第20話:親の心、子知らず?
(ホノカ視点)
俺は今、大牙山にいる。
父上が言っていたが、どうやらこの山には「ヌシ」が存在して危険らしい。
「ミソクリ」にも「主」と呼ばれるモンスターはいる。
見分けるのは簡単、「鑑定」して名前のところに<主>って書いてある。たったそれだけである。
そのエリアのモンスターで一番強いってだけで特別なことはほぼない。
その「ヌシ」がおもに冬の時期に餌を求めて麓まで降りてくるようで、
その所為で商人が村々を周れなくなったり、狩人が森で狩りを行えなくなり、お金や食料で困ってる村が多数出てくるらしい。
最近は家やネンコ村ぐらいは俺が狩りで手に入れた動物を提供しているし、うりは戦争がないときは農家の手伝いをしているから食料にはあまり困まってない。
でもほかのトライーガ領内や近隣の領はそうはいかない…
なので俺が倒して少しは安心させてあげないといつも心配ばかりさせている俺の罪滅ぼしだ。
そいつさえ倒せば、最近騒がしい領内もいくらかは平和になるだろ。
“感知”
うん。近くに誰もいないな。
「おーい、お前らもう大丈夫だぞ」
しゅたたた
ブーン。ぽふ
カブ五郎、お前は俺の頭の上が好きだな。
「みんな集まったな」
ヌシを倒すのについででこいつらのレベルupをする。
しかし、一体どんなモンスターなんだろう?
父上は「アレ」とか「ヌシ」とか言ってよくわからなかった…
でもあることを教えてくれた。
どうやら曾祖父様が「ヌシ」に挑んで負けたらしい。
その事を恥じて余り曾祖父様があまり詳しくは教えてくれなかったらしい。
つまり父上もどんなモンスターかは知らないみたいだ。
ヒントはある、曾祖父様は「ヌシ」の話をしたくれた後は決まって自分の背中の焼け爛れた跡を見せてくれたって。
「ヌシ」は炎を扱うようだ。
この山に炎を使うのは13種類いるけど一体どれなんだろう?
可能性があるのは4種類いる。
「ドラゴンモドキ」こいつはドラゴンの姿をした犬だ。背中の毛が翼のように見えるだけで飛ばない。あと口から炎を吐く。
「イフリートエイプ」こいつは尻尾があるゴリラだ。身体が炎を纏わせ、耐久系のスキルを豊富に習得している。
「ボムスカンク」スカンクがゴミムシみたいに屁を魔法で爆発させる。序盤はかなり強いが進化が3段階しかない残念モンスターだ。
「ゴブリンソーサラー」ゴブリンメイジの進化系の一種で炎、水、土、闇、死霊を扱う。かなり使いがってはいいが、火力はない。でも序盤では会ったら逃げなきゃいけないぐらい強い。この4体のなかで一番強い。
どれだろうな…
ま、手当たり次第に討伐していけばいいか。
「お前ら、強そうなモンスターがいたら知らせてくれ、倒せそうだったとしても俺を呼んでくれ、万が一ってのがあるからな」
今のコイツらならステータス、特殊能力がここら辺のモンスターとは格が違い過ぎる。
でも油断して負ける可能性がある。
「雑魚は好きにしていいからな。よし!行ってこい!」
「おん!」「こん!」「ぷご!」「わん!」「きしゃ!」
皆散りじりになった。
「暇だな…俺も狩りに参加しようかな?」
いや、アイツらのレベル上げの邪魔になるし、弱すぎて楽しくないもんな。
ドーーーン
ズズン…
ウル四郎だな…アイツ派手にやり過ぎだぞ…
ヒュン、パシ
フレイムアローだな…
ペキ
明日の訓練は厳しくしようかな?
◇
ホノカが軽くキレた頃の五体は…
「くおん?!」
「こん????」
「ぷ、ぷご?!?!!!」
「きゃ、きゃしゃ?きゃしゃ!」
四体は悪感から動きを止めるが…
「がう!」
ズドドドドドド
ウル四郎は瞬間移動の様に攻撃でモンスターを斬殺する。
「あうーーーー!」
ウル四郎は興奮から遠吠えをする。
ウル四郎以外の四体は悪感の何かの所為で消極的になってしまう。
でも何かの原因を生み出した本人は呑気に狩りを続ける。
◇
(数時間後、ホノカ視点)
「お前らだいぶ狩ってきたな」
「わん!」
「くおん…」「こん…」「ぷご…」「わ「きしゃ…」
ん?何で4体は元気ないんだな?
もしかして狩りでウル四郎に負けてるからか?
