第2話:冒険者ギルドへ
冒険者ギルドに行くことを決めたホノカはポーラに伝えたい事があるため、早めのお昼寝中のポーラを起こそうとしていた。
「ポーラ…起きてくれ」
ポーラは目を擦りながらゆっくりと起きた。
「ない?おにいしゃま?」
「ポーラ…兄ちゃんは冒険者ギルドに行ってお金を稼いで来るからお留守番をしていて欲しいんだ…」
ポーラは兄が何処かに行ってしまう不安で悲しそうな顔でホノカをみる。
「え…?おにいしゃま、すぐにかえってくる?」
「うん…お昼には絶対に帰って来るよ」
「わかった!ポーラ、おうちでおるすばんする!」
安心したポーラは元気になり胸を張り、笑顔を見せる。
ホノカはオレンジと黒の髪から、真っ黒な髪にして剣ではなく、刀を背負って身支度を済ませて王都に向かうことにした。
黒髪はペンドラゴン王国に珍しくないが、オレンジはかなり珍しいため変装していた。
刀にした理由は職業を鑑定されたとき情報を手に入れる前に、魔剣使いとこの顔でトライーガ家だとバレないための偽装工作である。
ポーラと五体に見送られていた。
「ポーラ、絶対に外に出ちゃ駄目だぞ?」
「うん!ポーラ、おそとでない!」
「偉いぞ」
ホノカは今迄トライーガではやっていなかった事だけどポーラの頭を撫でる。
ポーラは最初はびっくりしたけど嬉しくて笑ってしまう。
「ふ、ふへ」
ホノカは次に従魔達に話しかける。
「お前ら、ポーラを頼んだぞ?ご飯は置いておくから取りに行かなくていい…
それとお前らにばかり負担をかけてごめんな…」
五体は首を振る。
ホノカはそんな五体の頭を撫でて、「ありがとう」と悲しそうに語りかけた。
「弟、ユーガが戻ってくるかもしれない…法術はかけずに行く。
だからウル四郎…周りをパトロールしてくれ」
「わん!」
「じゃあ、行ってきます」
ホノカは湿っぽくしてしまった雰囲気を払拭するために笑顔で挨拶をした。
ポーラ達も笑顔でそれに応える。
「いってらっしゃ〜い!」
(王都の関所)
ホノカは無事に王都の関所にいた。
そして王都に入るに当たって入国審査を受けることになった。
「次のもの!」
ホノカの順番が周ってきて、取り調べ室のように連れてこられた。
「坊主?、出稼ぎか?」
門番はホノカの容姿が女の子か、男の子か迷い、首を傾げながら質問してきた。
「うん」
ホノカは子供らしい演技をしてるつもりだが、明らかに苛立っているのを隠せていない。
門番は出稼ぎにきたホノカを信じて同情して優しく質問してくる。
「そうか、何で働くつもりだい?」
「冒険者ギルド」
門番は冒険者ギルドと聞いて顔色を変える。
「…坊主、冒険者は確かに夢はあるが危険な仕事なんだぞ?坊主は『就の儀』を受けたばっかか?」
「いや、2、3年前に受けた」
「何!?ってことは10歳くらいなのか?」
ホノカは苛立ちが段々と増していく。
「あぁ」
「そ…そうか…」
門番は迷っていた…。
この一人で出稼ぎ来た少年を入れべきかどうか、門番は冒険者がどれだけ大変か知っていた。
そしてペンドラゴンでは出稼ぎ、特に冒険者として働きに来る12、13歳くらい青年が多かった。
その青年達が3割が亡くなり、3割が非道に進み、真面なのは4割くらいしか残らないことを知っていた…
しかしホノカの目を見た門番はこれ以上止める事ができないと判断した。
「わかった。坊主、お前さんの入国を認めてよう。」
ホノカは返事をせずにそのまま立ち去ろうとする。
「待て…坊主、名前は?」
「…俺、俺の名は…燈火だ。」
「そうか…トーカか…
トーカ、危険な仕事はするなよ?」
コクン
ホノカは頷きその場を去る。
