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異世界再生神話〜神は万能ではない〜  作者: 犬星梟太
第五章 英雄の師匠編

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第16話:勇者の意地

すみません。雪掻きで再びサボっていました。

本当申し訳ございません。

(ガトー公国)

 

「はぁ…はぁ…」


 エラはあるものと対峙していた。


「“剣斬”」


スパン


 エラが何かを倒した。するとすぐにホノカの方へと向く。


「先生…」


「お疲れさん。無駄な動きが無くなってきたな…複数相手に囲まれないように立ち回るのもよかった。

相手の動きも予測出来ていたし、遠距離への対処も速やかでよかったよ」


 ホノカは今回のエラの戦いを評価する。


「これであとは本物のモンスターで出来るかだな」


 エラは残念ながら生物を傷つけられないでいた。

今エラが倒したのはホノカは作ったゴーレムだ。


 エラは最後の言葉で申し訳なさそうな顔になり俯く。


「はい…」


「…訓練はこれくらいにしておやつにするか」


 ホノカはこれ以上の言葉は追い込むすぎると考えおやつを提案する。


「いや…素振りしてからにします」


 しかし、エラが一日でも早くモンスターと戦えるようになりたかった。だから一人で素振りをすることにした。


 ホノカもエラの気持ちを知っているのでその提案を否定しない。


「そうか、怪我はするなよ」


「はい!」


 エラは良い返事を聞いて、ホノカは頷いて先に切り上げる。


 するとイズモが二人を待っていた。


 イズモは素振りをしているエラを哀れむような顔で見つめていた。

そしてホノカに何か解決策は無いのか質問する。

 

