第2話:大陸存亡の危機
(聖の大陸 メルトピア王国)
「メルトピア王国」聖の大陸で名のある大国。
戦争の経験は一切ないかなり珍しい国だが、軍事力は高く、冒険者ギルドに頼らずにモンスター討伐やダンジョン攻略を自国で行っている。
隣国、同盟国からの信頼が厚く、国同士の仲裁なども任されている。
そんなメルトピアの王宮では、会議室で国王が臣下達とある議題で険しい顔をしていた。
「これで20件目だ…」
「アンデッドの軍勢が聖の大陸中の村々を襲い、村人は殺されずに被害は家畜や食物が全て盗まれ、村が立ち行かなくなっております」
「アンデッドの軍勢が人を殺していない…しかも家畜を盗む?一体どうなっているんだ?」
「どうやらアンデッドの軍勢を指揮しているのが下級、中級の悪魔のようで…」
「何?…それでは「伝説の厄災」と同じではないか…」
「はい…「伝説の厄災」が復活したとなると…国の力ではどうしようもできません…」
「陛下、やはり彼に任せた方がいいのでは…?」
「そうだな…幼いが彼の力と正義の心なら、きっと…」
「では…」
「あぁ「海槍の勇者」を呼ぶのだ!」
「はっ!」
(同じく聖の大陸 カスダーケ王国)
「カスダーケ王国」聖の大陸で最も人口が多い国。隣国とは仲が悪く鎖国気味で人族だけの王国で出生率が高く、技術的には発展していないが人口の多さから国民は裕福に暮らしている。
しかし、この国の家族は顔が似ていない…
そんな国の国王は現在、王城のベッドルームにいた。
ベッドルームには国王と宰相、数人の女性がいた。
国王は二人の豊満な女性の乳房を揉みしだいている。更にもう一人の女性が国王の頭に胸を載せながら、国王の肩を揉む。
一方宰相はスリムな女性の尻を撫でいる。
そんな宰相は国王に声をかける。
「国王」
国王は呼びかけられるが、国王は胸を揉むのを止めない。
「何だ、宰相」
「また他国の村がアンデッドに襲われたようですよ?」
国王は一時的に女性の胸から手を放す。
「何?被害は?」
「人の被害はないようですが、家畜が殆どのようです」
「ふー…それはよかった」
安心した国王はまた女性の胸を揉み始める。
「しかしこのままでは不味いな」
「えぇ、私もそのように思います」
「ならば我が国の「雷滅の勇者」を動かさなければならぬかもしれん」
「そのパーティも必要ですね」
「あぁまだ学徒だった筈だ…レベルを上げてから、アンデッドの…いや暫くは他の問題を解決させて我が国民を安心させるか」
揉まれている女性が話している国王の顔を自分に向ける。
「ねぇまだ?」
「この国の全ての女性のために…」
国王が女性とキスをする。
「ではそのように…」
宰相も同じく女性にキスをする。
こうしてカスダーケ王国の明かりは歓楽街を残して消えていく…
(同じく聖の大陸 ルナティア王国)
「ルナティア王国」聖の大陸で二番目に歴史がある小国。国土は王都しか存在せず、その王都は大きな壁に囲われ防衛戦無敗の歴史を持つ。
国民は国外に出たら最後、二度と入国は出来ずない。
他にも商人の出入りはほぼ自由だが、商業区間に隔離され鎖国を徹底的にしている。
そんなルナティアでは要塞のような王城に国王と家臣が集まっていた。
「既にメルトピア、カスダーケが勇者を選出しました。恐らくナーニャも選出するでしょう…」
国王は三つの資料と報告書を見ながら家臣の報告を聞いていた。
「そうか…」
「アンデッドはすぐの隣国まで攻めてきています。鎖国国家といえどこの件を無視するば他の国々は我々をよく思わないでしょう」
「勇者は入れん。だがメルトピア…ナーニャは勇者次第で援助金を贈る」
「ですが我が国も勇者は…」
国王は臣下を睨んで黙らせる。
「ならん」
