第9話:魔導師VSエセ魔導師
(王都支部チーム)
「おい、ウォード」
ホノカはウォードに声をかけていた。
「何すか?『黒刀』のアニキ」
「アニキって」
「アニキの漢気に惚れたんスヨ。」
ウォードはスカーレットの一件でホノカの事を尊敬し、急にアニキ呼びになった。
「そうか、」
ホノカは複雑な顔するが、少しだけ嬉しそうな顔を一瞬だけ見せる。
「それでだ、ウォード、
あのパーダって奴はアイテムで力を底上げしてるから気をつけろ。」
「気づいてたんすか!?」
実はウォードも“鑑定”スキル持ちなので気づいていた。
「あぁ、お前もか?」
「うぃっす。」
「それなら大丈夫だな」
ホノカはアドバイスしようとしたがやめた。
「な、なんですっか?!!」
「気づいていて魔力を練ってるやつの邪魔をしてしまったからな」
ホノカはウォードが知らないで魔力を消費してると思っていたからアドバイスしようとしていた。
「流石っすね。『黒刀』のアニキ…」
「お前もな。」
「見ててください…あのおぼっちゃまに教えてやりますよ。本当の魔法を」
(「フラグみたいなの立てるなよ…いやコイツなら大丈夫だな。……たぶんな」)
(闘技場)
「両者前へ!!」
二人は台を上がり闘技場に歩み審判の横に立つ。
「お前を潰して!『黒刀』に送ってやるよ!恨むなら『黒刀』を恨め!!!」
「…」
パーダはウォードを煽ってきたがウォードはガン無視する。
「無視してんじゃねーぞ?俺はオツァム伯爵の嫡子だぞ!!!!」
「だから?」
「ふん!これだから平民は…」
(「コイツ馬鹿なのか?自分もさっき家名を紹介されてなかったのに。」)
ウォードはパーダの無能さに呆れ過ぎて気疲れしてきた。
ウォードはウィステリア侯爵家の四男にあたる。更にウィステリア家は第二公都のフジムラサキ公爵の分家にあたる。つまり王家の血を継いでいる。
「決めた。お前は半殺しだ」
(「コイツ、まだ言ってるよ…」)
「互いに礼!」
二人は礼をして距離をとる。
「それでは…はじめ!!!!」
「フレイムブレス!」
パーダは早速、合計4回しか使えないフレイムブレスを使う。
「“縮地”」
ウォードは炎の塊を一瞬で避ける。
「おどぉぉれぇ!!!」
パーダはアイテムの力を自身の力だと勘違いして興奮する。
「フレイムブレス!」
「“縮地”」
再び全く同じ方法で避ける。
「防戦一報だなぁ!!!フレイムブレス!!!」
「我が力よ
土で土石を形創り、
我が敵を撃ち払え!
土魔法 ストーンショット」
ウォードは石で地面を攻撃する。それより砂煙が舞いウォードの位置を把握できない。
「目眩しか…」ニヤ
パーダは不気味な笑みを浮かべる。
「我が力よ
龍の息吹を炎で再現せよ
龍の炎よ…」
パーダはフレイムブレス詠唱し始める。
その瞬間ウォードが詠唱をしながら砂煙から出て来る。
「土魔法 ランドジャベリン!」
「アイアンシールド!」
しかしその攻撃は鉄の盾に阻まれる。
「馬鹿が!!!!!貰った!フレイムブレス!!!」
「お前がな、ランドスフィア」
実はウォードがさっき撃ったのは魔付の指輪の魔法だ。
『ミソクリ』では詠唱を途中で止めると魔法が消えてしまう。この世界でも詠唱の間にはスキルは使えないが詠唱が終わりさえすればある程度好きな時に撃てる。喋ったりもスキルを使用出来る。
そして魔付の指輪を発動することは出来る。
何で魔法を維持出来るかというと言霊にされた魔力は体内に残っている為、詠唱を終えるか、その魔力を発散する必要がある。
勿論、放出するために使おうとした魔力なので長時間は意地できないが、数分の間ならいつでも発動出来る。
そのために大会では公平制を保つ為、試合前に数十分の空きがある。
これはゲームの時は出来なかったこの世界独自の技術だ。
因みに魔力を発散しないと魔力が暴発して人は死ぬ。
土はウォードではなく、パーダを覆う。
「畜生出せ!!!!」
パーダは自身の炎をアイアンシールドで軽減し受けた。耐性スキルもあるのでピンピンしている。
「我が力よ。
対象の重力を奪い浮かせろ
重力魔法 グラビティリバース」
ウォードが魔法を唱えると土結界改めて土の玉が空に浮かぶ。
「そらよ」
ウォードはその玉を押すと、玉は闘技場から出る。
「糞!どうなってる!?出せ!!!!」
「今出してやるよ…ランドスフィア解除」
ボロボロ
土の玉は崩れて、パーダは地面に落ちる。
「糞!!!え…?」
パーダは自身が置かれた状況を理解する。
「そこまで!!勝者『楽土』ウォード!!!」
王都チーム、先鋒戦勝利である。