「何とかならないの?もう十分戦えるようになったのに…あれじゃあ…」


「無理だな。ああいうのは気持ちの問題だからな。無理にやれば身体か心が壊れる…今は待つしかない」


「…そうだね」


 フ二人はエラと隠れているコン次郎を残して、皆が焚き火をしている場所に着いた。


 ホノカが戻ってくるとイブロストがエラの調子を聞きに来た。


「どうでしたか?」


「かなりいい動きするようになったよ」


 ホノカはエラの事を思って誉めた。


「そうですか。それは良かったです。…ところでエアル様は?」


「もう続けたいって素振りしてる」


「そうでしたか」


 イブロストは護衛するためにエラの元に行こうとするが…


「今は一人にしてやってくれ、大丈夫。護衛はもう着いてる」


 イブロストはホノカの言葉でエラの状況を察して、ホノカがエラの力の育成だけでなく気持ちも考えてくれていりことがわかり感謝する。


「…わかりました。ありがとうございます」


「いいよ。おやつにするけど食うか?」


 今の言葉でポーラと戯れていたウル四郎が瞬時にやって来る。


「私は結構…」


 イブロストは上空の何かに気がつく。


「あれは…」


 イブロストの目線の先には水色リボンを首につけた鳩が飛んでいる。


「失礼、ルナティアの伝書鳩です」


 飛んでいる鳩がルナティア王国の伝書鳩だった。

ルナティア王国はテイムした鳩に強化系の魔法が付与されているリボンをつけて長距離、確実、即日配達を可能にしている。鳩は烏や鳶に襲われても迎撃できるほどに強い。


 イブロストがそんな魔法ムキムキ鳩が停まれるように手を出すと鳩はすぐにその手に停まる。

イブロストは鳩の背中にある筒から文書を取り出す。


「なんと…」


 文書を読んだイブロストは深刻な表情になり、ホノカの方へと顔を向ける。


「ホノカ殿…大変です…」


「どうした?」


「不死王の軍勢がこの近くに出たようです」


 ホノカはイブロストの話の内容に疑問に感じて鸚鵡返しで聞く。


「不死王?」


 イブロストはホノカの質問に変な声が出てしまう。


「え?」


「は?」


「ん?」


 二人は沈黙して変な間が生まれる。


「不死王って何?」


 ホノカが最初に口を開き、改めて質問する。


 イブロストも漸く事態を理解し始めた。


 二人の様子が可笑しいのでリントが野次馬感覚でやって来た。

因みにウル四郎はおやつを未だ待っている。


「えっと、あれ?聞いてませんか?」


「何が?」


「あの…大陸の危機が起こっていて…」


「んー…そう云えば内容は聞いていなかったな」


「そうだね。修行を早めるってなったときは状況が悪化って聞いた気がするし」


「あれ?モンスターの活性化って言ってなかったけ?」


 ホノカ達は聖の大陸の危機の内容自体は知らされなかった。


 イブロストは改めて聖の大陸の危機とある伝説をホノカ達に伝える。


「現在聖の大陸各地にモンスターの混成軍が村々を襲っているのです」


「ほう」


「その混成軍なのですが悪魔とアンデットで構成されているのです」


「ほうほう」


「実はこの混成軍は何千年か何百年も昔に現れているのです」


 ホノカはイブロストの曖昧な話にツッコミを入れる。


「何千…何百ってそこ幅ありすぎじゃないか?」


 イブロストは聞いてくれてありがたいと言わんばかりで学者みたいに饒舌になる。


「あ、それなんですが二つの記述が有りまして…どちらも無くなっている部分があって合致する部分と相違する部分があってわからないのです」


「成程その合致部分が悪魔とアンデットの混成軍…」


「と不死王」


 リントがホノカの言葉に最後付け足す。


「はい。二つの伝説ともに不死王が現れ、悪魔とアンデットを操り聖の大陸を災いを齎しているのです」


「因みに違う点は何なんだ?」


「数千年前の伝説では不死王を倒していて、数百年前は封印しているのです。」


「随分違うな。封印ってことは何か残ってないのか?」


 ホノカは質問に初めてイブロストの言葉が口籠る。


「…残っています。いや…いました…聖の大陸の南部に位置する共同墓地に封印され…勇者の末裔に当たる国が連合軍を組みその墓地を管理、防衛していました…が…突然封印が解かれてしまい…管理していた連合軍は壊滅してしまいました」


「そうか…因みにだけど誰が封印したんだ?」


「『嚮導の勇者』の血筋にあたる『天馬の勇者』クラーナです」


「そうか…お前やけに詳しいな」


「あ、私幼い頃は考古学者になりたかったです」


「あぁ、そうなんだ」


 ホノカはイブロストの意外な一面に笑みを溢すと話を元に戻す。


「そのモンスターの群勢がいるなら、暫くは外で野営は止めたほうがいいな」


 ホノカの言葉にリントは疑問に思う。


「君や従魔がいるなら大丈夫じゃない?」


「馬鹿俺らじゃねぇよ。村の人を護衛も兼ねてだよ」


「ふふ、やっぱ君は優しい」


「うるせぇ、出る準備しろ。いつも無駄にキャンプ道具広げてやがって…」


「守りを君達が完璧にやってくれるお陰で僕は楽しんで本が読めるよ」


チッ


 ホノカのデカい舌打ちが鳴り響いた。

 

 ホノカは気を取り直してイブロストに指示を出していく。


「イブロスト、エアルに事態が急変したことと村に向かうことを知らせくれ」


「は、はい!」


 イブロストは駆け足でエラの元に向かった。


 そしてウル四郎は漸くジャーキーを貰えてご満悦だ。勿論ほかの従魔にもジャーキーをあげた。


 こうしてホノカ達は急遽近くの村に向かった…


 すると…


「ここまで来てのかよ」


 ホノカ達の目の前には夥しい数のアンデットの大群が村を襲っている光景だった。


「アイツら食い物盗んでんのか?」


 アンデット達は村の食糧や家畜を運んでいた。


 家の近くには抵抗したと思われる冒険者が倒れていたり、手を上げて抵抗しない意思表示をしていた。


「ボッケとしてる場合じゃないな」


 ホノカの一言でリントを含めた全員が行動に移す。


 ホノカは飛んでいる悪魔を…


「聖魔法 セイントスパーク」


 ヴァレットとイブロストは村人を守りながら誘導を…


「早く逃げるんだ!」

「ここは我々が!」


 イズモとリントはスケルトンを…


「合技・サンダーパンチ」「暗殺術・刺突」


 ポーラと従魔は逃げ足が遅いお年寄りを守っていた。


「炎魔法 フレイムシールド!」

「水魔法 ウォーターシールド」

「土魔法 ランドカット」


 ホノカ達は的確に村人を守りつつ、モンスターの混成軍を撃退していくが…


「ターシー!」「ズーパ!」


 若いカップルが彼女が転けて逃げ遅れ、スケルトンに襲われていた。


「ちっ」


 ホノカが舌打ちをしながらカップルを救おうとしたら…


スパン


 ホノカが対処する前にスケルトンは真っ二つになる。


「エアル」


 スケルトンを倒したのはエラだった。


「早く逃げてください!」


「「は、はい」」


 エアルはそのまま戦闘に参加してスケルトンを倒していく。

 

