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異世界再生神話〜神は万能ではない〜  作者: 犬星梟太
第一章 転生奮闘編

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第26話:春

謎のモンスターを討伐をして数ヶ月が経過してもうすぐ春が過ぎる。


 トライーガ領は平和を取り戻した。


 遅めの桜が咲き誇る。


 今日はグレンダの誕生日だ。


 トライーガ家の皆が兵士もメイドも関係なく誕生日会の準備に勤しんでいる。


「エイルさん、エオルさんは納屋から机を持ってきてください。

ジョルさん料理の進行具合を聞いてきてください」


「「はい」」


「さっき薬草が足りなくなったみたいで隣の村までとりにいくと」


「貯蔵庫になかったんですか?」


「はい」


「わかりました」


 ヨハンが指揮をしてグレンダの誕生日会の準備を進めていた。


 その頃クーガとグレンダは寝室で二人だけの時間を過ごしていた。


「グレンダ大丈夫かい?」


「ふふ、またですか?大丈夫ですよ」


 グレンダの顔色は化粧なしでも健康に見える。

 体調の良さそうな姿を見てクーガも少し安心していた。


「今日は盛大に祝うぞ。お腹の子にも元気をつけて貰いたいからな」


 少しぎこちない笑顔を見せるクーガ。


 グレンダにはそれが可愛らしく見え笑みで返し、自身を心配するクーガを安心させる。


「ええ、さっきも聞きましたよ。心配しないで大丈夫。元気な子で産んでみせますよ」


 クーガはグレンダの優しいに目頭を何度も熱くさせる。


「そうだな…」


 クーガは右手ではグレンダの手を握り、左手ではグレンダのお腹に手を置いていた。


 赤ん坊がいつ産まれておかしくないくらいお腹は大きくなっていた。


 グレンダはある事を思い出して少しだけ悲しい顔をする。


「なんだかホノカやユーガには申し訳ないわ…私の誕生日会であの子達の誕生日会が無くなっちゃて」


 トライーガ家は再び財政難に悩まれせれていた。

 今迄クーガ仕事(戦争)はこなしていたがグレンダの側にいたいため、仕事(戦争)をしなくなりお金が底をつきそうになっていた。

 グレンダの実家が働きかけ、それに対して文句言う貴族は誰一人としていなかった。


 クーガもグレンダの悩みを払拭させる。


「ホノカは賢い子だ、あの子はわかってくれるよ。ユーガはまだ小さいから…いやあの子も優しい子だ、きっとわかってくれるよ」


「そうね…あの子達は良い子に育ってくれた。きっとこの子も良い子育ってくれる」


 グレンダは自身のお腹を優しく優しく摩る。


 クーガはそれを悲しそうに見守る。


「そうだね」


「貴方」


「何だい?」


「私すっごい幸せ」


 グレンダは人生の中で一番の満面の笑みを見せる。


 クーガはそれに驚き見惚れる。


「ああ、私もとてもとてもとても…幸せだよ。グレンダ」


 クーガはさっきとはまるで違う自然で満たれた笑顔を見せるのだった。


 そして二人の幸せ時間は過ぎていく。


(ホノカ視点)


 今日は母上の誕生日だ。

 そのプレゼントに母上を苦している病気?を治してみせる。


 研究していた回復神法術で自身のHPを他者に与えるものを改良している。


 理想としてステータスの免疫力を譲渡もしくは底上げできればいいんだけど、

一つも上手くいかない。今の母上のHPは100/10となっている。

 元のHPがどんどんと減少している。

 状態異常にもなっていないので、治療が難しいんだ。

だが諦めず研究を続けてきた。

 今日母が寝るときに神法術をかけて母上のステータスを全て底上げする。


「ワン」


 俺が考え事をしていたらウル四郎が「大丈夫?」と言わんばかりに顔を舐めてきた。


「よしよし」


(夕方)


 グレンダの誕生会が始まった。


「グレンダ」「「母上」」「「「奥様」」」


 皆が一斉に祝いする。


「「「「お誕生日おめでとうございます!」」」


「ありがとう。みんな」


 グレンダはお化粧をして、綺麗なドレスも着て煌びやかになり、伯爵令嬢を思い出させる。


「綺麗だよ、グレンダ」


「ふふ、褒めて赤ちゃんしか出ないわよ」


「ははは、すまない嬉しくつい…」


 二人は見つめ合い、一瞬であるはずが永遠にも感じられる時を二人は過ごす。


「奥様。こちらへ」


 ヨハンが椅子を用意し、歩くのを数人の侍女が補助して座る。

 グレンダは体調を崩してはいるが身体は衰えて尚しっかりとしているため、一般の女性ではその体重を一人では支えれない。


「みんなありがとう」


ペコ

 

