第4話:二匹の虎
申し訳ございません。
夏バテで休んでいました。
(聖の大陸、ディスハート王国)
ホノカ達は聖の大陸に無事到着した。
そして冒険者ギルドから後日指定された王国に来ていた。
「ここがディスハート王国か…」
港は活気に溢れ、倉庫では商いが行われ人の出入りが絶えていない。
人族のみ《・・》の豊かな国だ。
ホノカは船を船着場に着けると、検問のために騎士達が船を囲む。
「何者だ?」
「冒険者のホノカだ」
「目的は?」
「X級昇格の試験を受けにきた」
この一言で騎士達が騒ぎ出す。
ホノカが自作の船が速すぎて、まだこの領地までには連絡が届いていなかった。
騎士達は戸惑いながらも任務を全うしようとする。
「しょ、証明出来る物はあるか、ありますか…?」
「それなら」
ホノカは二枚の手紙を騎士達に渡す。
騎士達の上官がこれを受け取る。
「これは…!!間違い…お前今すぐ城に知らせろ!」
「はっ!」
「ホノカ殿、今部下が城に連絡して確認致しますので暫くお待ちを」
上官の男はX級冒険者候補のホノカに待ってもらえるよう誠心誠意な対応をしている。
それを見たホノカは改めてX級冒険者の信頼性を感じる。
「あぁ、わかった」
騎士達は物珍しそうな目でホノカを見ている。
先程連絡に向かった部下が戻ってくる。
「城とあ、あと冒険者ギルドからも連絡あり、両方とも間違いそうです!」
部下の言葉を聞いた上官は騎士達を整列させる。
「冒険者ホノカ殿、入国を許可致します」
ホノカ達一同は聖の大陸に上陸していく。
「やっと…地面だ…」
「船酔いですか?それなら冒険者ギルドに併設されてる診療所をご利用されては?薬を処方してくれると思いますよ?」
「ありがと」
騎士達はイズモの心配や…
「おっとっと」
「危ない」
船を降りようとしたリントが転びそうになったら助けたりとホノカの同行者に丁寧な対応する。
しかしヴァレットが姿を表した瞬間
騎士達の態度が変わる。
「止まれ!!!」
騎士達はヴァレットに怒号を浴びせ、武器を突きつける。
ホノカはヴァレットと騎士の間に入る。
「止めろ!急に何なんだ!」
しかし騎士達は武器を納めずに、ホノカ達全員に蔑視を向ける。
「我が国では人族と天使様以外の入国は出来ない」
「は?どういうことだ?」
「そう法で決まっている」
「いや何でそうなってんだ?」
「そう決まっている」
騎士達は決まりだとしか返答せず、正確かつ納得出来るような説明をしない。
更には騎士との騒動を聞きつけた民間人がヴァレットを主にホノカ達へ侮蔑の目線を向けてきた。
ホノカは何とか怒りを抑え、他の国で入国しようと考えた。
その瞬間…
「「「醜い獣が」」」
この一言がホノカの逆鱗に触れた。
バン
若い騎士が海に吹っ飛んでいった。
「クズが…」
ホノカは吹っ飛ばした騎士に吐き捨てる。
騎士達はヴァレットだけではなく、人族に近い姿のリント、そして先祖に獣人族をもつホノカやポーラを侮蔑したのだ。
騎士達は一瞬何が起こったかわからずにいたが、海に浮かぶ若い騎士を見て我に帰る。
「貴様何をしたのか判っているのか?!!」
上官はホノカに怒号を浴びせりが、今度は上官がホノカに首を鷲掴む。
「お前らこそ判っているのか?誰に何言ったのか?」
騎士達は仲間が捕まっているのに狼狽えることしか出来なかった。
「テメェらのふざけた価値観を俺がぶっ壊してやる」
ホノカは掴んだ騎士を他の騎士に投げて手放す。
「行くぞ、ヴァレット」
「はい」
ヴァレットはホノカに付き従う。
「“獣化:虎”」
「“獣化”」
ホノカも「獣化」使用すると虎のようなオーラを纏う。
これが獣人族以外が獣化をした時のエフェクトだ。
この世界では他種族が「獣化」は勿論「龍化」、「魔装」、「鬼化」の種族限定スキルを使用する事がほぼない。
その為ディスハートの騎士は勿論、イズモやリントは目を丸くして驚いている。
ホノカはこの世界で初めて「獣化」した他種族になる。
そしてそんな騎士の一人がまたホノカの逆鱗に触れるようとする。
「何と穢…」
ドコン
騎士はまたホノカの逆鱗に触れ、壁の向こう側へと消えていく。
次にホノカは獣人を侮辱した民間人の元へ行く。
「お前ら…民間人だからって俺が何もしないとでも思ってんのか?」
「「ひっ」」
(“威圧”)
「「「「ぎゃあああああああ」」」」
民間人達はホノカの「威圧」により、恐慌状態に陥った。
そしてヴァレットは騎士達に囲まれていた。
