第31話:火葬
「炎魔法 サンシャインフレア」
ゴオオオ
「があああ」
ヴリコラカスは最後の抵抗にユーガを爪で攻撃する。
「“奥義・徹甲斬”!!!」
ズパン
「グアアアアア…ア…アー……」
ヴリコラカスはユーガの剣技により真っ二つになり、断末魔を上げるとそのまま事切れる。
ユーガは燃えるヴリコラカスを見つめる。
「はぁ、はぁ…」
ユーガはEPが切れて息切れをする。
「倒せた…」
ユーガは自身が想像より弱かったため、少し肩透かしした気分になっていた。
「ユーガ!!!」
ホノカが到着する。
ホノカの声でユーガは後ろを振り向く。
「あ、あ、ごめんなさい…約束破って…」
ユーガが謝ろうとすると何も言わずにホノカがユーガを抱きしめる。
ホノカはハグをやめるとユーガの身体を隅々まで見る。
「それはもういい!何処か怪我してないか?」
されるがままのユーガはホノカの言動に感極まってしまう。
「うん…」グス
ユーガは涙を流しながら返事をした。
「そうか…よかった…」
ホノカはユーガが軽傷も軽傷だったので安心した。
安心したホノカは使徒の事を思い出す。
「そうだ!使徒は何処いるんだ?」
「アソコに」
ホノカはユーガが指した焼死体に近づくと眉を遅める。
「これは…使徒は死んでいない…」
「え…」
ユーガはホノカの言葉が信じらずに焼死体に近づいて確かめる。
そんなユーガを見て、ホノカが焼死体の説明をする。
「これはデコイ…身代わりを出す死霊魔法だ」
「そんな、いつの間に…」
「もしかしたら戦う前からデコイだったかもな…使徒の実室とかないか?」
「あるけど此処じゃなくて、アイツの領があって、そこの屋敷が研究所に…」
ドウン
話の途中で機会音が鳴り響き城を揺らす。
「何だ!」
ホノカは地響きを起こすほどの轟音に驚く。
「ユーガは此処には何の施設があるんだ!?」
「魔導具の開発施設!此処で何回か魔導具のテストをしたから間違いないよ!」
「じゃあここで重要な場所はわかるか?立ち位置禁止の場所とか!」
ホノカは探知系のスキルや法術が此処では使用できないためユーガに聞く。
ドウン
再び機械音が城を揺らす。
「何個か!」
「行くぞ!」
「うん!」
(「この轟音…自爆か?、いや…いままで会ってきた使徒はグエル先生を除いて、超自身家のうえクズ野郎ばかりだった…
俺やユーガに負けたまま引き下がるとは思えない…
ユーガとデコイを戦わせたのは装備を準備するためだと思ったが…」)
ホノカは謎の轟音とヴリコラカスの狙いを推測するが、結論を出すことは出来なかった。
そしてユーガの案内と機械音を辿りにホノカ達は厳重な扉の前に辿りつく。
ドウン
(「扉が開いてるな…」)
扉は人がギリギリ通れる程度開いていて、中から音ともに衝撃が伝わってくる。
「…」
ホノカは指で静かにするようにユーガに指示をする。
ユーガは首で頷きホノカの後についていく。
「やぁ…いらっしゃい…下等な怪物諸君」
中にいたヴリコラカスは金色の鎧に身に纏っていた。
魔金の鎧 ウプイリ・ゾラータ
レア度 神級
アンデッド系モンスター専用装備
耐性性20,000,000
効果:『聖属性耐性Lv.MAX』『時間耐性Lv.MAX』
総STR+1,000,000
総DEF+30,000,000
錬血の槍 ジル・ド・レイ
レア度 龍級
攻撃力300
耐久力1,000,000
重さ750,000
効果:『錬金術Lv.MAX』
『闇魔法 セクス・ブラッドアロー』×6
『闇魔法 ツイン・ブラッドブレス』×2
攻撃時、敵のHPとDEXのどちらかをランダム(1〜10,000)で吸収する。
他にも11個の指輪などのアイテムを所持している。
ヴリコラカスは自慢の装備に見惚れながら、その装備を見せびらかす様に話始めた。
「インフェルノは既知だと思うが…そこのお前はちゃんと見てきたかい?この国に設備された数々の魔導具を」
「?」
ホノカは話の意図が分からず眉を細める。
ヴリコラカスはホノカやユーガの顔を一切気にすることなく話を続ける。
「水道、暖房、街灯に、兵器まで、この国の魔導具は全て私が設計していてね…いや正直なとこと何個かは盗作を改良したんだがね」
(「こいつ…時間稼ぎしてんな…何だ?何を待っている?