 メイド達は何も言えずにお辞儀をして後ろに下がる。

 そのメイドの顔には涙が溢れる。


 一人はこの領に来たばかりで右も左もわからないときに、グレンダに親切にして貰い、実の姉ように慕っているもの。

 また一人は夫を喧嘩をしたときに仲裁に入ってもらい、それから夫婦円満にしてもらったもの。

 そして一人は他のメイドを憂さ晴らしにいじめていて、それがグレンダに発覚して母のように厳しく叱られてクビにはされず、一生の恩人として慕うもの。


「奥様、今晩のメニューですが前菜は華の大陸の薬草を使用した薬膳餅、スープは伊の大陸の郷土料理で味噌汁、魚、肉料理は味噌汁の中にすみれとして入っております。そして主菜は伊の大陸の米を使用したお粥でございます。サラダはドリンクと一緒になっていて青汁でございます。デザートは苺でございます」


 ヨハンが料理の紹介をして、冷めてしまう料理以外はグレンダの前と並ぶ。


 勿論この料理全てにホノカが手を加えていて、全てHP、免疫力を上げるものばかりである。


 ユーガが自分が作った料理を自慢するためにグレンダに抱きつきながら説明する。


「このおだんごはは兄さまといっしょにつくったんですよ!」


「そうなの?ありがとうユーガ」


「うん!」


「ホノカもありがとう」


「お口に合うといいのですが…」


 ホノカは照れくさそうに言うが…


 グレンダはホノカとユーガを抱きしめ、二人に感謝する。


「美味しいに決まってるわ、ありがとうね」


「はい…」「うん!」


 クーガはこの光景を見て、涙を拭ってから食事を開始する。


 皆、食事を挨拶を済ませるが、涙で声がとても小さい。


 グレンダは一人だけ元気な挨拶をする。


「いただきます」


 グレンダは味噌汁をスプーンで飲む。


「美味しいわ。他国の料理をこんなに沢山食べれるなんて初めてだわ」


「あぁ、本当に美味しい。御国柄…いやうちの先祖が伊の大陸出身だから、伊の大陸の料理を食べていたが、どれもこれも初めてだ」


 このペンドラゴン王国の初代国王は伊の大陸に憧れを持っていたため、その文化を多く取り得ている。

 そのためトライーガ家のように伊の大陸から移住しているものが多く存在している。


「これは全部ホノカ様が本を見つけて下さり調理致しました。更にホノカ様の案で一手間を加えさせいただきました。」


 その本はホノカが隠れて書いた本を村の市場に紛れ込ませ偶然を装い買ったものである。


「そうだったの?ありがとうホノカ、シナモン料理長」


「いえいえ私の知識では奥方様のご体調を加味した料理を作ることができませんでした。本を見つけ工夫を凝らしたホノカ様のおかげでございます」


「僕は母上に元気を出してもらいたくて…僕が出来ることをやっただけです」


 ホノカの言葉を聞いて、グレンダは満面の笑みを見せるが、涙ぐんでしまう。


「…えぇ、ありがとう…。ホノカ」


 ホノカが神法術をかけようと提案しようとする。


「母上、僕…」


「う、」


 グレンダは急に疼くまってしまう。


「グレンダ!」「奥様!」


 クーガとメイドはグレンダに駆け寄る。


「う…産まれる…」


「大変だ!陣痛が始まった!今すぐ寝室に運ぶぞ!ヨハン綺麗な布とお湯、そして縄を!」


「はい!」


 クーガは流石3人目ともなるとあまり焦らずに支持をだす。


 グレンダを寝室に運び綺麗なシーツが敷かれたベットに乗せる。


「旦那様!縄を持ってきました。」


 力むための縄をメイドが庭の木に括って持ってきた。

 グレンダの怪力ではベッドに括った縄だとベッドがもたないため、木に括ってある。


 しかし今の彼女にはそんな膂力は残されていない。


「クーガ卿!遅くなりました!」


「マルタ!」


 久しぶりの登場マルタである。

 彼女は助産婦の資格を有していてユーガの出産は彼女が取り上げている。

 彼女が遅れた理由はお見合いをした結果無事に彼女はトライーガ領の隣の領主と結婚してため一時的に離れていたためである。


 連絡用魔導具で急遽呼び出され旦那の従魔と自身の魔法を併用して僅か15分で着くことができた。


「大分進んでいますね、グレンダ様の体調を考えてあまり時間がかかるのは危険です。グレンダ様には少し無理をさせてしまいますがよろしいですか?」


「ああ君に任せる」


「グレンダ様1、2の3で力んでください」


「えぇ…任せて」


「では、1、2の3!」


「ふん!」


「見えて来ましたよ!」


 しかし、グレンダの顔色が蒼白し始め、体調はここで急変してしまう。


「グレンダ!大丈夫か?!」


「ふぅぅ、ふぅぅ」


 今のグレンダの体力ではクーガの声かけにも応えられない。


