第18話:合同授業2?
「なぁ…俺、トーカに悪い事言っちゃたのかな?」
ヴィクトルは合同授業の時のホノカが冷たい態度になったのを気にしていた。
揶揄ったとしも、いつもなら笑って許してくれるか腹にパンチが飛んでくるのどちらかなのに、初めての態度に戸惑っていた。
「いや、僕らのレベルが低すぎて戦っていてつまんないんだと思うよ」
ヴィナタが慰める。
「ヴィクトル君もそういうの気にするだね?」
オーレンは笑いながら揶揄う。
「殿下は俺の事を何だと思ってんだよ!」
「そう!それがヴィクトル君らしいよ」
「思い詰めてもすぐに解決する問題でもないんだし、次の授業に集中したら?」
ヴィナタも少しだけ慰める。
「そうするか…」
ヴィクトルも二人に相談しても駄目だと思い、一旦諦めた。
「そういえばトーカは?」
「さぁ?」
「僕も知らない」
「呼んだか?」
ホノカはいつの間に合いか3人の背後にいた。
「「「う、うわああああ?!」」」
仮面も相まって恐ろしさに 3人は椅子から飛び跳ねてしまう。
「驚かすんじぇねよ!!?!」
ヴィクトルがホノカを注意する。
「落ちつけって」
「い、いつからいたんだい?」
オーレンが胸を抑えながらホノカに質問をする。
「『次の授業に集中したら』らへんから」
「いるなら声かけてよ…」
オーレンは震えながらゆっくりと座る。
「楽しそうに話していたからな邪魔しちゃ悪いと思ってよ」
「何処に行ってたんですか?」
「あぁ、ちょっと野暮用があってな…」
◇
遡る事30分前
(ホノカ視点)
次の授業の準備で教員室に連れてこられたら彼を見つけた!
昔と違ってスリムなってわからなかったけどニキビ顔と“鑑定”でわかった。
彼はニルビ君だ!
氏名 ニルビ・デルーノー
種族 人族
レベル 22
第一職業 騎士
第二職業 回復魔導士
称号なし
スリムになってイケメンになったな。
どうやって二人きりになるか…
彼のクラスメイトを洗脳するか…それが手っ取り早いな。
さっきまで一緒にいた彼を洗脳しよう。
よし、トイレ入ったな…
「ひゅ〜ひゅ〜、俺の大砲が火を吹くぜぇ〜」
コイツ…一人だからって口笛して…変なの歌うなよ…
まぁいいや
(状態異常神法術 マインドハック)
本来はNPC専用の神法術だけどこの世界だと関係ない。
コイツをこのまま操って…
ゴン。
初めて使うから操りにくいな…壁にぶつかってしまった。
ヒール。
よしもう一回!
ゴン。
…行くぞ!
◇
(二級クラス教室)
「ニルビ。先生が図書館に来てくれって」
「え?…うん…わかった行くよ」
ニルビは何か疑問に思うけど、諦めたような顔して図書館に向かう。
(図書館)
ニルビは図書館の扉の前で何かを覚悟した様に顔になり扉を開く。
ニルビは入るなり、辺りを見渡し警戒する。
「そこまで警戒しなくていい」
ホノカがゆっくりと現れる。
「…」
ニルビは何も言わずにホノカをじっと見つめる。
「あまり驚いていないんだな」
「喋ってる彼の顔が全く動いていなかったからね…誰かに洗脳されてると思ったよ」
「じゃあなんで来たんだ?」
「他の誰かが君の犠牲になると思ったからね。」
「いい奴だな」
「そんな事より、僕に何の様?僕を殺す依頼でも受けたかい?『黒刀』君」
ニルビは自身が殺される様な立場だと理解していた。
「俺は闇ギルドの人間じゃないからそういうのを受けない…」
ホノカはニルビの命を諦めた様子に彼も親の所業を少なからず知っているのを気づいた。
「そうか…じゃあ父の不正の証拠をオーレン殿下にでも頼まれたかい?」
「…親父の事は嫌いか?」
「僕の身辺調査をしてないのかい?」
「…あぁ」
「そうか…じゃあ何故君が僕の所に?」
ニルビは何故かどんどんと声が震えてきた。
ホノカは何も言わずに仮面を外す。
「?、!?トライーガ卿…?違う…君なんだね…?ホノカ君」
今のホノカはクーガに段々と似てきた為、ニルビは一瞬困惑してしまう。
「生きていたんだね…」
ニルビは泣き崩れる。
ニルビは暫く泣き続けてやっと落ちついた。
「ごめんね…」
「いいんだ…」
「父の事を聞きに来ただね?」
「あぁ」
「父は君の父を嫌っていてね…理由は唯の嫉妬…優秀な君の父が嫌いだったんだ。
それでブロン公爵に頼んで君の父を落とし入れた。
君達家族には悪いけど…これで父も大人しくなると思ったんだ。だけど父の嫉妬は寧ろ大きくなっていった。
家族へのあたりも昔よりキツくなったよ。
ごめん…こんな事を聞きたかった訳じゃないよね…」
「いいやそれも聞きたかった事の一つだ」
ニルビは意外そうな顔から少し嬉しそうな顔になり話を続けた。
