第23話:痛み分け
レイエンは逃げ去り、神法術により滝のようなの雨が墓地全体に降り注ぐ。
「課金アイテムなんか使いやがって!」
レイエンが使用したのは課金アイテムであのケース1個で10,000円のアイテムで、効果としては詠唱と印を省略せずに発動するとアイテムに封じて好きなときに使用できるという物だ。
このアイテムの特筆する点は他の装備やアイテムと違い威力が弱体化されずに充填したプレイヤーの威力で使用できる点だ。
ホノカのような上位プレイヤーはスキルを揃えているので、こんなアイテムを使用しなくもいいし、下位プレイヤーも購入しても上位プレイヤーに頼まないといけないので不人気アイテムだった。
勿論ホノカはそのアイテムを知っている。そしてホノカは恐れたこのアイテムに充填したプレイヤーが自身よりINR(知力)が高く、ATK(攻撃力)をカンストしている場合を…
「水神法術 海神妃の憩い場」
ホノカは神法術で水の操作権を奪おうしたが効果が無い。
「クソが…」
(雷神法術 四重・大雷天驚熱界)
ホノカを軸とする雷の楕円が形成され、墓地を覆う。
ホノカの神法術が豪雨を受け止め、水を蒸発させていく。
しかし、蒸発し切れずに巨大な水玉が落ちてくる。
(合技 “サンダーパンチ”)
(“刀・超技 双斬波”)
「合体魔法 インフェルノキャノン」
「合体魔法 エレメントブラスター」
「合体魔法 エレメントキャッスル」
「合体魔法 エレメントスライサー」
「複合魔法 牙突氷風」
ホノカの神法術のお陰で威力や効果が無くなったただの巨大水玉は各自での対処を可能にしたが…
「ねぇ、あいつ落ちてきてない?」
イズモの目線の先には気絶したホノカがいる。
ホノカは激流を食い止めていたが、蒸発し切れない水がホノカを襲った。ホノカは急いで魚人専用スキル“水心”を使用して水中呼吸を可能にしようしたが、自身の神法術で熱せられた高温の水には殆ど酸素が残っていなかった。
そのため息が出来ずに窒息し気絶してしまっていた。
「ちっ」
ホノカを助けるためにリントが獣化していち早く飛び立つが…
(「これじゃあ間に合わない…」)
リントの速度では間に合わない。
「背中!!!!」
するとケマナ達からバフをかけられまくったイズモが飛んでくる。
リントはイズモの言葉の意図を一瞬で読み取り、背中を丸めてイズモが蹴り易いようにする。
「信じてやりなよ」(“大ジャンプ”)
イズモはリントの背中を利用して更に跳躍するときに、一言リントに伝えた。
リントはまたその言葉の意図を一緒で理解した。
「君も似てきてるよ」ボソ
リントはイズモの言葉に抵抗する様に愚痴を溢した。
もしリントがケマナ達からバフをかけられていたらこんなことする必要はなかったのだ。
リントは信じなかったわけじゃないが、自身の力を過信し始めていた。
リントはそれに気づき、自身に嫌悪した。
そしてホノカを抱えることに成功したイズモは自身の雷の放出で落下の速度を減速して、それのお陰で間に合ったリントに捉まり安全な場所で降ろしてもらい、無事にホノカを救うことに成功した。
(聖の大陸 マオス公国)
此処はマオス公国、レイエンの研究施設が存在する。
ホノカから逃げ研究施設に帰還したレイエンは激怒していた。
「くっそ!!!!」
レイエンの腕、肘の辺りに弾痕のような傷痕があり、傷が焼けていて出血は酷くはない。
この傷はホノカが逃げるレイエンに対して放った魔法によるものだ。
