第31話:魔窟
『わかった。レイエンに見つかる前にお前らは一旦帰還しろ』
ホノカは連絡魔導具越しにイズモに指示を出すが…
「いや、あ、ごめん。何?」
イズモが人混みの所為で魔導具を耳から離してしまい聞き逃す。
「お前らは一旦帰って来い!」
「え?あ、うん。勿論そのつもり」
今度は聞き取ることができ、更にイズモ達は人混みから抜き出した。
『俺が合流するまでレイブン達に結界を張らせて待機しろ』
「わかった。伝える」
イズモは通信を切ってレイブンにホノカの指示を伝えようとする。
「レイブンさん、一旦帰ってホノカを待とうって」
しかしレイブンは話を遮ってイズモ達を自身の後ろに下がらせる。
「娘、少し待て」
レイブンの視線の先には異様な雰囲気を放つ騎士がいた。
「気取られた」
レイブン達の目の前に漆黒の騎士が現れた。
…
スケルトンユニオンナイト(name.Cー132)
Lv.800
スケルトンナイト(name.Fー67)
Lv.600
…
「投降シロ、投降シロ、投降シロ」
スケルトンナイト達はロボットように同じ単語のみを話続け…
「投降シロォオ!」
レイブン達に襲いかかる。
(聖魔法 ガブリエル・ホルン)
通常のスケルトンナイトは消えたがユニオンナイトは消えなかった。
「耐性持ちか」
レイブンは土の壁を造り時間稼ぎをする。
壁は一瞬で穴を開けられスケルトンナイトが顔を見せる。
「全属性魔法 ソクラテスの検眼」
レイブンは魔法陣越しにスケルトンナイトの身体に紋章を見る。
「弱点は…炎と光か」
(光炎魔法 エジソンの改造電球の熱光)
光の玉が出現すると光線を放ち、ユニオンナイトの頭部を撃ち抜く。
「ガ、ガ…」
しかし、ユニオンナイトは魔法の一撃に耐えた。
「レベルにしては堅いの」
レイブンは焦りを見せずに同じ魔法を倒れるまで連射する。
レイブンは倒したスケルトンナイトに近づいていき、スケルトンナイトの分析し始める。
「装備の所為か?」
イズモはその様子に苛立ち注意する。
「分析してないで速く帰ろう!此処ヤバいって!」
「そうじゃの」
レイブンはイズモに注意されると装備の一部を懐に仕舞い、帰還の為の詠唱をする。
「…空間魔法 ワープゲート」
レイブンの魔法で転移門が出現し、イズモ達は急いでセルベインを後にする。
(セルベイン王国 魔導師ギルド)
魔導師ギルドのギルドマスターの執務室に隠された部屋があり、
その部屋には50台以上のモニターがあり、まるで監視室のようになっておりセルベイン王国の全ての情報が集まる。
そこにいるレイエンの部下のダークエルフ、ルトスは報告書を読んで眉間に皺を寄せる。
「何?Cの132がやられただと?」
ルトスは座りながら報告書を睨みつける。
「Fの67もやられましたが」
ルトスは部下の発言に今度は部下を睨みつける。
部下はそれに身体を震わせる。
「馬鹿か?」
罵倒された部下は困惑の表情を浮かべる。
「Fは造ったばかりの雑兵だ。だが合成して強化しているスケルトンナイトがやられたのが問題なんだ。あれは1,000レベル以上を迎撃、捕縛するために設計されたんだぞ」
ルトスの苦言に部下は急いで頭を下げて謝罪する。
「私の考えが至らぬばかりにも、申し訳ございません」
ルトスはそれに対して呆れた視線で見下す。
「もういい…映像を見せろ」
部下はルトスの要求に大きな唾を呑みこんでから話始める。
「それが映っていないのです…」
「何…?」
「映るところで良い。見せろ」
「かしこまりました。おい、消えていない映像を全て出せ」
部下がコンピュータのような魔導具を操作している間にルトスは考えに耽る。
(「レイエン様に報告するとして…
部下の失態だけではなく報告出来ない…
私一人で片付けるか?いや、愚策だな」)
「映します」
ルトスはモニターを見ていると…
「4、26、44、49を止めろ」
部下はルトスの指示に従い、モニターの映像を停止させる。
「コイツだな」
モニターにはレイブンが変装している筋骨隆々なジェントルマンが映っていた。所々にはイズモやリントが映っている。
「見たことない奴だな。
スケルトンナイトが襲ったってことは正規の方法で入ってないってことだし当然か」
この国には結界が張っており、許可や魔法使用して入った者はスケルトンナイトが捕縛するようになっていた。
「警備隊のウェンに連絡しろ。
Gの100番台を見回りに出せ、100番以下は引っ込めろ」
ルトスは部下に指示を出していく。
「かしこまりました」
「そこのお前とお前とお前」
今度は別の部下達に指示を出していむ。
「お前は商業ギルドのシュミットに連絡しろ。
お前のとこの100番台を起動して、いつでも出せるようにしとけ。
次にお前は冒険者パーティの『聖霊精鋭隊』に新しいスケルトンナイトを取りに来いと伝えろ。
最後にお前、『闇の商人』に100番台を起動させろ」
ルトスが指示を出すと部下たちは指示を実行するために行動していく。
すると一人の部下がルトスに問いかける。
「良かったのですか?ギルド長、強化スケルトンをあんなに外に出してしまって…
国民が瘴気に耐えれるでしょうか?」
国民を心配したルトスは一瞬冷酷な眼差しを向けるが、部下が気づく前に表情を変えて部下の質問に答える。
「これは国家の存亡に関わる事態だ。国家を守るために犠牲が出るのは仕方のない事だ。
お前も国を守るために承服しろ」
「かしこまりました」
部下が納得するとルトスも立ち上がり行動し始める。
「私もAからCを起動しないとな。動作確認もして置きたい」
こうしてセルベイン王国はスケルトンナイトが跋扈する巣窟から瘴気溢れる魔窟へと変わり果てていく。
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