「いいんですか?」
「あぁ」
「それにしてもあの子似てましたね…」
「あぁ」
ホノカを通した門番は自身のペンダントを胸から取り出す。ホノカより少し大きめで鼻に絆創膏を貼った、ホノカに似た少女の写真を…
「カノン…」
(冒険者ギルド前)
「少し臭いな…」
冒険者ギルドの前に立ってるだけで酒や血、汗が混じった臭いが流れ出てくる。
ホノカは左右の扉を開き、冒険者ギルドに入っていく。
その中は一階に酒場、二階に受付にまっていた。
酒場にゴロツキのような冒険者がいた。
そのゴロツキはホノカを見て、下劣な野次を飛ばす。
「おい、ガキが入ってきたぞ」
「お嬢ちゃ〜ん、ここはお洋服店じゃないでちゅよ〜」
「可愛い顔してんな!俺が相手してヤろうか!?ギャハハハハ」
ホノカはその全てを無視して二階に行こうとするが、冒険者、数人に遮られてしまう。
「ガキ、おめぇ何しにきた?」
しかいホノカは一瞬にしてその場から消えさり、冒険者達は慌ててその場を探す。
「ど、どこ行きやがった?!」
ホノカはもう受付の前まで来ていた。
「登録は…?あそこでいいのか…?」
ホノカは他の換金や報告を受けている受付を見て、仕事をしていない受付嬢の元にいく。
「冒険者の登録をしたい」
「ん?はぁ…ガキは帰んな」
その受付嬢は見た目は良かったが態度は冷たい人間だった。
「ガキじゃないから登録してくれ」
「あのね、ガキは冒険者になれないの!」
「ならそのルールブックを見せてくれ」
「そんなものないよ」
「ならガキでも冒険者になっても問題ないよな?」
ホノカに捲し立てられ受付嬢は立ち上がりホノカに怒声を浴びせる。
「ちっ、屁理屈ばっか言ってじゃないぞ!?クソガキ!!!」
「屁理屈はそっちだろ?ババア」
ホノカは受付嬢をババア呼ばわりすると、受付嬢は受付台から乗り上がろうとする。
「て、てめぇーーーー」
「せ、先輩落ちついてください!」
「子供は帰りなさい!」
後輩の受付二人が、一人は女を宥めて、もう一人はホノカを帰らせる。
(「出来れば王都がいいんだが、これじゃ無理だな…」)
ホノカは諦め、別の冒険者ギルドに行こうとする…
「坊主待ちな…」
ホノカを酒場の60歳ぐらいの女性が止める。
「お前さん…冒険者になりたいのかい?」
「うん」
「そうかい…上から大声が聞こえたけど駄目だったみたいだね」
「あぁ、ガキだからって融通の利かないババアに駄目だって」
「ぷっ、ガッハッハッハ、あの女にそこまで言えるのは中々いないよ。アイツはここの副ギルド長だからね。あんな態度をしても許されているんだよ」
「ふーん…」(「この婆さんもしかして…?」)
「さっきお前さんに絡んできた奴らがいただろう?アイツらはお前に警告しようとしてたんだよ?「偉そうにしている女には近づくな」ってね。でもお前さんは消えちまったからね。」
意外な事実に目を丸くするホノカ。
(「アイツら良い奴だったのか?」)
「意外だったかい?まぁ私もお前さんと同じ状況だったら逃げ出してるよ」
老婆はホノカを少しだけ揶揄うように笑う。
「…で、要件は?」
ホノカは話しが長くなりそうだと思い要件を求めた。
「そうだった、そうだった…
冒険者になりたいなら、モンスターを実際に狩ってきたら、誰も文句を言わないよ。そうさねぇ…ワーウルフなんて丁度いいんじゃないかい?」
ワーウルフはコボルドの派生進化で獣人族が変身した姿と似ているが、肉球が有ったりと細部が異なる。
「ワーウルフでいいのか?」
「あぁ、あの女も掌を返すよ」
「わかった」
