第8話:雷剣の勇者
(ガトー公国 街道)
ホノカ達はベルメール王国の町から離れて、ガトー公国にやって来ていた。
ガトー公国、四つの公爵家が治める公国。
四人の名誉士爵パティシエがお菓子の発展とパティシエの権利を守るために建国された国。
この国のお菓子を誰もが求めてやってくる。そのため交易が盛んで砂糖の輸出入ともに聖の大陸トップクラス。
ホノカはこの国のお菓子ではなくダンジョンに用があったが…
「はぁ…はぁ…」
エラには実戦の経験が全くなく、道すがらエラにスキルを獲得してもらうことにした。
「やー」
今は槍術の訓練中でトン三郎と訓練していた。
「は!」
「もっと勢いよく来てかまいませんよ」
「はい!」
エラの槍術をトン三郎が魔法で受け止めていた。
「君は従魔も特別なのか?」
ボロボロなイブロストがやってきた。
彼はホノカに敗北後、ホノカから一本取るために挑戦し続けていた。
「あれはオークの子供だろ?」
「あぁ」
「やはり…だがオークの子供で魔法を使えるなんて…」
イブロストは魔法を使いながらお茶を嗜む子豚を見る。
「しかも喋ってお茶を…」
ガキン
「しかし何で槍術を教えているんだ?」
イブロストの疑問にホノカは凄んでみせる。
「不服か?」
イブロストはそれに怯えて、急いで左手を横に振って否定する。
「そ、そうではない。ただ疑問に思っただけだ」
「勇者はあらゆる武器を使える職業なのに伸ばさないなんて勿体無いだろ」
勇者の全武器が適正武器で、多くの攻撃系スキルに補正がかかる。
だが…
(「補正値低いから本当は辞めさせたいけど…コイツらにとっては大事な職業だもんな…」)
ホノカは勇者を辞めせたがっていた。
つまらなそうにエラを見ているホノカにイブロストは更に質問をする。
「もう一ついいか?君は聖の大陸に来たことがあるのか?」
「いや、(今世は)生まれ始めて来た」
「そうか…君があまりにも地理に詳しくて気になってしまった」
ホノカはガトー公国のダンジョンに向かうと決まったら道に迷う事なくガトー公国に入ったためイブロストに疑問を抱かれていた。
(「昔観た光景のままだったから迷わずに来れただけだどな。
聖の大陸の殆どは『The Star Guardians』の領土になったから…
そう考えたらなんか懐かしいな…」)
『The Star Guardians』通称「TSG」はホノカ達『極星』のライバルチームで全員天使族かつ槍部門の上位陣で構成されたチームだ。
ホノカ達とは技、無の大陸の鉱山地帯を取り合っていて仲が悪かった。
バキン
「痛!」
トン三郎の叫び声が聞こえる。
「ごめんなさい!」
エラはどうやらトン三郎の魔法を槍で破ったようだ。
ホノカは少し驚いた顔をしている。
ホノカはそのままエラ達の元へ向かう。
「大丈夫か?」
「はい…」「ごめんなさい!私の所為で!トン三郎さんが」
トン三郎は片手で頭を摩り、エラはホノカに謝罪する。
「気にするな。お前が“槍術”を覚えた証拠だ。お前はこのまま頑張れ」
「は、はい…」
「トン三郎、ごめんな。コイツは思ったより強かったみたいだ」
「い、いいえ…私も油断していましたので…」
「生産モンスターなんだから気にすんな、怪我しないようにこれ」
ホノカはペンダントをトン三郎に装備する。
「これVITが上がるから防御魔法が破られても大丈夫だ」
「ありがとうございます!」
「訓練が終わったら返してもらうからな」
「は、はい」
「よし改めて準備できたな。次はハンマーだ」
ホノカは両手持ちの木槌をエラに渡す。
「え?また別のやるんですか?」
「あぁ、更に次は斧、また次は盾、体術だ。
武器が終わったら魔法。
魔法が終わったら錬金術だ」
ホノカは神官スキルで武器や魔法の適正を確認していて、エラの育成計画を立てていた。が…エラには今初めて説明した。
エラは自分の訓練内容に顔をひくつかせる。
「え、えー…」
ホノカはエラの不安と不満を無視して育成を続けさせる。
「ほら、今日中に武器を終わらせるぞ」
「え…は、はい…」
エラはホノカの恐ろしさを知っていたため諦めてホノカの指示に従う事しか出来なかった。
(カスダーケ王国 学園都市)
カスダーケ王国の学園都市。
街そのものが学園となっていて、ほんの一時期だけ聖の大陸中から生徒が集まった不名誉ある学園。
その女子寮と書かれている豪邸から当たり前のように男子が往来している。
そこに更に男性で編成された騎士隊が入っていく。
騎士隊は迷いなく一人の女性の部屋に向かう。
「あ…」「…ん」「あん…」
目的の部屋に向かう最中、他の部屋から女性の押し殺したような声が聞こえるが、騎士隊は気にも止めず歩き続ける。
目的の部屋に着くと騎士の一人が扉を叩く。
コンコン
「…」
しかし返事は返って来ない。
騎士はそれに憤慨して扉を強く叩く。
ガンガン
「フォトン・ブランシュ!此処にいるのはわかっている!
今すぐ出て来い!」
ガチャ
部屋から半裸でズボンのチャックすら閉めずにパンツが見える青年が出てきた。
騎士は青年フォトンの身なりに眉を細める。
「うるせぇな…」
「フォトン・ブランシュ。陛下が指令だ」
陛下と聞いて、騎士達を観たフォトンは漸く状況を呑み込んでシャツを羽織って僅かながらに身なりを整える。
「陛下から?一体何?」
「四日後ダンジョン『黒妖の洞窟』に潜れとのお達しだ」
「は?そんなの無理に決まってるだろ!剣も魔法も授業でしか使ったことないのに」
「安心しろ。冒険者を連れてっていいとのことだ」
「それならいいけど…いや冒険者って女の子?」
「それなら安心しろ、S級で女が一人ついてあとはお前がこのリストから自由に選んでいい」
騎士はフォトンに資料を手渡す。
するとフォトンは早速中身を確認する。
「うん、これなら問題ないや」
騎士は部下に指示をして、部下達は豪華な箱を運んできた。
「これを」
騎士はそれを開けて少年に見せた。
…
聖剣 エクレア(劣化:軽)
レア度 英雄級
攻撃力25,000(−1,000)
耐久力20,000 (−2,000)
重さ 20,000(−10)
効果:雷魔法威力1.5倍(0.25倍DOWN)
雷魔法効果時間+30分(5分DOWN)
ガトー王国エクレア公爵家限定
雷魔法『エクレール・オ・ショコラ』
…
「これは国宝の…」
少年が剣に見惚れていると少年の後ろにいつの間にか女生徒がいる。更に騎士達の周りにも女生徒が集まっている。
騎士は女生徒を気にせずに話を進める。
「授業でもそれを使え、その武器を四日後のダンジョンまで使い熟るようにしとおけ」
「はいはい」
「じゃ…僕はもう少し」
フォトンは女生徒と部屋に戻っていく。
そして騎士達も暫くこの女子寮にいた。
…
フォトン・ミユ・ブランシュ
所属 カスダーケ王国
レベル50
第一職業 勇者
第二職業 雷剣使い
称号『雷剣』の勇者
…
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