第17話:勇者の受難
すみません…季節の変わりめで体調を崩しました。
(ガトー公国 シトロン子爵領の外れ)
ホノカ達はガトー公国周辺で不死王の軍を再び撃退した。
「この町も随分お金があるみたいだね」
「町っていうか…ほぼ城塞だろ」
ホノカがいる今の町は町と云うにはあまりにも堅牢な壁に覆われていて、ホノカが言った通り城塞と呼ぶのが相応しい。
しかしその城塞も悪魔かアンデッドにやられたであろう破壊された門が倒壊している。
城塞町を襲わった混成軍は前回の倍はあり、何とか粘っていたがホノカ達来なければ陥落していたであろう。
「まぁ、城塞の開発なんて他国の人間に知られるわけにはいかないよね」
「あ、そうだな」
ホノカ達が勝手に疑って勝手に納得していると…
「いや〜ありがとうございます。勇者様方」
また疑いたくなる容姿のまん丸と太った中年男性が来て、ホノカ達に御礼を言いに来た。
中年男性はエラの方を見て話始める。
「『田舎』…失礼。かの勇者様はお噂では剣も握ったことの無い痩せ男と聞きましたが…いや〜素晴らしいですな。
あの無駄の無い動きに美しい剣とそれに見合う技、素晴らしいの一言ですな。
噂のなどあてになりませんな」
中年男性はエラを誉め讃える。
「いや〜そんな勇者様よりお強い貴方方、勇者様もかなりお強いのに、貴方方はよりお強い」
中年男性は今度はホノカ達を褒め始める。
ホノカ達はそれを怪訝な表情で聞く。
「そんな一つお耳に入れたたい事がございます」
「なんだ?」
「実はですね、悪魔どもが盗んだ物資を運んでいる場所を見つけたようで…
まだ奴らの残党がいる可能性がございますので、
もしよろしければお力をお貸し願えませんでしょうか?
あ、勿論報酬は用意致します。お望みの額…この意味をわかっていただけますね?」
中年男性は先程とは打って変わり少し凄むようにホノカ達に確認する。
ホノカは少し答えに困ると、リントの方を見る。
リントは「問題無いじゃない?」と顔で答える。
「あぁ…」
ホノカの答えに満足したのか中年男性は先程の様子に戻る。
「ご理解のほど感謝致します」
「あ、自己紹介遅くなりました。
ワタクシ、この村の村長兼ガトー国軍軍務次官ボン・ボンドです…以後お見知り置きを…
後の事はこの者達とお話しください。私はまだまだ用事がありますから」
ボンは会釈をしてこの場を去っていく。
今度はボンの部下がホノカ達に話かける。
「どうも、この村の村人兼ガトー公国一等軍長ペロー・ペロキャンです。
では早速我々と来ていただけませんか?」
「わかった。俺だけでいいか?」
「はい。構いません」
「ヴァレット、瓦礫の撤去だけ手伝ってやれ。俺はコイツらとモンスターどもの巣に行って来る」
「はっかしこまりました」
「リントはポーラのところに行って手伝ってこい」
「僕は君の配下じゃないんだけどな」
「あ?」
「はいはい」
リントは一言だけ文句を言うとあっけらかんとその場を後にしていく。
「タヌ太郎達は此処の周辺を警戒しておけ、万が一敵が来たらタヌ太郎とトン三郎はポーラのところに、コン次郎は敵の排除、カブ五郎は俺とヴァレットへの連絡を」
ホノカは従魔達に指令を出す。因みにウル四郎はポーラのところにいる。
「「「「はい!」」」」
従魔は散開して任務に当たる。
「じゃあ行くか」
「着いて来てください」
ホノカはそれを確認するとガトー軍の人間達と混成軍の物資庫へと向かう。
リントはホノカの後ろ姿を見送ると遅い足取りでポーラ達の元へ向かう。
イズモとポーラは村の女性達と炊き出しを作っていた。
「ふ〜ん、ふ〜ん」
ポーラは鼻歌を唄いながら鍋を掻き混ぜていた。
そんなポーラを村人はにこやかに見守る。