そして、たった二人の部下は異常事態にも関わらず、初めて目にするレイエンの負傷と激昂に恐怖して動けない。
「畜生!!!!あのチビ!!!」
レイエンは声を荒げながらポーションや鎮痛剤を服薬するが…
「ちっ、痛みも引かねぇ。くっそ!」
傷が治らなかったレイエンは更に激昂して自身の机を蹴り壊す。
そしてレイエンは部下に自身に回復を行うように指示を出す。
「おい!回復魔法を使え!早く!!!」
部下は恐る恐る回復魔法を使用
「…回復魔法 ハイヒーリング」
しかし効果はない…
「もういい!」
レイエンは再びケースを取り出しケースを開け…水晶玉を使おうとするがその手は止まった。
「…くっ…」
レイエンは暫く水晶玉を睨み、使用を悩んだ末に水晶玉を取り出し使用する。
「起動…」
【回復龍法術 超龍癒血】
レイエンの傷は瞬く間に回復していく。
傷が回復すると部下が怯えながら駆け寄る。
「お怪我は大丈夫ですか?」
よく見ると部下の二人とも女性のダークエルフだった。そして二人ともどことなくレイエンに似ている…
レイエンがその顔を見ると少し落ち付き、手招きをして部下を側に呼ぶ。
「ごめんね、ムトナ、ルトス」
レイエンは部下を大切な物を触るように撫でた。
先程あんなに怯えていた二人はレイエンに撫られ、頬を赤らめて喜ぶ。
「い、いいえ…レイエンのお怪我が治ってよかったです…」
「もう大丈夫なんですか?」
「あぁ大丈夫…大丈夫…」
部下の二人は子供…弟妹が兄姉の膝下で寝るように安心して横たわる。
するとレイエンはその場にはいない誰かを睨みつける。
「こんな屈辱あの時以来だ…」ボソ
(20年前 ナーニャ王国 王宮)
ドーン
煙幕から出てきたレイエンに光の斬撃と槍が飛んで来る。
…
氏名 レイエン・スケルツォ
レベル1,590
…
「闇魔法 堕天使の眼状紋翼」
レイエンは指輪のアイテムから目のついた翼を発動して光魔法の全攻撃を防いでしまう。
レイエンが戦うのは今は亡きナーニャの先代国王だ。
…
氏名 テリウム・ミロドン・ナーニャ
種族 人族
Lv.726
第一職業 王
第二職業 光魔導師
第三職業 鍛治師
称号『能ある鷹』『名工』『賢王』
…
部屋の隅には気絶している兵士達が横たわっている。
しかしテリウムは飄々とした態度でレイエンを見下す。
「秘密結社さんもだいぶ資金ぐりが厳しいんだろうね。未完成品の魔導具を欲しがるなんて」
レイエンはそれに目をピクつかせ、テリウムの言葉に対して返答する。
「ウザ、私の分野じゃねぇんだよ…
死霊魔法 スカルワイバーンの吐息」
(光魔法 スピードオブライト)
レイエンはそのまま攻撃を仕掛けるが、テリウムはあっさり回避して再び口撃を開始する。
「じゃあこれを手に入れても意味無いでしょ。馬鹿みたいに暴れるの止めて大人しく捕らえられてくれないかなー」(光魔法 ライトブレス)
テリウムは余裕そうに口撃と攻撃を同時に行う。
レイエンは回避スキルを使用して避けると、吠えながら反撃する。
「マジでうぜぇ!
死霊魔法 スケルトンの指骨弾幕」
「君は面白いほど反応するね」
(光魔法 ライトプロテクト、
光魔法 ライトシールド、
光魔法 セクス・ライトランス)
怒り狂ったレイエンの攻撃をテリウムは防御で受け止めつつ、攻撃を同時に行う。
「何をしたいのか知らないけどどうせ碌な事じゃないんでしょ?諦めなって」
それに更に激昂したレイエンはテリウムの光魔法ごとテリウムを攻撃しようとする。
「黙れよ、お前!!!
