第17話:合同授業
試合の後、ホノカには友人が増えた。
男子のみだが…
ホノカの肩に腕を置く猛者がいる。
「よ!トーカおはよ!」
「あぁ、ヴィクトル…おはよ」
「朝飯食ったか?」
「まだだ」
「なら一緒に行こうぜ!」
「オーレン次第だな」
「それなら安心しろ!昨日聞いて殿下も行くって!」
「抜け目ないな」
「おうよ」
「おはよう。二人とも」
今度はヴィナタが来た。
「お、ヴィナタ君も一緒に朝飯行かない?」
「いいね。ご一緒するよ」
「じゃあオーレンを連れてくるよ」
「任せた!」「ではまた」
最近はこの4人で一緒にいることが多く。リバーシュ家とオニギリ家は両方とも王国建国時からある名家のため誰も文句を言わない。
ホノカはオーレンを連れてきて、食堂に向かう。
「今日の飯は?」
ヴィクトルは皆んなに聞く。
「パエリアか海鮮パスタだったよ」
ヴィナタがいち早く応える。
「あんがとな。
そっかー海鮮かー、肉の気分なんだけどなー」
「良いじゃ無いか。ここの宿堂は美味いんだから、冒険者ギルドじゃ、酒と肉しか出ないんだぞ?」
ホノカはヴィクトルに恵まれた環境である事を諭す為に軽く冒険者の劣悪な環境を語る。
「うちも似たようなもんだぞ!」
しかしそれは無意味だった。
「ご先祖がオーガだからな!弟達と毎晩肉の丸焼きの取り合いだよ!」
「オニギリ家は食卓も戦いなんだね…」
オーレンは顔を引き攣られせ話す。
「まぁな。うちは6人兄弟でしかも全員年子だからなー。」
ヴィクトルは6人兄弟の長男で、更に上の一級クラスに姉がいる。
(「コイツの親、ハッスルし過ぎだろ…全員年子って…」)
ホノカもドン引きである。
「そういえば一時限目は?」
オーレンが兄弟の話に居た堪れず話題を変える。
「今日一日、合同授業で一時限目は三級クラスと2時限目はニ級クラスとの授業です」
「二級って事は錬金か…」
ヴィクトルが嫌そうに話す。彼は魔法は実技合格点の筆記がギリギリで錬金に関してはボロボロだった。
因みオーレンは魔法実技は及第点で筆記の正答率80%、錬金70%。
ヴィナタは魔法実技0点。筆記80%、錬金85%だ。
そして3人とも歴史学、理術、算術は全て80%以上である。
「あ、パエリアを」
「俺もパエリアで」
「僕は海鮮パスタを」
ホノカと二人はそれぞれ食べたい物を決めて食べる。
オーレンだけは王宮が用意した栄誉が管理されたフルコースのメニューだ。
四人は席に座る。
「それじゃあ、」
「「「「いただきます」」」」
ヴィクトルはものの数分でパエリア食べきった。
「噛んで食えよ…」
ホノカはヴィクトルの食べ方を注意する。
「ちゃんと噛んだぞ?二、三回」
「それは噛んで食ってる事にはなってねぇよ」
四人は談笑しながら食事が終わる。
「食いたりねー」
「僕も足りないかな。美味しいけど量がね…」
ヴィクトルとヴィナタがお腹を摩りながら、食事の量を愚痴る。
「俺は丁度良かったぞ」
「だから小さいんじゃねー…」ズド
ヴィクトルは失言をしてホノカに腹パンを喰らい蹲る。
「これで足りただろ?」
ホノカは低い声で圧をかけて強制的に了承を得ようとする。
(「よ、よかった…」)
オーレンは危なく同意しそうになり、ヴィクトルの二の舞なるとこだった。
「じゃあ行こうぜ」
ホノカは二人を連れて授業に向かう。苦しむヴィクトルを置いて…
(校庭)
三級クラスとの合同授業のため、校庭に集まっていた。
そして時間ギリギリに来たヴィクトルは怒られていた。
「一級クラスとして心構えがなっとらん!お前以外は10分前に集まっていたぞ!!」
「はい!」
「罰として反省文10枚だ!!!」
「はい!」
「よし!行けぇ!」
「はい!」
ヴィクトルは駆け足でホノカ達の元へ行く。
「お前ら酷いぞ!?俺を置いて行くなんて!!」
「自業自得かな」
「僕もそう思う…」
ヴィナタとオーレンは秒で見捨てた。
そしてホノカは睨みつける。
「ひっ」「「「ひっ」」」
ヴィクトルだけでなく関係の無いところからも悲鳴が聞こえる。
「集合…」
フォルトが号令をかけると両クラスが集まる。
「あれが音剣師…フォルトか」
「怖ぇな。でもカッケェェ」
「『無音』だろ?あの人」
フォルトは元々軍に所属していたが、訳あって学園の教師を務めている。
元軍の人間という事もあって、三級クラスの生徒達はフォルトの事をよく知られている。
「これから四人一組になってもらう…四人のうち必ず一人は他クラスの生徒を入れるように」
「トーカ。君は見学だ」
「わかりました」
「残りの者を10分以内パーティを組みたまえ、時間以内に組めなければ教師陣で組ませてもらう。」
(オーレン視点)
トーカとパーティ組めないのか…寂しいな…
「殿下!一緒に組みましょう!」
「あぁ、助かるよ」
ヴィクトル君が一早く話しかけてくれた。
「あ、ヴィナタを連れて来ますね!」
「あぁありがとう…」
ヴィナタ君もまだ決まってないといいんだけど、あと一人はどうしよう?