「本来、私はあのような戯言は気にしない…が、漸く心に平静を取り戻した我が主を不快にさせた罪…しっかりと償ってもらうぞ!」
「獣の風情が罪だと!?」
「X級候補に勝てたくてもお前如きを捕らえること雑作もない!」
「聖印「「「“catena《鎖》”」」」」
「…」
バチン
「何!?!」
ヴァレットは光の鎖なんて無いように普通に動き、それに耐えられなかった光の鎖は引きちぎれ粒子へ返っていく。
騎士達にとって信じられない事が起こり、皆口を開けてボヤき始める。
「天使様に与えられし我らの御業を…」
「はぁ…聖印にはそんな制約はない」
ヴァレットはボヤくように言うと彼らのように空に文字を書いていく。
「聖印“spima《棘》”」
ヴァレットも聖印を使い、騎士達を壁に貼り付けていく。
「馬鹿な穢れた獣人が天使様の力を…」
「蒙昧な愚者よ、貴様の愚かさには説法をする気すら削がれる」
ヴァレットは騎士達に告げて、増援を相手にする。
ホノカとヴァレットが大暴れにより、民間人が逃げていく。
しかしその民間人達の足が止まる。
ホノカ達を止める者が現る。
「そこまでだ!」
その者を見た騎士と民間人達は喜びの声で騒ぎ出す。
「フウールー様!」「侯爵閣下!」
「ディスハートのX級冒険者!」
その者はディスハートのX級冒険者だった。
…
フウールー・オローカ侯爵
所属 ディスハート王国 貴族/冒険者ギルド
Lv.600
種族 人族
第一職業 剣術師
第ニ職業 槍術師
称号「猛進」
…
フウールは胸当てに宝石を散りばめたミスリルの鎧を纏い、手に双剣を携え、高々に名乗りを上げようとする。
「私はディスハート王国の侯爵にして、最強のX…」
ドコン
フウールは名乗りを言い切る前にホノカが倉庫の方に吹っ飛んでしまった。
ホノカは吹き飛ばして見えなくなったフウールに呆れた表情をむけている。
「敵の前で呑気に名乗って馬鹿かコイツ…」
騎士達はそんなホノカを見て絶望していた。
「馬鹿な…我らの英雄が…」
「ワイバーンの大群を退けた救世主が…」
「あんな化け物どうやって止めたらいいんだ…」
騎士達は唯一希望を砕かれたが、何もフウールは一人でワイバーンの大群と戦ったわけでなく軍隊で戦い、少なくない犠牲を出してワイバーンから王国を護ったのだ。
しかもそのワイバーンの大群はワイバーンの卵を盗んだ科学者とその護衛の王国の騎士を追いかけただけだった。
全てを知っているギルド側がこれを都合の良いようにギルド本部に報告して、勝手にX級冒険者にしたにすぎにない。
それでも騎士やここ国民にとっては、フウールは救国の英雄なのだ。
しかし今一人だけ楽しそうに絶望した騎士達を眺めている者がいた。
「あんた楽しそうだね」
「まぁね」
リントだ。
「彼のやっていることは問題ばかりで感情に任せて暴れるなんて子供っぽくて危ないけど…正直スカッとする…」
「…」
そんな二人の元に騎士と民間人数人がやってくる。
「くそぉ、お前らも犯罪者だ」
騎士は既にボコボコにされているが、当たりどころが良かったのか元気そうだ。
「捕まりたくなかったらあの穢れた者達を止めろ!」
「そうだ!そうだ!」
騎士達は血走った瞳をリント達に向けていた。
リントはその様子をみて呆れてため息を漏らす。
「はぁ…」
そして…
ザクザク
「「ぐあ」」
リントはナイフを投げ民間人の肩に刺す。
更に刀と体術で騎士を組み伏せる。
「馬鹿が、あの化け物の同行者が雑魚だと思ったか?」
「ぐ、貴様こんなことしてどうなるかわかっているのか…?」
「ふっ、責任を取るのはあの化け物さ。
僕じゃない…あと…」
リントは騎士の口に刀をゆっくりと入れる。
「人の心配より自分達の心配した方がいい…あの化け物は家族と仲間の為なら国を消すよ」
チク
「ひっ」
騎士は恐怖のあまり気絶してしまった。
リントはそれを確認すると立ち上がり埃を払う。
リントを見てイズモは鼻で笑う。
「あんた、ホノカに似てきたね」
その言葉にポーラは嬉しそうな顔をして「良かったね」とリントを褒めるが、リントはスゴい嫌そうな顔をする。
「やめてくれ」
イズモはリントの返しに満足するとポーラと手を繋いで騒ぎの方を見つめる。
「あっちもそろそろ終わるかな」
ホノカとヴァレットは…
「ガッハッハ!あの程度で私がやられると思ったか!!」
フウールは装備の効果で態勢を立て直してきた。
更に…
バキバキ
何が建物を破壊していく。
騎士達はそれを見て喜びの声を上げる。
「あれは「三砲身魔導戦車」だ!」
ホノカ達の前に現れたのは戦車だった。