着飾ってるってことは戦うつもりだよな…」)
ホノカは攻撃には転じず、ヴリコラカスの話の意図を探す。
「これらの魔導具はね、一切魔力を消費しないんだ」
「…」
ホノカは魔導具の性能とは別にヴリコラカスの狙いを探るのに集中していた。
「疑っているね…ふふ」
ヴリコラカスはそんなホノカの顔を魔導具の性能を疑っていると捉えた。
「お前もその動力を知ったらそんな顔できなくなりますよ…
さぁ紹介しよう!その動力こそ我らが最高神に傀儡にされた愚かな氷の神、氷神なのだよ!!!」
「!」
ドウン
「ここに設置した氷神からエネルギーを吸い出し街へと送り、魔導具のエネルギーとして消費されていく…」
ドウン
轟音のペースが速くなっていく。
「滑稽だろ?!何も知らず!疑問にすら思わず!自分たちの祖先を苦しめ、そのエネルギーを湯水の如く消費する愚か者達は!」
ミシミシミシ
「そして今!魔導具に送っていたエネルギーの全てを氷神に戻している!」
バキバキ
「今まで奪われるだけだったエネルギーが氷神に戻ることよりに、氷神を永き眠りから呼び覚ます!!!
さぁ、ご覧あれ!巨大な愚鈍の塊、氷神を!」
「ぐおおおおおおおおおおおお」
氷神が永き眠りから、目を覚ます。
氷神の身体は徐々に大きくなっていき、更に左半身が肥大化して水色に変色していく。
元から普通の巨人より高い身長は40mへと巨大化していく。
「ぐおおおおおおおおおお」
氷神は自身に繋がれた管を引きちぎり、城から外へと出ていく。
「ふふふ、どうしますか?私と戦いますか?それともアレを止めますか?」
(「無駄に長い話は、これが狙いか!」)
「“換装”」
ホノカはどこか見覚えのある剣を取り出す。
受け継がれし虎の剣
レア度 神級
トライーガ家の血脈のみ装備可能
攻撃力100,000
耐久力30,000,000
重さ 10,000
効果:『炎神法術 火之迦具土・炎葬』
炎属性付与で属性値を10倍。
この剣はクーガの剣をホノカが改造した業物だ。
ホノカはユーガの生存を確認すると急遽造り直したのだ。
「ユーガこれを…」
ホノカはユーガに剣を渡す。
「これは父様の…」
ユーガはこれが父の剣だと一瞬で気づいた。
コクン
「俺たちがついてる」
ホノカは剣を持ったユーガの手を強く温かく握る。
そしてホノカは剣の使い方を教える。
「その剣は特別な魔法が放てるんだ。
使うときは火之迦具土・炎葬って唱えるんだ」
「ひのかぐつち、えんそう?」
「そうだ」
「わかった」
「じゃあユーガここは頼んだぞ?」
「任せて、兄様」
二人は見つめ頷くと、ホノカはユーガを信頼して氷神の元へと向かう。
去っていくホノカの後ろ姿をヴリコラカスは満足そうな表情で見ていた。
「ざ…」
「“剣爪(炎)”」
何かを話そうとしたヴリコラカスにユーガは斬りかかる。
「ちっ、水銀魔法 マーキュリーコート」
ヴリコラカスは指輪から水銀の布を生成してユーガの剣技を受け止める。
しかし水銀はユーガの炎で高熱を帯び、ヴリコラカスは高熱に耐えれず魔法を解除して、距離を取るために自傷覚悟で魔法を放つ。
「雷魔法 ライジングエクスプロージョン」
指輪から雷による爆発が放たれ、ユーガと放ったヴリコラカスを襲う。
「ぐふ…」
ユーガは直撃するも耐性のおかげで傷はそこまでのものではなかった。
ヴリコラカスも指輪の魔法で爆発を凌いでいた。
「やはり爆発は効きが薄いか…
しょうがない…本当は貴様の兄に使いたかったが、これを使わせてもらおう」
ヴリコラカスは注射器を取り出す。
ユーガはその注射器が何のか知らないため眉を細める。
「これはな、進化薬だよ…」
ヴリコラカスは珍しく自身が無さそうにその進化薬を紹介する。