「…父は如何やら邪神を崇める怪しい教団に入ってるみたいなんだ…」
「教団?」
「あぁ…デルーノー邸に黒いローブを纏った人間が出入りするようになっていてね。
最も重要なのがブロン公爵もその教団のメンバーみたいで、冤罪で処刑された貴族や冒険者がデルーノー邸の地下に運ばれてくるんだ。」
「父上もそこに?」
「恐らく…」
「そうか…ありがとう」
「これで終わったね…
ホノカ君…僕を殺してくれないかい?」
「…正直、お前が親に似たクズだったら俺は殺すつもりだった…でもその親に苦しんでいる奴を殺す事をできない…」
「そうか…」
ニルビは悲しい顔して俯く。
「逃げる気はないか?」
「どうやって?」
ホノカは無言で手を差し伸べる。
ニルビは少し考えるがその手を握る。
(空間神法術 高等転移『青獣国シャンバラ』)
ホノカはニルビを連れて隣国に転移した。
「え?ここは?」
「青獣国シャンバラの…街道だよ」
ホノカは周りを見渡して何処確認してから説明する。
「え?え?え?だって、え?」
ニルビは今起きた現状が理解できず混乱する。
「落ち着け」
「これは無理だよ…」
ホノカが落ち着かせようと近くにあった切り株にニルビを座らせる。
「…どうやって?それに君は一体…君は何者なんだい?」
「神様かな?」
「…」
ニルビはホノカの儚く悲しそうな顔見て何も言えなかった。
「悪い忘れてくれ、
それでどうする。此処以外にも行けるけど?」
ホノカは恥ずかしくなり先程の言葉を取り消そうとして話を変えようとする。
「神様にお願いしたい事があるんだ…」
「なんだ?」
「弟と母も逃して欲しいんだ。」
「それぐらいお安い御用だ」
「ありがとう。」
ニルビは深々と頭を下げて感謝する。
「気にするな、それよりいつ逃げる?俺はいつでもいいけど…」
「転移は何回出来るんだい?」
「んー大体50回前後かな?」
「す、すごいね…じゃあまず今夜僕を家に返して欲しいんだ…そこで母と弟に説明する」
「わかった…じゃあ今夜な」
ホノカは仮面を被ってその場を立ち去ろうとする。
「待って!」
ニルビは呼び止める。
「?」
「ホノカ君、父を…ウンカ・デルーノーをどうか楽にして上げてください」
ニルビは土下座を仕出した。
「おい、止めろ」
ホノカはニルビを止めようとするがビクともしない。
「虫の良い話なのはわかってる…君にとって苦しめたい存在なのも十分わかってる。でも!父は昔から厳しい人ではあったけど…でも教団と関わり始めてから父は僕や弟、母にも暴力を振るう様になった。
まるで何か取り憑かれたみたいに…人がどんどんと変わっていったんだ…
それが僕には父が苦しんでいる様に見えるんだ!
だからどうかどうか父を楽にして上げてください…」
ニルビはホノカが父親を殺す事はわかっていたが止めるつもりもなかった。しかし変わった父を助けて欲しかった。それが例え死ぬ事だったとしても…
「わかった…」
ニルビの誠意が伝わったがホノカはここで嘘をついた。
「ありがとう…」
ニルビには“嘘感知”があるわけではないのでその嘘に感謝する。
「それじゃあ今夜な…」
「はい…」
こうして二人は次の授業へと向かう。
(錬金専用実験室)
「確か今日の授業って錬金学科長が直々に教えてくるんだよな?」
ヴィクトルは肘をついて退屈そうにしながら質問を投げる。
「昨日フォルト先生が言っていたからそうだと思うよ」
ヴィナタが答える。
「あの先生すっごいおっぱいデカいよな?」
「「ごふ、ごほ、ごほ」」
オーレンとヴィナタは急に言われた下ネタに咽せてしまった。
「早くあれを直で見てみたいぜ」
「「…」」
二人は反応するのを止めた。
「ホノカもそう思わないか?」
「俺は胸より尻派だ」
「お〜大人だな」
ヴィクトルは反応してくれた事に嬉しくて巫山戯る。
「こんな事で大人だ子供だ言ってるうちは子供の証拠だぞ?」
「「「お、おー」」」パチパチ
3人はホノカの大人な意見に感動して拍手する。
「その巨乳先生遅くないか?」
「確かにもう10分以上経ってるのに…」
どの教師も10分前には授業が出来るように来て、生徒が遅刻しないか監視、評価している。
ヴィナタが教員室に呼びに行こうと立ち上がる。
「僕、呼んで…」
ドッカーーーン
「な、何だ?!」
「何か爆発したみたいだぞ?!」
「先輩が魔法に失敗したのか?!」
生徒達の憶測が飛び交う。
数人生徒達は窓から外を見渡す。
「おい!校門あたりから煙が立ってるぞ!」
破壊された校門から怪しげな黒いローブの集団が侵入して来ていた…
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