騎士クラスの生徒じゃないと駄目だよね。
「お待たせしました!」
「ありがとう…って彼女は?」
ヴィクトル君がヴィナタ君と一緒に知らない女子生徒を連れてきた。
「彼女は…」
綺麗だな。
「ここは私が…殿下、私はリューズ男爵家の長女シューナ・リューズと申します。以後お見知りおきを」
リューズ家っていえば風剣師の一族だよね?
「こちらこそよろしく」
「ヴィナタを迎えに行ったら、一緒に居たんですよ。」
「僕の幼馴染なんです」
「そうなんだ。」
許嫁では無いって事か…
「10分が経過した。まだ組めていない者達は私の前に来たまえ…」
僕達はギリギリに決まったみたいだな…
「よし、全パーティが組めたな…
これからルール説明をする。
この森をダンジョンとして最初に奥にいるダンジョンボス役からこの赤い帯を奪ったパーティの勝ちとする。
他パーティと組むのは今回は無しだ。組んだ場合は失格する。
妨害等は今回はありとする。が、重傷を負わせるたり、死者が出る行為などは失格とする。」
成る程…格パーティでの競争か…
「パーティ毎にこの白線に並びたまえ」
全パーティが白線に沿って綺麗に並ぶ。
「それでは、はじめ」
全パーティが走り出す。
「殿下、」
「ヴィナタ君、どうしたんだい?」
「これは恐らくこの間の授業の似た内容だと思われます。」
「トーカ…S級冒険者の力を知らしめるあれかい?」
「はい。ダンジョンという設定もトーカ君を見学にさせてたのも、冒険者にとってダンジョンでの戦いは当たり前ですから、もしトーカ君とパーティになった場合はそのパーティは授業になりませんから」
「成る程」
ヴィナタ君は賢いな…兄弟揃って学園の主席を取るだけはあるな。
「ありがとう。ヴィナタ君」
「いえ…あともう一つ大事なお話があります」
「なんだい?」
「恐らくボスはトーカ君です」
「え!?」
た、確かにあり得そうだけど…
「あとダンジョンにはゲートキーパーがいます。恐らくゲートキーパーは教師陣だと思います。」
「この授業はだいぶ難しいんだね」
!?
「グオォォオオオオオ!」
ドカン
「コイツは火熊です!リューズ嬢!」
ヴィナタ君。いち早く判断を…
「ヴィクトル君!“溜め突き”の準備を!」
「!、あいよ!」
「殿下すみません。僕の矢に光を纏わせください」
「わかった
我が力よ
光の力を武器に纏わせよ
付与魔法 エンチャント・光」
「“破剣”」
リューズ嬢が熊の手を一撃で両断した。
「“溜め射ち”」
今度はヴィナタ君が熊の腹に穴を開けた。
「今だ!」
「おらぁああ!」
ヴィクトルの君の槍が熊の頭を貫く。
皆んなすごいな…僕は何も…
「すみません殿下。授業とはいえ殿下に怪我をさせるわけにはいかなかったので」
「いいんだよ。君の指示のおかげで早々に倒せたんだ」
「魔力を回復させてから行きましょう」
「そうだね」
僕も皆んなみたいになれたら…
「ぎゃぁああああああああああ」
ビク。
「だ、誰かトーカ君に挑んだみたいだね…」
「そ、そうだね…」
皆んな顔引き攣られている。
トーカ、手加減してくれないかな…
無いな。
30分後。
「そろそろゲートキーパーがいるところだと思います。なので迂回して行きましょう」
やっぱりヴィナタ君は頼りになるな。
「先生達も通してくるんじゃないか?」
そうかな?通してくれる人達がボスをホノカにする?