ホノカにとってワーウルフはとても簡単なモンスターだが、ワーウルフは個体自体はBレートに指定されているが、必ず二、三体で行動するため、知能は低いがかなり討伐が難しいモンスターである。
ホノカはそんな事知らずにワーウルフを探しにいく。
(2時間後、冒険者ギルド受付)
「これで冒険者登録をしてくれ」
そう言いながらホノカはワーウルフ七体の頭を受付のカウンターに置く。
「ぬ、ぬ、盗んだに決まってる!」
しかし受付嬢は認めなかった。
(「婆さん話しが違うじゃないか」)
「早く!あんたら!このガキを取り押さえない!」
女は更にホノカを濡れ衣で捕まえようとする。
今のホノカにとって、それ逆鱗に触れられたことに等しい。
ホノカは携えた小太刀を手を伸ばし、女の首を狙う。
「およし!」
そこで酒場にいた老婆が冒険者とホノカを止める。
ホノカは我に帰り、怒りを鎮める。
「あ、貴方はギルド長!?」
「久しいね、アヤノ。」
(「この婆さん…やっぱり」)
…
隠蔽
氏名 ヘレスティナ・ヴォルカニカ
所属 冒険者ギルド:ペンドラゴン王国総支部
種族 ハーフエルフ
レベル 200
第一職業 炎槍師
第二職業 土魔道士
第三職業 なし
称号 名誉貴族、S級冒険者、ギルド長
…
(「ん?“隠蔽”使ってるのか?“看破”」)
…
氏名 ヘレスティナ・ヴォルカニカ
所属 冒険者ギルドペンドラゴン王国総支部
種族 ハーフエルフ
レベル 200
第一職業 炎槍師
第二職業 土魔道士
第三職業 なし
称号 没落貴族、名誉貴族、熔炎、S級冒険者、冒険者ギルド長、総支部長
…
(「没落貴族って、貴族だったのか?」)
「ギルド長…どうして此方に?まだ『海』の大陸にいるはずでは?」
「あぁ、議会のことかい?他の支部長達から嫌な話を聞いたね…ギルド本部の空間魔導師に頼んで帰ってきたんだよ」
本来、ヘレスティナは『海』の大陸で行われる冒険者ギルド全128総支部のギルド長全員が集まる『ギルド連合議会』に行く筈だったが、同じ『光』の大陸のギルド長から自身の支部での黒い噂を聞いたため、本部に無理言って帰ってきた。
「アヤノ…あんたが冒険者の報酬を中抜きしたり、自身の御抱え冒険者に自身に従わない冒険者をリンチさせたりと他にも色々と聞いたよ…
しかもわざわざ私のいないとときを狙ってやっていたんだってね?」
「そんなの噂にすぎません!私はそんなことしていません!」
「その言い分も一理あるね…」
「そうです!」
「ただ…この坊主を何でギルドに入れてあげないんだい?」
「そ、それはそいつが子供だからで…」
「へぇ、あんたも知っているだろうけど、『光』の大陸に二人しかいないX級冒険者の一人、アーサー・シールは僅か10歳でA級冒険者になった逸話…そんな逸話があるのに子供じゃ駄目っていう理由じゃ通らないんだよ」
「でも、このガキにその力があるとは思えません!」
「ワーウルフを狩ったのにかい?」
「きっとそれは盗んだんです!」
「ワーウルフを七体も狩れる冒険者から盗むなんてあんたの言う子供が出来ると思うのかい?
はぁ…アヤノ諦めな。あんたはもう終わったんだよ…」
「悪いけど証拠隠蔽出来ないようにこの場にいる全職員も牢屋に入ってもらうよ」
この言葉と同時にギルド本部の職員と他国のS、A級冒険者が入ってきた。
ヘレスティナはホノカに近づいて謝罪する。
「悪いね…あんたを囮にしてしまって」
「とんだ狸婆さんだな…」
「ハッハッハ、狸かい?自分で言うのも何だけど狐じゃないかい?」
ヘレスティナは自身の顔は丸よりは長細い方だと遠回しに注意する。
「ほれ、あんたの冒険者証だよ」
ヘレスティナはホノカに冒険者証のプレートを投げて渡す。
「精々頑張るんだよ!
