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異世界再生神話〜神は万能ではない〜  作者: 犬星梟太
第一章 転生奮闘編
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第19話:父の苦悩

(クーガ視点、書斎)


 ホノカは最近森で鳥や兎、熊ときにはモンスターも仕留めきている。

 しかもドノンの息子クーダ君をオークから助けたようだ。


 問題もある、ホノカはどうやら山でも狩りをしているようだ。

 山の管理や狩りをする者達の報告から麓付近に此処らへんにはない属性魔法の痕跡があるのがわかった。

 私は報告を聞いて、すぐにホノカの顔が出てきた…

 麓でよかった…山頂だったら…アレが反応していたかもしれない…


 あの子の強さならそこら辺の動物やモンスターなら問題無いがあの山には「ヌシ」がいる。

 私も実際に見たことは無いが祖父がよく言っていた。

『アレと戦うときは一人で戦ってはならない』

 祖父は一人でそれに挑み、剣を犠牲にし、やっと逃げることができたと言っていた。

 この話をするとき祖父は必ず無言で服を脱ぎ、焼け爛れた背中を見せてくれた。

『これは剣士…いや戦士としての生涯忘れることができない恥だ』

 俺達兄弟にこの話をしてくれた。


 戦争で活躍し、騎士爵の家から男爵へと認められ、領民からも信頼され頼りにされる我々家族にとって英雄のような祖父の失敗談は幼き私と兄弟達にとっては世界がひっくり返るような話だった。

 自分で言うのもなんだが、祖父のおかげで一人を除いて謙虚に育ったと思う。


 ホノカは利発的な子で愚かなことはしないだろう。我が弟のように…



(玄関)


 昔からの仲で山で山菜などの恵みを取って生計をたてる友人がいる。

 その友人が先程「最近山だけじゃない森の様子がおかしい」と告げられた。

 彼は俺とドノン達が何かをやらかしたときは、一人だけ逃げて怒られるのを回避してきた子狡賢奴だった。

 だが、彼の状況を見抜く目、頭のキレは確かだった。

 山と天気を見るだけで動物、モンスターの動向を予想して、山の果物を取っては俺達のオヤツにしていた。


 そんな彼が動物やモンスターの動向が判断が難しくなったと私に知らせてきた。

 私は最初「年齢のせいじゃないか?」と冗談混じりに揶揄うが、彼は「山の様子が変だ。俺達が知らない何かが起こっている。

」と彼は真剣な顔で私に告げた。


 彼のことを信じて今度森の調査を行うことにしよう。


 今回ばっかりは彼の考え過ぎであることを願うばかりだ…


 ホノカにも今度山の様子を聞いてみようあと奥まで行かないように注意しておかなければ。


(夕食)


「ホノカよ、山の事で聞きたいことがあるんだ」


「ぐふ、は、はい父上…」


「安心しなさい。山でのことを咎めるつもりはない…でも山には「ヌシ」がいるから気をつけなさい」


「はい」


「でも、次はないからな」


「すみません…」


 ホノカを怒ったのは初めてだな…


「話を戻すが最近村人から山の様子がおかしいと聞いているんだが、おまえは何か異変を感じなかったか?」


 ホノカは何か思い当たりことがあるのだろうか、顔が少し青くなってる。


「も、もしかしたら…魔法の練習をしているから…それのせいか、かも…?」


「いやそうではない。

私が言っているのはモンスターの動向のことだ。

生物の生態に影響を及ぼすほどの魔法は龍族やフェアリー族の力でも無い限りありえない」


 魔法の教師だったおふくろが俺達によく言っていたな…


「そうなんですね…それはよかったです…てっきり僕のせいかと思ってしまいました」


「ははは、安心しない。いくらお前が優秀だとはいえ無理だよ。

…すまないな我が家は小さいから、思うように魔法の練習ができないだろう。」


「いいえ、僕が山で練習してしまってご迷惑を…」


「いいんだ…山で練習するのはいいが麓までにしなさい。奥、山頂付近までは行かないように。何回も言うが山には危険なヌシがいるからな」


「わかりました。父上」


「おとうさま、ぼくもまほうのれんしゅしたいです!」


 ユーガが手を上げて私にせがんできた。


「はは、ユーガは気がはやいな」


 私が息子の可愛い言動に喜んでいるとグレンダの視線がチクチクと感じる…


「もう、貴方が食事中に物騒な話をするからですよ?」


 やはり少し怒っていたな…


「すまない…最近仕事が忙しくてな」


 戦争の準備だ…

 闘いは好きだ。誇りと誇りのぶつかり合い…歴史と技術の鬩ぎ合い、


 でも戦いは嫌いだ…戦争は失うものがあまりにも多すぎる…

 どれだけ利益を得たとしても失ったものには返ってこない…


 しかし私はその戦争で活躍して、利益を得ている…


 そんな私についた異名は「戦火」…

 全く…皮肉が効き過ぎだ。


「…訓練にあまり参加できてないから、この場で聞いてしまったんだ」


「そう…最近領内が騒がしいわ。私も元は辺境伯家の出なんですから手伝えることは手伝うわよ!」


「あ、あぁ。もちろんお願いするよ…」


 グレンダは確かに高等教育を受けて、私より、仕事をできる。

 だが、我が小さな領内の仕事には痴話喧嘩の仲裁などもある…グレンダはそういう話が大好きだ。

 だが…話がややこしくなり、ひどい場合は血が流れて仕事が増えてしまう…なので手伝ってもらっては困る。


 仕事の話はもうやめよう。

 掘り下げられる前に話を変えなくては!


「ホノカ…勉強は最近どうなんだ?訓練をもはややらなくてもいいくらい強いが勉強を疎かにしていないか?」


「はい。最近は算術、理術を中心に勉強しています。算術は算七(中一レベル)まで理術は理五(小五レベル)まで習学が済みました」


「もうそんなに!」


 グレンダも喜んでる。あと注意も逸れた。


「算術も理術もそこまで習得できているとはホノカは優秀だな」


 私はホノカぐらいのときは算一で手一杯だったのに、我が子は私に似ず優秀で嬉しいものだ。


「ありがとうございます。これもマルタのおかげです」


 うん。謙虚で貴族らしい。


 でもホノカは戦闘に於いて、かなりの自信を持っている。

 勉強が出来たらしっかりと喜びのに訓練とはいえ大人に勝っても喜ばない。


 戦闘に於いて子供らしさがない。


 これもトライーガの血もおふくろの血にも戦闘狂の血が流れているかな…

 

 今は勉強でも喜べることがあればいいか…


「これからも勉学に励むのだぞ?」


「もちろんです。父上」


 ユーガもホノカのように謙虚で強い子に育ってくれるとトライーガ家として安泰だ。

 親父もこういう風に考えてたんだろうな…


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