「可能性としてなくはないけど…いや迂回して行こう」
「僕も迂回に賛成だよ」
「私も」
「めんどくせぇけど仕方ないか」
「じゃあ行こうか。」
暫く歩いていると…
「うっ…」「痛い…」「…」
倒れているクラスメイトや三級クラスの生徒がいた。
「大丈夫かい?」
「で…殿下?お、お逃げください…ここはアイツの…」ガク
「おい!しっかりするんだ!」
「殿下大丈夫です。気絶してるだけです」
「そ、そうか」
「先生達やり過ぎだろ…」
「迂回してきたのに…」
確かに結構遠回りして来たのに、こんな所にも来るなんて…
ヒュン。
!?
「ヴィクトル君!」
ドッカァーン。
槍?!
「よく気づいたな」
この声は…
「トーカ君!?」
「よ」
「なんで君がここに…!?、赤い帯ない…ってことは…」
「俺が門番だよ。安心しろ手加減してやる」
トーカはそう言いながら槍を手にとる。
「へぇ…おもしれぇ…本職の騎士ナメるなよ!」
「殿下…」
!
「わかった」
「二人とも時間稼ぎを!」
「「わかった!」」
「いいね」
トーカが怖い笑みを浮かべた…お
「“槍牙”」
避けて掴んだ!?
「なっ」
「悪い。貰うぞ」
!?
ズドン
奪った槍をこっちに投げてきた…こ、殺す気か…
「「”剣爪”」」
ヴィナタ君とシューナ嬢の横と上を捉えた攻撃、これなら!
「嘘でしょ!?」「くっ」
あの状態からジャンプして身体を捻って避けた!?
「ヴィクトル君!」
ヴィナタ君が剣をヴィクトル君に渡した。
「“剣牙”」
死角からの突き攻撃!
!?
身体を拗らせながら避けた!?見えてるの!?
「殿下今です!」
「光魔法フラッシュ!」
え!?こっちに目を瞑ったまま攻撃してきた!?
「まだだ喰らえ!」ボフ
ヴィナタ君が何かの小袋をトーカに投げた。
バタン
「よかった…効いたみたいだ」
「今のは?」
「これは僕のお手製眠り粉です」
「話していないで行きましょう。耐性があると思うから効きが短い筈だから」
「そうだね…彼を運びながら行こうか…」
ヴィクトル君、トーカと一緒に眠り粉を吸ってしまったみたいだ。
「重い…」
ヴィクトル君、身長もそうだけど筋肉がすごいから重い…
「僕も手伝います」
「これは先生のところに行って棄権ですね。本当に重い…」
「そうだね」
残念だ。折角トーカに勝てたのに…
◇
パチ
「行ったみたいだな」
ホノカに眠り粉は効いていなかった。
「一緒にいたのはシューナ嬢だよな?懐かしいな…」
ホノカは初めて狩りをした事を思い出していた。
「さてと、ズルした奴ら以外は通していいって言ってたけど、“聞き耳”スキルでも限界があるからな。」
ホノカは教師達からゲートキーパーを頼まれていた。
「ん?次は公爵令嬢のパーティか」
(森の奥)
「「「え?」」」
「だからこれでクリアだ。」
フォルトはヴィナタの方をジロリと見てから再び話始める。
「ヴィナタ、君は気づいたようだな…」
「ついさっきですが…」
「うむ。ゲートキーパーの彼は不正者を脱落させるために我々が配置した」
「じゃあ、倒れていた彼らは…」
「その通り、性懲りも無く連携して彼を倒そうとしたもの達だ。
後はそこで休んでいた前」
「「「「はい」」」」
(校庭)
生徒が全員戻ってきた。漏れ無く全員ボロボロになって…
「疲れているだろうが結果発表をする。
クリア5組、脱落5組。
脱落したもの達は反省分30枚を提出するように…以上解散とする」
脱落した生徒達は愚痴を溢しながら教室に戻っていく。
「トーカ!お前な!俺らを殺す気か!」
ヴィクトルが不満をホノカにぶつける。
「俺が殺す気だったら初撃で死んでたよ」
ホノカはつまらなそうに答える。
ホノカにとってこれらの訓練はとても退屈だ。連携も技術も火力も全てが劣る彼らとホノカでは象と蟻どころではない。
「彼の声何処で聞いた事があるような」ボソ
シューナはホノカの声に聞き覚えがあるが、思い出せない。
「シューナさんどうしたの?」
「いいえなんでもないです」
「じゃあ行きましょう」
「えぇ」
シューナはクラスメイトとクラスに戻っていく。
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