一人の女性がポーラが何を作っているのか気になり質問する。
「ポーラちゃんこれ何ていうお料理なの?」
「カレーっていうの!」
「カレー!龍の大陸のお料理よね?ご家族が龍の大陸の方なの?!」
カレーは龍の大陸の食べ物だったので女性はポーラに余計に興味がそそられる。
「お兄ちゃんに教えてくれたからわからない」
「あらそうなの?でもお兄ちゃんが知ってるなら…」
「奥さま」
リントがポーラと女性の話に割り込んだ。
「これ以上は個人情報なのでお控えください」
「ごめんなさい!私ったら」
「小虎から巣を知ってもいいですけど…
巣で眠る親虎を起こすのは止めた方がいいですよ」
リントの言葉で何人か立ち去っていく。
(「ふん、S級冒険者に怖がるくらいななら聞かなきゃいいのに…
あのデブの命令なんだろうけどもっとか諜報員も大変だね」)
先程の女性も含めガトー軍の諜報員だった。リントはそれに気づき警告した。
「さっきおばさん何かあんの?」
諜報活動に気づいていないイズモはリントに質問してきた。
「あぁ、おばさんの世間話が嫌だっただけ」
「…あっそ」
リントは誤魔化してイズモに言うと、誤魔化されたイズモは眉を細めた。
(「僕に全く子守なんて任せて…僕は子どもが苦手だって言うのに…それに」)
リントは心の中でホノカへの愚痴を垂れ流していた。
「なんだ〜?もう終わってじゃん」
1人の青年が急にやってきた。更に少年の周りにはと10人の女性達がいた。
村人達の顔が険しくなる。
「あれはカスダーケの…」
現れた青年はカスダーケの勇者フォトンだった。
フォトンは村人に話かける。
「おい、そこのお前」
「…」
しかしフォトンは無視される。
それにフォトンの仲間が憤慨する。
「えー何、今の奴」
フォトンは無視された事を気にも止めない。
「さぁ…あっ」
フォトンはあるイズモに気づく。
フォトンは真っ直ぐイズモの元へ向かっていく。
そして声をかける。
「き…」
ズン
フォトンはイズモの胸を見たため顔面に拳を叩き込まれた。
しかしフォトンはイズモのパンチを一発耐えた。
「いたぁ、ひゅうに何すんだ!ただ…」
フォトンはイズモに文句を吐こうとしたが、イズモは指から雷撃を放つ。
「喋んな」
バチバチバチ
「か、かっは…」
フォトンはイズモの雷撃を喰らい、意識がやっと…飛んでいなかった。
「し…しび、れ、る〜」
フォトンの仲間が騒ぎ始める。
「チビてめぇ!」
「だ、大丈夫…大丈夫、これ、くらいなら…でも回復お願い」
仲間の女性が回復をしていく。
回復したフォトンはまたイズモを見て…
「a」
バチバチ
雷撃を放たれる。
「お前には手加減しなくてよさそうだな」
イズモはフォトンに耐性があるとわかるとほぼ本気の雷撃放った。
それにフォトンの仲間達は殺気立つ。
「チビ、勇者であるフォトン様にこんな事してただで済むと思うなよ?」
「フォトン様は優しいけど、お前は奴隷落ち確定な」
「聞こえてんのか?ブス、おーい!ブス死刑、お前し・け・い」
女性達はイズモに罵詈雑言を吐く。
しかし、仲間の一人がそれを止める。
「落ち着け!此処はカスダーケの敵国なんだ。入国した時点で襲われないだけでも奇跡だった。これくらいで」
彼女達はガトー公国とカスダーケ王国が敵対だとしっかりと知っていた。
入国時も酷い目で見られていた。
彼女ともう二人の女性はカスダーケ出身ではなく、冒険者として依頼され、フォトンと仲間になっている。
「仲間が悪かった。私は冒険者でS級『閃剣』のジェロナ、よろしく」
「…」
イズモは先程の女性達のこともありフォトンの仲間と口を聞こうとしない。
そこにリントが入る。
