第5話:悲観な王子様
ホノカはヨハンの最後を見とらずに第三公都にある公爵の館に来ていた。
ホノカは門番に証明書を見せて、中に入ろうとするが…
「中に入れてくれ」
「お前みたいな奴を公爵邸に入れるわけないだろ」
門番は証明書も見ずに追い返そうとした。
ホノカは門番と話すのを諦めた。
「話にならねぇな…」
ドン
ホノカは足で鳩尾を蹴り、そんな門番を気絶させる。
「悪いな…恨むなら自分を恨んでくれよな」
ホノカは門番の足を掴み引き摺って無理矢理に中へ入っていく。
(公爵邸の客間)
ここには第四王子であるオーレン・ペンドラゴンとその叔父である狼の獣人ガルルグ・ペンドラゴン・サンダーボルト公爵がいた。
「オーレン大丈夫かい?」
「はい。サンダーボルト卿」
「此処には私と君しかいないんだから、昔みたいに叔父上と呼んでいいんだぞ?」
「いいえ。こういう時こそ王族としての心構えを忘れずに、人と接していかなければなりません」
「そうか…
すまないな…この様な事に巻き込んでしまって…」
ガルルグは甥に申し訳なさそうに頭を垂れる。
オーレンは急いでそれを止めさせる。
「叔父上!お止めください!」
「はは、叔父上と言ったな」
オーレンは顔を真っ赤にし、ガルルグを注意する。
「揶揄わないでください!サンダーボルト卿!」
ガルルグは真面目過ぎる甥を心配していた。
武人の長兄、頭の良い次兄、研究馬鹿の三男の兄達は逃げる術を知っていたり、要領良くサボったりと上手く王族として過ごしているのに対してオーレンは真面目に色々な事をやり抱え込む子だとガルルグは知っていた。
実の父である国王より…
オーレンは恥ずかしさを紛らわすために話を変えようとする。
「それより、冒険者が遅いですね」
「そうだな…優秀な冒険者達が来るってことになるから、早めに着くと思ったんだが…」
『きゃーーーー』、『そこで止まれ!』
そんな話をしていたら、屋敷の中が騒がしくなる。
ガルルグは身構え、甥っ子の前に出る。
「なんだ?まさか刺客か?」
「叔父上…」
「お前は此処で待っていろ…
もしも時はわかっているね?」
「…はい」
オーレンは何かを言いたげだったが、それを呑み込み、叔父の言いつけを了承した。
「何を騒いでる!」
「公爵様、コイツが門番を…」
そこには門番の足そ引き摺っている、黒髪のホノカが立っていた。
ホノカは彼らの呑み込みの悪さに舌打ちをして話始める。
「さっきから言っているだろ…俺は冒険者で護衛を依頼されたんだ。そしてこれがその証明書だって、何回も言っているのに…」
ガルルグはホノカの無礼な態度と門番への仕打ちに腹を立てている。
そんなガルルグは怒気を帯びた声で話す。
「そうか、なら何故、家の門番を引き摺っているんだい?」
今度はホノカはイラついた声で返答し始める。
「証明書を見せたのに、中に入れてもらえなかったから、あんたに文句言いたくてな公爵閣下…」
公爵家の私兵はホノカの態度に激怒し武器を構える。
「貴様!!!」「なんて無礼な事を!」
「静まれ」
私兵はガルルグの言葉で武器を渋々引いた。
(「この少年、今武器を引かなければ斬っていたな…」)
「我が門番が失礼な事を致した事は謝罪する…だが、精鋭数人で来るはずではなかったかい?話が違うようだが?」
「あぁ、騎士一人と騎士に扮した闇ギルドの人間に襲われてね。今回のメンバーはそいつらを届けるため、遅れている。」
「で、君が?」
「あぁ、これでもS級冒険者なんでね」
「S級…?」