 こうしてホノカ達はモンスターの混成軍を倒していった。


 村長がホノカ達にお礼を言う。


「ありがとうございます」


「怪我人がいるなら言ってくれ、俺ら回復魔法も使えるから」


 ホノカは村人を治そうとするが…


「で、ですが我々にはお金が…」


 村長は金銭面から遠慮してしまう。


 するとリントが口を挟む。


「本当かい?それにしては家は真新しくて立派だし、備蓄もかなり多いよね?」


 リントの言葉に村長は言い淀んでしまう。


「それは…その…」


 リントは更に畳み掛ける。


「ていうかさ、ここの食糧を多くないかい?村の備蓄にしてはあまりにも多過ぎる…上級貴族や城砦の食糧庫なみだよ」


「確かにな」


 ホノカはリント言葉を聞いて村の違和感に気づき始める。


 二人は村長を睨むように見つめる。


「言わないぞ」


 村長の様子にホノカは裏があると思い村長を煽る。


「じゃあこれ、俺が貰ってもいいか?」


「駄目だ!!!」


 すると村長は凄い剣幕で話すが、一瞬で我に変える。


「いや…その…」


「おい。いい加減話せ。この国の王都に報告してもいいだんだぞ?」


 ホノカの脅しで村長は口を割り始めた。


 この村は此処を治めている貴族と共謀して税を誤魔化していた。

納められるはずの食糧は貴族が秘密裏に他国に売り捌き、その金額の殆どは自身の懐に、そしてこの村には僅かばかりの金品が返納されていた。


 村長は話の最後に悪態を吐く。


「俺ら平民は貴族様の指示に従うしかない。断ったら何をされるか…想像もしたくない…」


「…」


 その言葉にホノカが思うところがあるのか黙って聞いてるがリントは…


「でもそれで良い思いはしてたんだよね?それが敵国に渡っていたら国から処罰は免れないよ。家族もね」


 村長は「家族も」という言葉に悲壮の顔を露わにするがリントの言葉は止まらない。


「そのときどれだけ言い訳しようと罪は罪だよ」


 村長はリントの言葉に罪を自覚して泣き出してまう。


「くっく…」


「もう…勘弁してあげてください」


 村長は村人達に連れられて行く。


 ホノカ達は黙ってそれを見つめる。


「珍しいね。君が何も言わないなんて」


「同じこと言ってた…」


「え?」


「グエル先生と同じこと言ってた…」


「そっか…」


 その頃一方イズモ達は…


「ちゃんとモンスター倒せたね」


 村人達から少し離れたところでイズモがエラを誉めていた。


「は、はい」


 ポーラもエラの成長に喜んでいる。


「お祝いしないとね!」


「そんな、いいです…漸く…漸く勇者としての義務を出来ただけなので…」


 エラは自身は勇者のスタートラインに立ったことを自覚していたため謙虚に祝いを断る。


「私…スケルトンをまた受けるだけになっていたんです…でも襲われている方々を見たら…」


 エラが少し言葉に詰まるとイズモが優しく聞く。


「見たら?」


「先生の言葉を思い出したんです…『お前がそうしなきゃいけないとき…

動けずに死ぬほど後悔するかはお前次第だぞ』そうしたら身体が勝手に動いていたんです…」


(「アイツ、そんな厳しいこと…でも…」)


 イズモはホノカの言葉に少し怒り覚えりが、エラにはそれが結果ではあるが良かったんだと思った。


「動けてよかったね」


「はい、これからも…しっかりと戦えるように頑張ります」


 こう口にしたエラだったが手は震えていた。


 イズモはその手を優しく握る。


「無理しなくていい」


「え…」


「怖かったよね?」


「はい…」


「初めてモンスターもんね?」


「はい…」


「私もモンスターと初めて戦うときは怖かった…それが普通なんだよ」


「でも……私は勇者です…」


「関係ないよ。勇者も人間なんだから」


「…」


「大丈夫…我慢しなくても良いことは我慢しないで吐き出していいんだよ」


コクン


 頷いたエラは涙を堪えていた。


「大丈夫、エラが危ないときは私達が守るから…」


 イズモはエラは抱き寄せる。ポーラもエラに抱きついて背中を摩る。


 エラは二人に抱きしめて大泣きする。


「うわあああああああああああ」

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