ウル四郎は目測20体は狩っている。
他の四体は4、5体しか狩って来ていないけどぱっと見だけど格上を倒してるから落ち込む必要ないのに…
こればっかりは本人達の気持ち問題だからな…誉めて元気づけてあげるか。
てかこんだけ倒したらこの山の生態系に影響出ないよな?
考えるのは止めよう…
ウル四郎のが多いから、ウル四郎の成果から確認していくか。
まずは…ゴブリンメイジ、ダメ。
これもダメ、ダメ、ダメ、ダメ…ん?
「これは火熊じゃん!懐かしい!コイツの素材で一式装備を作ったんだよな…ダメ」
ぽい
ウル四郎には悪いが目標のモンスターは一体もいなかった。
「へっへっへ」
でもウル四郎は褒めて欲しそうな粒らな瞳で見つめてくる…
「よしよし、頑張ったな」
そうしていると他の四体が自分の成果も見てくれと言わんばかりに近寄ってきた。
「わかった!わかった!見てやるから、袖を噛むな」
(数時間後)
何体かは目標のモンスターがいたが結局「ヌシ」では無かった…
暫くはモンスターを優先して狩って父上を安心させないとな!
◇
ホノカは気づかなかったが、ウル四郎が持ってきたモンスター「火熊」こそがずっと探してた山の「ヌシ」だったことに、正式には「日熊」という進化系だった。
このモンスターは「ミソクリ」では進化させることが困難でホノカのような上位プレイヤーですら知ってるいるのはごく一部だけだ。
結果として領内を平和にすることに成功したホノカであった。
(クーガの書斎)
クーガは書斎でもしもの時に備えて、「ヌシ」の文献を調べていた。
ホノカが「ヌシ」に興味を示す前に…
「あまり情報がないな…」
文献には「ヌシ」の情報はクーガがホノカに話した内容に毛が生えた程度のものばかり。
クーガが頭を抱えていると扉をノックする音が聞こえる。
コンコン
「入ってくれ」
ヨハンが書斎に入ってきた。
「クーガ様、お手紙が着ています」
「あぁ、助かる」
クーガは手紙を受け取り、送り主の名前に驚く。
(「デルーノー卿か、懐かしい…
内容は狩りの誘いか。まさか彼から私に誘いの手紙なんて嬉しいな」)
デルーノー子爵はクーガにとって同い年であり同窓生だ。
デルーノーはクーガが成功するたびに難癖をつけてきて、クーガにあっさりと躱されてきた噛ませ犬的存在だった。
「誰を誘ったんだ?」
クーガは手紙の名前を1、2人目を見て、デルーノーが自身に気を使ってくれてると思った。
「彼も変わったんだな…えっとリューズ卿、リバーシュ卿、オーアロー卿、
?、イカ…クッス男爵?誰だ?」
クーガは勉強は苦手だったが、人の名前と顔を覚えるのは得意だ。
そのため、同級生は全員、他クラス、上下のクラスは8割ぐらい覚えていた。
「まぁ、いいか横の関わりを増やすと思えば、場所もモンスターの少ない北部みたいだし」
クーガは見知らない人物の身元を一瞬気にしたが、デルーノー家の顔を立てて、横の関係を広げられるかもしれないと考えて承諾の手紙を書き始める。
「よし、ヨハン頼む」
「かしこまりました」
クーガは椅子にもたれかかり一息つく。
「嫌な事ばっかりじゃないな…」
(「ゆっくりもしていられない。この間の事もあるから、兵士を改めて厳選しないとな」)
この間の事とは以前に謎のゴブリン群に子息令嬢達が襲われた事件である。
結局、あの後に王国の騎士や冒険者ギルドも動いたが、犯人や原因もわかっていない。
その為にトライーガ家が位置する王国東部の貴族達は狩りに消極的になっていた。
その為トライーガ家も中々横の繋がりを広げ、強めれる機会が減っていた。
ガチャ
ヨハンが狩りの知らせを聞いてドノンが勝手に書斎に入ってきた。
「狩りが決まったって?」
「ドノン、あぁ丁度いい」
クーガはそれを一切咎めない。
「最近、俺は訓練に参加出来ていないからな。今育っている兵士はいるか?」
ドノンを狩りに参加させないのは、クーガがいないトライーガ領をドノンに守らせるためだ。
「そうだな…エレンと…ホノカ様と打ち込み訓練した数人だな」
「わかった、エレンとその数人を呼んできてくれ」
「おう、待ってな」
クーガは2週間後の狩りの為に今のうちに準備を進めて行く。