(「この年でS級…黒髪、刀という事は…」)
「君は『黒刀』かい?」
「『黒刀』だって!?」「こんなに若いのか!?」
私兵達はガルルグの言葉に驚き騒ぎ始めてしまう。
公爵領にもホノカの名を轟いていた。
「あぁ、そう言われているが…トーカで頼む」
「わかった。トーカ君、我が甥を守ってくるんだね?」
「あぁ、それをが任務だからな。」
「…わかった。君を信じよう…こっちに来てくれたまえ、甥に紹介したい」
ガルルグはホノカ異様なオーラを垣間見て、ホノカの強さと任務への忠実性信じた。
「わかった」
ホノカは客間に案内された。
「サンダーボルト卿!大丈夫でしたか?」
「あぁ、大丈夫だ。冒険者が来たんだが、少しだけ手違いあってね…」
「そうでしたか…もしかして彼が?」
「そうだ。彼がお前を護衛してくれるS級冒険者「黒刀」のトーカ殿だ」
「彼が!?僕より小さいのに…」
「あああ?」
ホノカは気にしていることを言われて声を荒げてしまう。
オーレンは怯えながらも、すぐにか細い声で謝罪する。
「す、すみません」
ホノカは怒ったまま、話を進める。
「…もう行けるがどうする?」
「僕は構いません」
ホノカのスキルがオーレンの言葉に対して反応を示す。
(「ん?何で“看破”が反応した?」)
「はい。お願いします」
(「まただ…こいつももしかして…」)
ホノカは何かに気づいたが、そのまま事を進める。
「じゃあ行くか」
ホノカ、オーレン、ガルルグが外に出て、オーレンの見送りをする。
「頼んだよ。トーカ君」
「わかってる…」
「トーカ君。これからは言葉遣いに気をつけたほうがいい…貴族の中には、敬語を使わないだけ不敬罪にする者もいる。
だから…」
ガルルグはホノカへ態度を改めるよう説得するが…
「それがどうした?」
ホノカは先程よりイカつき…怒りへと変わっていく。
ガルルグはその怒りが何なのか気づかず再び説得してしまう。
「トーカ君。力だけでは解決しないんだよ」
「黙れ…」
ホノカの瞳からは光が消えていた。
「貴族とか、そんなもん俺には関係ない…俺の道を塞ぐものは何だろうと打ち砕く…」
公爵はホノカの言葉と瞳に気圧されて、これ以上は何も言えなかった。
「悪いが行くぞ…」
ホノカはオーレンを肩に担ぎ、高く飛び跳ね、屋根を渡る。
ガルルグは恐怖のあまりその様子を見ていなかった。
見送りをしようとしたガルルグの額には汗が滲み出ていた。
「彼は一体?」
◇
(ホノカ視点)
あぁ、胸糞悪い…
「降ろして!ちょっと!」
婆さんには悪いが…こういう依頼はこれから受けないようにしたいな…
「聞いてくれ!」
「うるせぇ!!ギャアギャア騒ぐな!」
「君!自分が何をしているかわかっているのかい?!街でこんな事して悪目立ちするじゃないか!?
あと僕は王子だよ?運び方があ…」
「あぁ、それなら安心しろ。魔法で俺達は認識出来ないとようになっている。」
「そ、そういえば騒ぎになっていない…」
「だから黙ってろ」
「いや!それとこれとは別だろ!」
「そろそろだ。」
「人の話を聞いてくれ!ん?そろそろ何が?」
「門だよ」
「これで一旦降りれる。」
「いいや、降りない…このまま跳ぶ!」
「へ?と、飛ぶ?!」
一旦踏ん張り聞く地面に…
ミシミシ
(「“大ジャンプ”」)
ドッカーーーーーン
「うわぁーーーーーーーー!」
(1時間後)
一旦休憩するか、流石にコイツが保たないからな。
「1時間休憩だ。」
「オエェエエ」べしゃべしゃ
飛ばし過ぎたか?