その見た目は雑に三台の戦車を乗せてくっつけたような不恰好な戦車だ。
それが指揮官機のように普通の戦車を先導している。
「我が国の最新鋭兵器だ!」
「これで我らの勝利は決まった!」
この戦車は決してディスハート王国が開発した兵器ではない。
その事を知っている人物がいる。
リントだ。
(「技の大陸の兵器を自分達で改造したんだな…
機動性も何もないな…」)
(「皆が一回はやりたくなるやつだなー、ロマンはあるけど…実用性がかなり悪いよなー」)
ホノカが思っている通り、この戦車は実用性が悪く、魔導砲を放つ為に戦車を止めた上に、魔法を放つエネルギーとは別に反動抑制用のエネルギーを消費し、浅い知識で接合された戦車は通常より重くなっただけ耐久性が低くくなった。火力特化のロマン兵器だ。
この戦車部隊を見て、フウールも騎士達同様に高揚している。
「これで我らの勝ちは決まったも同然!小僧!降伏をするなら今しかないぞ!」
豪語したフウールをホノカはつまらなそうな瞳を向ける。
「やっぱ馬鹿だよ、お前」
ヴァレットは呆れて、憐れみの眼を騎士達に向ける。
「力量を測れなんだか…」
呆れて二人はゆっくり歩み始める。
ホノカはフウールの元へ、ヴァレットは三砲身魔導戦車の元へそれぞれ歩く。
フウールと騎士達はこれが投降だと勘違いしてしまった。
そして…
「「“発勁”」」
バキバキ バコン
フウールは身体が軋む音が鳴り響き、痛みのあまり気絶した。
三砲身魔導戦車は戦車が風船のように破裂してしまった。
(「この国のX級はだいぶ弱かったな…」)
ホノカ達また一国の最高戦力を踏破してしまった。
そしてホノカはあるものを見つめる。
「そろそろ行くか」
「えぇ」
「いざ王宮へ」
ホノカはディスハート王国の王宮に乗り込む。
(数十分後)
「朕…私、私の部下、ディスハートの国民がホノカ様、ヴァレット様、獣人族に不快な思いさせてしまい、大変申し訳ございません」
ホノカは国王と会談していた。
ホノカが上座に座って…
「…」
ホノカが会談している会議室の中には簀巻きにされているフウールと重鎮のような人々が白目を向いて転がっている。
彼らは騎士達と同様にヴァレットに誹謗を投げかけた者だ。
そして国王も服が崩れている。
「以降我々は獣人族を一切差別しません」
ホノカは獣人族しか上げっていない事に眉を細める。
「あ?」
ホノカの恫喝に国王は身体を震わせ、大声で言い直す。
「いえ!他種族を差別致しません!」
ホノカは謝罪の前にディスハート王国や周辺国の情報を聞いた。
ディスハート王国は他国と中が良くない。理由は国民態度がデカい。
自国が自慢とかいう生易しいものではなく、自国民は以外は無能と思い込み原因だ。
その所為で他国民や他種族と大小様々な喧嘩が起きている。
ほんの一時期は留学生や観光客などが来ていたが国民が問題を起こし、行商人しか来なくなった。
しかもそんな自国民は自国と王侯貴族にも牙を剥く。
それを解決するために行ったが他種族の差別だった。
これはこの国民の性のおかげですぐに浸透していき、王侯貴族への反感は急激に減っていった。
「後はここにサインを」
ヴァレットが契約書を国王の前に出す。
国王は怯えながらもサインを人生の中で一番丁寧に書いた。
「気になった事が一つある」
「何でしょうか…?」
「何で聖天神じゃなくて天使を崇めているんだ?」
「そ…それは…」
「言えない内容なのか?」
「い、いや…そのわからないのです…いつの間にか聖の大陸の多くが信仰していました…」
「そうか」
ホノカは国王の答えに満足はしていなかったが、これ以上の回答は求めれないと諦めた。
そのまま国王がサインした契約書を持ってホノカ達はディスハートを後にした。
ディスハート王国の損害は貿易港の全壊、
貿易港の守護した騎士の重軽傷者大多数により全滅、
大金をかけた戦車部隊が活躍せず全滅、
自国でX級冒険者に祭り上げた貴族の敗北、
近衛騎士とその騎士長の敗北、
ホノカ達への慰謝料の聖金貨100枚、
外交問題を起こした国への謝罪文の送付、
更に今まで返済義務を無視していた他国から借金の即時返済となった。
ディスハート王国の国庫は一夜にしてその三分の二が無くなることが決まった。
「父上…貴方のやった改革は我が国に大魔王を呼びました…
もう貴方の祝日を祝うことは出来ません…」
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