…訳有りなんだろ?特別に作っておいたよ」ボソ
彼女はホノカに近づきながら小声で話した。
「…ありがとよ…狸婆さん」
ホノカは少し考え、感謝と利用された仕返しをした。
ヘレスティナは呆れつつも照れくさそうにする。
「ふっ、あいよ」
ホノカはワーウルフの換金を済ませて門に向かっていると何かに気づき路地裏に行く。
路地裏に入った途端に人が来て、道を塞がれてしまう。
「あんたか…」
そこには冒険者ギルドの牢に入っているはずのアヤノと呼ばれた元副ギルド長がいた。
「く・そ・ガ・キィ〜ーーーーー」
アヤノは奇声を放ち一緒に逃げてきた元ギルド職員やお抱え冒険者をドン引きさせる。
「牢に入ったんじゃないのか?」
「あのババアがいない間にギルドの管理をしていたのは私だよ!!!牢の合鍵ぐらい持ってるわよ!!!」
アヤノは怒りで顔真っ赤にしてまるで顔から火を吹いているようだ。
「ふっ、悪い事をしてる自覚はあったんだな。そんな事をコソコソやって、終いには逆恨みか?」
ホノカは火に油を注いだ。
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れーーーーーー!!!!!
てめぇさえ殺せば私の無実は証明できるんだよ!!!
やるぞ!!!!」
アヤノの合図とともに剣を構えたり、詠唱を始める。
「我が力よ、
水の鎖を形造り、
我が敵を捕縛せよ、
水魔法 ウォーターチェーン」
「我が力よ、
風の槍を形造り、
我が敵を突き刺せ、
風魔法 ウインドランス」
「我が力よ、
毒の槍を形造り、
我が敵を突き刺さ
毒魔法 ポイズンランス」
「我が力よ、
鉄の双刃を形造り、
我が敵を切り裂け、
鉄魔法 ツイン・メタルカッター」
ホノカはその場から消え去り同時に放たれた魔法は、反対方向にいた味方を襲う。
「「「「グワアア!!!!」」」」
「あ、あいつは何処だ!」
「此処だよ」
ホノカは一瞬でアヤノの背中に刀を突き立て動きを制する。
「警告する…今すぐ牢に戻れ、然もなくばこの場で殺す…」
この時、ホノカの眼は闇よりも暗く、見た者の心を凍てつかせた。
実際にアヤノの両脇にいた冒険者二人はホノカの眼を見て、一人は腰を抜かし、もう一人は怯えて逃げ出した。
「やれるもんならやってみな!私にそんな脅しが通用すると思うな!!」
彼女はホノカを挑発し更には短剣を抜き襲いかかってしまう。自身がホノカの逆鱗の二度も触れしまった事を知らずに…
「サンダーアロー」
雷の矢が彼女の胸にデカい穴を開ける。
ドサ
アヤノはそのまま倒れ込む。
冒険者達は恐怖で身体が固まる。
そんな彼らにホノカは告げる…
「さて…お前らはどうする?投降か死」
ホノカはそのまま消え去る。
その後、冒険者達は殆ど者は自身で投降した。
中には恐怖のあまり気絶して倒れてたものがいたが、アヤノの死体と一緒に仲間に担がれ投降した。
そして投降した者全員が事の顛末を包み隠さずに話した。
ホノカに報復されるのを恐れて…
ホノカは全てを確認してから森へと帰っていく。
「はぁ、人を殺しても何も思わない…
ごめんなさい、父上、母上、母さん…おじい、おばあちゃん…」
ホノカは自身が変わってしまった事を前世と今世の親に泣きながら謝る。
しかし、ホノカはこの時に自身の復讐と弟の捜索を邪魔するものに容赦をしない事をこの時に決意した。
その眼は昔の優しいホノカの眼はなかった…
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