「ほら、水と食いもんだ」
「…はぁ、君。魔法袋を持っているのかい?」
「まぁ、そんなとこだ」
「ありがとう…」
「…」「…」
「君はどうして冒険者に?」
急にどうした?
「金を手に入れるのに一番手っ取り早いから」
「家族はいるのかい?」
ギロ
「なんでそんな事を聞くだ?」
「す、すまない…
ゴク…叔父上がすまなかった…叔父上は君がこの国を守るのに必要だと思ったんだ…」
「お前…」
ビク
「根性無しかと思ったけど、意外と根性有るんだな」
「え?」
「自分で言うのもなんだけど、あんなキレ方した奴にその話を掘り返すなんて、根性ある奴か蛮勇のどっちかだ」
「…」
「…お前、本当は公爵邸から出たくなかったんだろ?」
「!?」
立ち上がる程の自分の内面に押し殺した真実を…
暴かれて驚いているんだな。
また座った。
「…なんでわかったんだい?」
「…職業柄、嘘に敏感になるんだよ。受付に中抜きされてないかとか、メンバーが裏切らないかとか、いろいろあるんだよ」
本当はスキルだけどな。
「すごいね…王宮ではバレた事なかったんだけど…」
「何で無理してるんだ?」
「僕には兄妹がいる…皆優秀なんだ…僕だけは平凡なんだ…僕の兄妹を知っているかい?」
「いや」
「じゃあ、聞いてくれるかい?」
「あぁ」
「ありがとう…
一番上の兄、グレン・ペンドラゴン。
剣や槍、弓を扱う、武器の天才と呼ばれていて、明るい性格で皆んなに好かれている。
二番目の兄、ブレン・ペンドラゴン。
頭のキレは随一で戦術、政治を任せれていて、色んな貴族に認められている。
一番目の姉クレア・ペンドラゴン。
ハーフエルフってこともあって絶世の美女。でも唯美しいんじゃない…頭も良くて社交界での振る舞いも完璧で、『理想の王女』って呼ばれている。
三番目の兄アレン・ペンドラゴン。
彼は少し変わっているけど、頭の良さはブレン兄さん以上、この王国でのモンスター研究の第一人者なんだ。
二番目の姉トリア・ペンドラゴン。
彼女はおちょっこちょいだけどその分彼女は皆に優しく察していて、皆に好かれている。
何より彼女は魔法の天才で3属性の魔法を使える。
僕の腹違いの双子ヒリア・ペンドラゴン。
彼女は『王家の聖女』と呼ばれ回復を扱いは王国きっての回復魔導師だ。
末っ子の弟ヒロン・ペンドラゴン
可愛い弟」
「可愛い弟って」
弟だけの情報が少な過ぎてつい笑ってしまった。
「まだ4歳だからね就の儀もまだやってないからね。でもきっと優れた職に就けるよ…」
「だといいな」
「あぁ…僕みたいになって欲しくないからね…
僕は兄さんや姉さんの優秀じゃないから嘘ついてるんだ…王族は強くないといけないから…だから強い自分を演じていたいんだ…」
何故かコイツを見ていたらユーガを思い出してしまった。
俺の所為で、アイツは周りに蔑まれていた。
もしかしたらコイツも…
「…兄貴達とは仲良いのか?」
「んー。あまり話したことないからわからない」
「そうか…」
「あぁ」
「「…」」
悪い事にしちまったな…俺たち兄弟は仲は良かったからな。
いや、ユーガとポーラには溝があったな…
「トーカって呼んでもいいかい?」
「別にいいぞ」
「じゃあ、トーカ…僕の友達になってくれないかい?僕の事を一番知っているが君だから」
「あぁ」
そこまで言われたら断れないだろ。
いや、言わせた責任だな。
「よろしくトーカ」
「あぁオーレン」
「…ありがとう」
「「…」」
「友達だから優しく運んでね」
…
「無理」
そんな「僕は死ぬんだ」みたいな顔すんなよ…
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