複合魔法 鬼火の業火球」
(光魔法 スピードオブライト)
頭に血が昇ったレイエンの攻撃はテリウムに当たる気配は無い。
そしてテリウムは攻勢に出る。
(光魔法 ライトボール)
(光魔法 スピードオブライト)
(光魔法 ライトボール)
(光魔法 スピードオブライト)
…
テリウムは光速移動と光球でレイエンを袋叩きにする。
「し…死霊…がは」
この時レイエンは無詠唱スキルのレベルが低いため詠唱を必要とし、テリウムを格下と判断し装備も揃えていなかった。
それにより連撃で詠唱が出来ずにいた。
テリウムは自身より倍以上のレベルがある相手を圧倒した。
激しい攻撃にレイエンは気絶し…
「これで終わりかな」
(光魔法 堕天使の独房)+(聖印“cera(魔封)”)
テリウムは光魔法と聖印の合わせ技でレイエンの動きと魔法を封じた。
「神官と尋問官、それに封印が得意な魔導師数人呼ばないとな」
テリウムは部下を待っていると足元に落ちているある物に気づく。
「これは…」
それはロケットだった。
テリウムはロケットを開ける。
テリウムはこれが何となく誰の物かもわかっていたし、不躾だと思っていたが彼女の行動原理を知って起きたかった。
ロケットを開けると三人の人物…一人は顔が切れていて人物の特定は出来ないが二人のダークエルフの少女を抱えているから恐らくこの子達たちの父親だと推測出来る…
そしてその二人の少女の一人は目の前のレイエンだとわかる。そしてもう一人はレイエンより年上でレイエンによく似ているため姉だとわかる。
そしてテリウムはレイエンの先程の言葉でレイエンの目的を察知した。
「君も馬鹿な事をしたね」
ピク
レイエンがテリウムの言葉に反応する。
「お姉さんを生き返らせるためにこんな事を犯すなんて…」
レイエンは目を薄らと開け…
「お姉さんは君が禁忌を犯してまで、生き返りたくはないはずだ」
レイエンの目に自身のロケットを持つテリウムが映る。
「触るなああああ!!!!!」
レイエンの魔法でも何でもないただの魔力が爆発する。
テリウムはその事に驚愕する。
(「この状態で魔力を暴発させたのか!?」)
レイエンは魔力もといエネルギーだけでテリウムの魔法を剥がした。
「死霊魔法 ゴーストダガー」
(「不味い…」)(光魔法 ライトスフィア)
テリウムはレイエンの魔法に反応出来たが…
ズシャ
肩を切りつけられる。
…
氏名 テリウム・ミロドン・ナーニャ(怨念)(恐怖)
…
魔法の効果でデバフも付与されてしまった。
テリウムはアイテムを使用してデバフを解除しようとするが…
「死霊魔法 スケルトンの指骨超弾幕」
レイエンは回復の隙を与えなかった。
それでもテリウムは抵抗するが…
(光魔法)「アッく」
デバブにより魔法を失敗してしまい…
ダダダ
「光魔法! ウリエルの翼盾!」
テリウムは攻撃されながらも無理矢理に魔法を発動して自分の身を守ったが…
右手の平と脇腹に大きな穴が、右耳、左手、右脚が欠損してしまっている。
そしてレイエンは吹き飛ばしたテリウムの左手から自身のロケットを取り出す。
するとレイエンは生き残ったテリウムを睨みつける。
「ちっ…早く死ねよ」
テリウムはレイエンの言葉に乾いた笑い声を出して答える。
「まだ死ねないさ…漸く愚息の婚約者が決まったんだ…」
ドン
先程まで何故か立てていたテリウムは等々倒れてしまう。
「孫も見ていないのに…」
テリウムは何とかレイエンの方を向いて、身体を起こそうとする。
レイエンはそんなテリウムに近づく。
「その糞みたいな夢を叶えずに死ね…
死霊魔法 スケルトンの融合薙刀」
レイエンはテリウムにトドメを刺そうとする。
テリウムは抵抗しようするがデバフや痛みから魔法を上手く発動出来ない。
横たわっていたナーニャの騎士が漸く目を覚まし最悪の状態を目の当たりにする。
「よせ!!!」
止めとするが身体が動かずに声で止めようとするが、それも叶わない。
ボト
落ちた…
「ぐああああ」
レイエンの腕が。
「殿下!!!」
レイエンの腕を斬り飛ばしたのは若き頃のフリヴォーラだった。
フリヴォーラはそのままレイエンの首を斬り飛ばそうとする。
「死霊魔法 スケルトンウォール」
レイエンはフリヴォーラを阻もうとするが…
(空間魔法 ショートワープ)
レイエンは人骨の壁を無視して攻撃する。
ガキン
レイエンは腕を斬り飛ばされたときの人骨の薙刀を拾い応戦した。
するとフリヴォーラだけでなくナーニャの騎士達が集まり始める。
騎士達はレイエンを取り込み臨戦体制に入る。
レイエンは自身に勝てる気でいるフリヴォーラやナーニャ騎士達に苛立つ。
「ウゼェ!不意打ちで腕切ったからって調子乗んなよ!!!
お前ら如き片手…うっ」
激昂したレイエンだったがテリウムとの戦いの疲労とダメージでふらつく。
フリヴォーラはその一瞬を見逃さない。
「くそ!!!」
レイエンはワザと一撃を喰らい、その勢いを利用して目的の物のところまで転倒する。
そして…
「空間魔法!アージェントエスケープ!」
レイエンはナーニャから逃げ果せた。
(マオス公国 現在)
レイエンは完治して綺麗になった腕を眺めている。
(「あと少し…あともう少しで…お姉ちゃん…もう少しで会えるよ…」)
レイエンは自身のロケットを握りしめ思い耽る。
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