「彼女は男性に胸を見られるの酷く嫌なんだ」
リントの言葉に先程の女性達が罵詈雑言を並べるが、ジェロナが誤魔化すように謝罪する。
「それは本当にすまなかった」
リントはにこやかに対応する。
「…謝罪する前にそれらを下げていただけませんか?これじゃあまともに会話ができない」
「わかった…」
二人の女性が他のメンバーを別のところに移動しようとするが…
「いやーすまなかった!」
フォトンが復活した。
ガシ
ジェロナは立ち上がろうとした瞬間フォトンの目を覆い隠す。
フォトンはそれを剥がそうとするがビクともしない。
「おい、起きるな。お前が起きたら情報収集すら出来ない」
「いや謝罪ぐらいさせてくれ」
フォトンは目を隠されながらイズモの方を向く。
「いやーすまないね。僕の熱い視線で君の心を火傷させてしまったんだね」キラ
バチバチバチ
イズモはあまりの気持ち悪さに身体から電気が漏れ出てしまった。
「今すぐソイツを何処かやれ…殺しそう」
「僕も同意見だね」
イズモの殺意マシマシに言葉にリントが同意する。
しかしここでとんでもない事が起こる。
「おい!さっきからフォトン様をナメやがって!!!今すぐ土下座して謝罪しろ!!!このガキがどうなってもいいのか!?」
フォトンの仲間は炊き出し用の包丁を手に取りポーラを人質にとった。
このことにフォトンは仲間の行動に驚愕する。
「おい!何やってるんだ!?離せ!子供だぞ?!」
しかし仲間には興奮していて一切聞こえていない。
「フォトン様待ってくださいね。今すぐこのクズ共に謝罪させますので…おい!早く土下座しろ!!!」
女性はフォトンに可愛い子振った声だした後、怒号を上げる。
その様子にイズモとリントは目を据わらせ、女性を消す算段を立てている。
ジェロナは二人の殺気に気づき仲間を止めるようとする。
「おい!早くその子を放せ!!死ぬぞ!?!」
「黙れババア!!!いいから早く土下座しろ!!!」
しかしイズモは一ミリたりとも動かない。
女性は動こうとしないイズモ達にすぐにシビレを切らす。
「…殺す!!」
イズモもポーラを助けるために動く。
しかし…
ガシ
ポーラが包丁を止めた。更に…
パキン
ポーラは自身に突きつけられた短剣を握り潰した。
「へ?」
ポーラはそのまま女の顎に拳を繰り出す。
バキバキ
「っ…」
「イズモちゃんを傷つけた悪い人…貴方は瞬く反省しなさい」
ポーラのこの様子は大人びていてイズモやリントを驚かせた。
しかしこれでは終わらない。
「立ち去れ」
巨大化したコン次郎達が現れた。
コン次郎達は村様子が変だと気づき様子を観にきたら、ポーラにナイフを突き刺す瞬間を目の当たりにした。
コン次郎達の姿と殺気にジェロナを含め、フォトンの仲間達は怯え切って動けない。
「その者は触れてはいけないものに触れた…命が惜しくば…立ち去れ!!」
ジェロナはフォトン達を連れて脱兎の如く去っていく。
従魔達は去るのを確認するといつも小さな姿に変身して一斉にポーラの身を按じる。
「大丈夫ですか!?ポーラ様!」
「怪我はしていませんか!?」
「怖かったでしょう!?」
従魔は今までにない事態に取り乱し、てんやわんやになっていた。
「大丈夫!私アレくらいじゃ怪我しない!怖くもなかったよ!」
ポーラは力こぶをつくり従魔を安心させようとするが従魔たちは安心しないで心配し続けた。
リントはポーラの無事に安心していた。
しかしある心配があった…
「はぁ…ホノカに何て説明しよう…」
いいね、感想、Twitterフォロー、ブックマーク登録、誤字報告などより良い作品を作る為、活動の原動力になるのでご協力お願いします。
Twitter▶︎@inuboshi_fatowl