「しかし陛下、我が国は食糧自給率が2割しかありません。支援金を贈るより我が国からも勇者は選出したほうがいいです!」
「私も同感です。支援金を贈ることになりますと…。増税は避けられません。これ以上税を増やせば民の不安が増え、人口が減ってしまいます。その国民は危険な状態も知らずに野に放たれることになります。
もうこの状態では勇者を我が国からも出さなければなりません…」
臣下の必死の説得が続くが、今日、国王が口を開くことも首を縦に振ることはなかった…
「…」
(同じく聖の大陸 ナーニャ王国)
「ナーニャ王国」。聖の大陸で一番税が軽い王国。二つの公国を吸収してその国土は現在三番目に広い。
そして、最も人族以外の国民が多い国。
そんなナーニャの地味な王宮では国王は妃と一緒の部屋でお昼寝をしていた。
その部屋の前には騎士姿のゴリラの獣人がいた。
ガン
「陛下!お時間をいただきたい」
騎士の声に国王は嫌そうに起き、妃はベッドに潜って隠れる。
「ファー、何だ…?」
国王はゆっくり起き上がり、可愛らしいスリッパを履きパジャマ姿で騎士に対応する。
「どしたの?」
「国王陛下、ご報告させていただきます!
アンデッドの大群が再び隣国の村を襲いました。被害は家畜に留まりましたが、村で生活は困難になっているようです!」
ゴリラの獣人はハキハキと報告をしたら、国王は一度寝室が出る。
「報告ありがとね」
「はっ、陛下、此度の件どのように対応致しますか?」
「まだ何もしなくてもいいんじゃないか?」
「よろしいので?他の内容はまるで「伝説の厄災」…聖の大陸存亡の危機では?」
「うん。そもそも本当に「伝説の厄災」かわからないのに動いて、周辺国に背中を見せるなんて馬鹿な真似したくないからね」
「かしこまりました」
「同盟国に要請されたら動くよ…
まぁいざとなったら僕の優秀な愚息くんに行かせればいいしね」
「そうですね。我が国の勇者…「冥弓の勇者」に」
「うん、それじゃおやすみ」
「お昼寝中にお邪魔してしまい失礼しました」
「はいはーい」
(聖の大陸、冒険者ギルド、マクアンス王国支部)
冒険者ギルドの幹部達が集まっていた。
幹部達は太っていたり、宝石をつけてまるで貴族のようだ。
しかもテーブルにはお菓子や注がれたワイングラスがある。
「我が国の被害はこれで3件目、全国では20件目。どうしますかな?」
「メルトピア王国各国は勇者を選出する用意をしているようですよ」
「我が国はX級冒険者を選出しますか?」
「それは悪手では?こんなことでX級冒険者が失われては我が国の信頼が落ちてしまいます。出すなら他の国に出させればいい」
「だが我らと同じようしぶるだろう」
「そういえばX級冒険者候補の冒険者「黒刀」がいたはずだ。どうです?
彼にX級昇格試験として出してわ?」
「いや流石に本部はそれを許さないだろう?X級いるのに何故いかせないと」
聖の大陸のX級冒険者の数は、全大陸最多だが、その多くはX級冒険者の実力がない。弱いわけではないが、X級冒険者のブランド欲しさに各国が仕立てあげられた存在だ。
聖の大陸ではこれが横行している。
X級冒険者は7割が海の大陸で試験を受けているが、3割は国家滅亡くらいの危機を解決した強者が認められている。
彼らはこれを利用していた。
「確かに」
「だが国から冒険者ギルドに要請が来ています」
「その通り体裁は保たねば、ねぇ?」
解決案が止まると幹部達は考え込みながら、菓子屋やワインを口にし始める。
「「「「んー」」」」
一人の幹部が不敵な笑みを浮かべた。
「いい考えを思いつきました」
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