第27話:作戦会議(談話)
レイブンは目醒め、久しぶりに会ったホノカに平伏していた。
「お久しゅうございます。我が主君」
レイブンは主であるホノカに会えて嬉しい気持ちで一杯だが、ホノカは違う…
「『お久しゅうございます。』じゃねぇよ。この馬鹿爺」
ホノカはレイブンの頭にアイアンクローを喰らわす。
「いだだ!主君よ!この老体には響きます!」
「お前に聞いて置きたい事がある」
ホノカは聞くというにはあまりにも怖い顔している。
「な、何でしょう?」
雰囲気は完全に尋問である。
「お前、不死王の封印解除したよな?覚えているか?」
「はい。勿論でございます。珍しい術式でしたね。どうやらトラップがあったようで耐性低下を受けてしまい。不死王の憑依を許してしまいました…」
レイブンは反省はしているようだが、ホノカの怒り要因とは異なっている。
「その解除した理由ってアポカラリスに見せつけるためか?」
ホノカの尋問の目つけは懐疑と怒りが入り混じっていて、ホノカはこの後答えを承知のように見える。
「勿論その通りにご」
ゴッ
イレブンの頭から鈍い音が鳴り、レイブンはまた気絶することになる。
また暫くして目醒めたレイブンは至るところに絆創膏が張られている。
「いやはや、まさか私の所為でそのような実態になっていたとは」
同僚であるヴァレットが怒り出す。
「全くだ。貴殿は昔から幼稚過ぎる。
気に入った席を取られただの、
書庫の本を先に読まれらだの、
ソースを先に取られただの。本当に下らん!」
「むむ、ヴァレット殿…そんな昔のことを言わんでも…」
ギロ
レイブンは今までの喧嘩の理由を並べられ抗議しようとしたが、ホノカの突き刺す様な視線にそれを止めた。
その様子を見てホノカはため息を吐く。
「はぁ…本当にお前は昔から…」
レイブンとアポカラリスは決してホノカを君主として認めないわけではない。
『ミソクリ』の眷属のステタースには信頼度があり、二人ともカンストしている。
しかし、この二人は一回関わると必ず喧嘩もとい争いをしてしまい、毎回ホノカが二人を叱責をするというのが定番化してしまっていた。
苛立ちから俯くホノカにリントが声をかける。
「それでどうするんだい?あのダークエルフを見つけに行くんだろ?」
「そうだったな。その事を決めないとな」
ホノカはレイブンが気絶している間にレイエンの位置情報と神法術を抵抗する場所を探した。
ホノカは魔法で聖の大陸の模型を創り出し、レイエンのいる可能性がある場所を刺す。4つも…
「やっぱりレイエンは結界に入っているようで駄目だったが、抵抗があった場所はわかった」
「あんた大丈夫なの?あの超魔法じゃなくて…しん法術?使ったんでしょ?」
イズモはホノカが『光影神法術 神の目』を使用した後を知っているのでホノカを心配していた。
しかし、ホノカも事前に抵抗される前提で苦痛を伴うような事はしない。
新しく超広範囲の空気を綺麗にするだけの神法術を使って負担はほぼない。
「いや別の神法術を使ったから平気だ」
「それならいいけど」
そんなイズモ達をポーラは嬉しそうに観ていた。
「話を戻すぞ、この四ヶ所はどういう場所なのかは後で調べるとしてこの場所をどう調べるかだな」
「これなら三馬鹿勇者の誰かには居て貰った方がよかったかな?」
「まぁ、そうだな」
リントは軽口を叩くが珍しくホノカは肯定する。
「でも、アイツらはもう突っ込むべきじゃない」
「その優しさを僕にも向けて欲しいもんだよ」
ホノカはリントの文句を鼻で笑う。
「今さら。お前のその減らず口が減ったら幾らでも優しくしてやるよ」
「ははは、そんなことしたらどっちみち空から槍が降って来そうだね」
リントは乾いた笑い声でホノカからの提案を一蹴した。
その様子をレイブンは訝しげな目でリントを見る。
「小僧、本当にお前がリント・バルフムなのか?」
