴゴゴゴゴ。
床が二手に開く。
そこには地下に繋がる階段がある。
ホノカは階段を暫く降りると扉を見つける。
ガチャガチャ。
「開かないか。って事は…これだよな」
扉の鍵穴のある場所に魔法陣が書かれたいた。
ホノカはそれに触れようとする。
バチバチ。
魔法陣はホノカを拒絶する。
「魔力紋で開くやつだな…無理矢理解除して爆発されても困るからな…しょうがないアイツに開けてもらうか…」
ホノカはウンカの元にいく。
「焦ってるな」
ウンカは焦ってる状態で固まっている。
ホノカはウンカのポケットを真探りを始める。
「あった…こういうの持ってると思ったよ…」
ホノカは注射を見つけた。
「あとは……無いな。解除」
そして2時間後に戻る…
「な、何故それを?!!?!」
「これがお前の切り札なんだろ?」
ホノカはウンカを無視して話を進める。
「な、何の事だ…」
ウンカは何とか誤魔化そうとする。
「『魔獣化の秘薬』だろ?」
「何!?貴様“鑑定”持ち!?!?」
ホノカは既に注射の中身を鑑定済みだった。
ウンカは急に震え始める。
「何故奴は息子まで優秀なんだ!!!!何故奴なのだ!?!!?
クソ!くそ!糞!屎!!!」
ウンカは嫉妬を爆発される。
「黙れ…地下の隠し部屋を開けろ…」
ホノカはウンカの口を抑え恫喝して目的を済ませようとする。
コクン…コクン…
ウンカは口が抑えられているのでぎこちなく頷く。
「よし行け…」
ウンカは何故か急に大人しくなり、ホノカを地下に連れていく。
(「気味が悪いな…」)
ホノカも大人しくなったウンカを怪しんでいる。
ウンカは斬られた左手を抱えるように抑えて、大人しく歩き続ける。
そして隠し部屋の扉の前についた。
ウンカは魔力紋を読み取る魔法陣に親指を押して、魔法陣が赤から緑に変わる。
ウンカはドアノブに手を置いて左に回す。
カシャン。
「うっ」
ウンカの手に何が刺さる。
「ちっ」
ホノカは“大ジャンプ”で地下から抜け出す。
「油断した…」
ホノカはドワノブを自身もさっき回して何も無かったから油断してしまった。
「うぐおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!」
地下から咆哮が鳴り響く。
ズン
「油断したな?」
ウンカは変異しながら登ってくる。
ズン
「あのドアノブにはな…お前ガ私カラ盗ンダ秘薬の倍ノ濃度ノ薬品が入ッタ注射が仕込マレテいてな…」
ウンカの話声は段々と化け物の様な不快な濁声になってきた。
ズン
「俺様ハ、コレデサイキョウノチカラヲ手に…イレタ…」
バコン。
変異したウンカは跳躍して一気に登ってきた。
ズンンン。
「コノチカラデスベテヲハカイスルゥゥゥゥゥゥ!!!!」
ウンカは変異して、ヨハンが召喚したハイビーストの様な姿に変貌して斬られた腕から剣の様な骨を生やしていた。
「クゥゥゥガァ!!!」
ウンカはクーガの名前を叫びながらホノカに襲いかかる。
ホノカは避けず掴んで受け止める。ウンカの攻撃はビクともしない。
「クゥゥゥガァ!!!」
ウンカは剣になった骨で攻撃してくる。
ホノカはそれを更に受け止める。
「ウグゥゥゥゥゥ…」
両腕を掴まれたウンカは何とか引き剥がそうとする。
(回復神法術 エクストラキュア)
ホノカは神法術で魔獣化を解除しようとするが効果が無い…
「理性を失ったら…父上が受けた苦しみをお前に仕返しできないじゃないか…」
ホノカは悔しそうに俯く。
「もう終わりだ…」
ホノカは掴んでいた手を離し無力の指輪を外して刀に手を翳す。
「クゥゥゥガァ!!!」
自由になったウンカはホノカに突撃してくる。
「“斬波”…」
その一閃でホノカの斬撃はウンカと屋敷そのものを両断する。
図らずもホノカはニルビとの約束を守る。
ホノカは虚しい顔をしてその場に立ち尽くす…
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