「マルタ!」


「クーガ卿これは不味いです。このままではお子さんも…」


「駄目だ!両方とも…両方ともだ!」


「…」


 クーガの懇願にマルタ答えれないでいた。

 マルタもグレンダのことは助けたいが自身の専門外すぎることに戸惑っている。


 グレンダは掠れた目をクーガに向けて声を返す。


「クーガ…」


「グレンダ気をしっかり持つんだ!!」


「ホノカとユーガを此処に連れ来て頂戴…」


「あぁ、ああわかった」


 グレンダの懇願にクーガは答えた。


 クーガの指示を受け、ホノカとユーガがメイドに連れられてきた。


「母上…」


「おかあさま!」


 ホノカは母の衰弱してる姿に戸惑い狼狽える、ユーガは心配し近寄ろうとする。


「駄目ですよ!ユーガ坊ちゃん!」


「わー!おかあさまー!」


 メイドに止められるが泣きながら抵抗しグレンダの側に行こうとする。


「いいの…ホノカもこっちに来て頂戴…」


 グレンダはホノカとユーガを側にきて欲しく、メイドとホノカに優しい顔で懇願する。

 ホノカは震えながら近づき、メイドは泣きながらユーガを放す。


「…」


 ユーガはグレンダの腕にしがみつく。


「おかあさま!…」


 グレンダはその手でユーガの頭を撫でる。


「ユーガ…お父様とお兄様の言うことをきいて…好き嫌いせず…強い子になるのよ?」


「うん」


 今度はホノカの頬を撫でる。


「ホノカ…貴方は無理しないで…貴方は強いし賢いは…でも、ね、どんなに凄い人でも限界はあるの…だから、逃げていいの…辞めていいの…貴方さえ生きてくれれば」


 グレンダは最後にホノカとユーガを弱々しく抱きしめる。


 ホノカは泣きそうになるも勇気を出して、ある提案をする。


「はい…わかりました。

は、母上…僕に魔法を使わせてください…」


「ホノカ様。それは…」


 マルタがホノカを止めようとするが

クーガが無言でマルタの肩を掴んで止める。


「えぇ…お願いするわ…」


「ふぅー

我が力よ、味方に癒しを与えよ 回復魔法 ”ヒール“」(複合回復神法術“ゴッドキュア・ヒールエンチャント”)


 回復、水、風、火、付与の複合神法術。

 出産で減っていたグレンダのHP、耐久力、免疫力が回復していく。


 クーガはホノカの魔法の美しさにただ驚いていた。


「これは…」


(「魔法陣は間違いなく“ヒール”なのに…なのになんて神々しいの」)


 マルタは本当に回復魔法なのか疑いたくなるほど神々しいさに魅了され、呆けてしまう。


 そしてグレンダは目が霞んでいる所為か驚いていない。

 それでも体力は増幅していき、グレンダは身体を少し起こし、紐を引っ張りはじめ出産を再開する。


「何だか元気が湧いてきたわ…

マルタ、手伝って」


「は、はい!」


「ふ、ふんーーー」


 グレンダは一気に踏ん張る。


「グレンダ様!その調子です!」


「グレンダ!頑張れ!」「母上!」「おかあさま!」


「は、うんんんーーー」


「おぎゃあああああ」


 赤ん坊が無事に産まれた。


「グレンダ様おめでとうございます。女の子ですよ!」


 グレンダは霞んで瞳でしっかりと産まれた自身の娘を見つめる。


「え…えぇ…この子の…名前…は…ポーラ…」


 精一杯の大声で自身の娘に「ポーラ」と名付ける。


 クーガはそれをしっかりと聞き取った。

 

「あぁ、ポーラだな。わかった。だからしっかりしろグレンダ!…グレンダ?」


 グレンダは反応はおろか、息をしていない。


 皆それを拒むように大声でグレンダに声をかける。


「グレンダ様!」「おかあさま!」


「どいて!“ヒール”、“ヒール”!“ヒール”!」


 ホノカはクーガにぶつかりながら法術をかけて、グレンダを復活させようとするが…


「ホノカ…もうやめなさい、もう…」


 ホノカはは何度も法術をかけるが効果はない。


 グレンダのHPは0/0になってしまった。

 蘇生を使ったとしても元が0なので生き返っても死んでしまう。


 ホノカはグレンダのHPバーを見て、発狂してしまう。


「あぁぁぁっぁぁ、ごめんなさい!ごめんなさい!」


 ホノカは泣きながら謝り続ける。


「いいんだ。いいんだ。お前のせいじゃない…お前のせいじゃないんだ…」


 ホノカを慰めるクーガの顔にも涙が流れる。


 春は出会いと別れの季節…


 今日は新しい家族が産まれた喜ばしき日であり、大切な家族が亡くなった悲しい日になってしまった。

三日ほどお休みします。

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