レイブンは事前にホノカからリントの事を聞いていたが信じられずにいた。
レイブンは『ミソクリ』のリントに会った事があるので自身の記憶との乖離に困惑していた。
「そうですが…何か?」
「いや何でもない」
ここでホノカは何かを誤魔化すように話を変える。
「調べるときが重要だな。戦う場合になったとき戦力の分散は避けたい」
「君は顔を覚えられただろうしね」
「はっ」
ホノカはリントを鼻で笑うと一瞬で別人に変身して見せた。
リントは読みが外れた事よりホノカの態度に苛立ち、顔を歪ませる。
ホノカは姿を戻して話を戻す。
「戦力の分散は危険だ」
ヴァレットがホノカの話に同意する。
「アイテムを使ったとはいえ、主を倒す程の神法術を使用出来るのは脅威です」
「あぁ、今までは相手が装備を揃えていないから何とかなっていたが…こっちも揃えないといけなくなってきた」
「そうですね…その…失礼ですが主だけは厳しいのでは…?」
ヴァレットはホノカの意見に賛成はしたが、申し訳なそうに意見を述べた。
そうホノカの持っている装備を半数がDDが造った物であり、残り半数もホノカとDDや他のメンバーとの合作でホノカは一人で星級装備を作った事がない。
ホノカもその事を理解しているために頭を抱える。
「…そうなんだよな…武器は無理でも戦力になるアポカラリスやフォーエルが居てくれたらな」
「主!アポカラリスなど」
レイブンはアポカラリスを話題に出されそれを否定しようとするが、ホノカの地雷を踏み抜いていく。
「おい、今のお前に俺の意見を否定する権利があると思ってんのか?」
「いえ…ありません…」
ホノカ達は暫くこれからの動向を熟考をするのであった。
◇
(リント視点)
またあの視線だ。
ホノカと初めて会ったときも、
ヴァレットさんと会ったときも、
今回も…
何故彼らは僕をあんな目で見るんだ。
まるで伝説の英雄に会ったかの様に僕を見るんだ。
お祖父様や父さんがあの視線を向けられていたから僕にはその視線がわかる。
でも何故僕にそんな視線を送るのか本当にわからない…
僕に取り得なんてない。
僕は父から相手にされていない。
母が媚薬を盛って産まれた子供っていうのもあるだろうけど、父は僕みたいな口達者な奴が苦手なんだ。
そんな父だが別に馬鹿ではない。
父は格闘術師と水遁を使い、戦乱で幾つも武功を上げ、ダンジョンを一つ踏破して他にもS級冒険者並の功績を上げている。
どれもこれも腕っ節だけではなし得る事は出来ない。
そんな父と…いやとんでもない商才を持つ祖父と縁を結びたかった王家が送った間者が母だ。
母は優秀な諜報員だ。
そんな母は僕を守るために暗殺術を教えた。
でも僕に才能なんてなかった。
初めて人を殺した時は知恵熱から倒れた。
暫くは殺した相手の顔を夢で思い出していた。
暗殺術のおかげで助かった事もあるけど…暗殺術なんて学ぶもんじゃない。
僕には父のような戦闘技術や母のような洞察力は無い。
でもホノカは何故かそれ以上の力を僕に求めていて、ホノカはそれが必然だと思っている。
ホノカを戦闘技術も暗殺術も知識の一つの様に覚えていて、人を殺すときの迷いが無い。道徳や情けがないわけじゃない。
ホノカは会話で判断する場合もあるが、一瞬で相手に情をかけるに値するか判断している。
才能とかいう次元じゃない。異常だ。
僕とは次元が違いすぎる。
ホノカにレベルを上げられて最近では僕も異常のような扱いを受けるが…やはりホノカは僕はこれ以上に成れると思っている。
ホノカ。君は僕の何を知っているんだい?
そういえばホノカはヴァレットさん達をいつ眷属していたんだ?
ホノカもそうだけど彼らは色んな大陸を知っている様な口ぶりをする。
でもその内容は間違っていたり古かったりする。
彼らは一体どこから現れたんだ?
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