「まだ完成していないから本当は使いたくもないが、今はそんな事言ってられないからな」
ヴリコラカスは注射器を自身の首に刺す。
ミシミシ
ヴリコラカスの身体は3mほどの巨体に変化した。
「くそ、くそ…何故進化しない!!!」
ヴリコラカスの進化薬は失敗作だった。
「よくもこんな薬を打たせたな!」
(氷魔法 アイシクルバルカン)
ヴリコラカスは自身の薬の失敗をユーガ達の所為にして、別の指輪から無数の氷の弾を放つ。
「炎魔法 ファイヤスフィア」
「ん?実験の時より火力が上がっている?」
「“砲剣(炎)”!」
ユーガは結界越しから剣技を放つ。
(土魔法 トリプル・サンドウォール)
ヴリコラカスは指輪の魔法で砂の壁を作り出し、ユーガの剣技を二枚の壁で防ぐ。
ユーガは諦めずに追撃する。
「炎魔法 ファイヤーブレス」
「馬鹿め、闇魔法 ツイン・ブラッドブレス」
ヴリコラカスはユーガの魔法を掻き消す。
「こっちだ」
(闇魔法 ブラッドアームズ)
バコン
ヴリコラカスは一瞬でユーガの後ろに周りこみ、巨大な赤黒い拳でユーガを吹き飛ばす。
「くっ」
ユーガは剣を地面に刺して、吹き飛ばれた勢いを殺して急いで態勢を立て直す。
そんなユーガを見て、ヴリコラカスは楽しそうに笑う。
「ふっふっふ、死ぬ前にお前にもこの素晴らしき装備を紹介してやろう!」
ヴリコラカスは勝ちを確信して、アイテム自慢とユーガを絶望させるためにアイテムの効果を話そうとする。
「?、はぁ…はぁ…」
ニヤ
ヴリコラカスは疲労してユーガに気色の悪い満面の笑みを向け、アイテムを紹介し始める。
「本来闇魔法のブラッド系統はHPしか吸収できない…だがしかし!この高等魔吸の指輪はHPを吸収する魔法にMPを吸収する効果を加える!
それだけではない!更にこの魔法吸血の指輪は魔法から魔力を…」
ヴリコラカスの自慢話はユーガには聞こえていなかった。
その理由はヴリコラカスの話が嫌なだけではない。
(「やはりあの炎を使わないとダメなの?でも…暴走したら…どうしたらいいの?」)
ユーガは自身の三色の炎を使うのを躊躇っていた。
「兄様…」
ユーガは不安になり、ホノカから託された父の剣を見る。
剣身に映る自身を見る。
そこには兄と父に似た自分が映る…
ユーガは自身に兄と父の面影を重なって見えた。
「そうだ…」
ユーガは剣を構え直す。
「兄様は僕を信じて、ここを任せてくれたんだ!
僕は、兄様が信じる僕になる!
兄様、父様、そして母様とポーラ!僕に勇気と力を!!!」
ユーガは降三世の炎を使おうとすると…
『降三世の炎は降三世明王に進化しています』
頭にアナウンスの様に言葉が聞こえた。
ユーガは聞こえた言葉を口にする。
「“降三世明王”?」
ユーガの全身に金色の紋章が浮かび上がり、三色の炎を身体から放出する。
「!?、付与魔法 インビジブルアーマー、闇魔法 ダークネスアーマー」
ヴリコラカスは身の危険を感じて、自慢話を止めて、急いでバフの魔法をかける。
(「とうとうだしたか…使えなくなったかと思ったが…だが様子がおかしい…今までより力が…というより神々しさを…」)
ヴリコラカスは自身の考えたことを必死に否定するために首を横に振る。
(「だが出せる炎は変わっていない!アイツの炎は三種類…赤は問題ない、だが緑と紫は不味い…
緑はグリーンワイバーンの炎…
ある温度に達すると大爆発する鉱石粉を含んでいる…
紫は紫炎の魔眼の炎…炎と毒の二種属性の炎、よりによって私が耐性を持ち合わせていない二つの属性…
まずは距離をとるか」)
「闇魔法 セクス・ブラッドアロー」
ヴリコラカスは魔法を放ちながら距離をとる。
しかし放った魔法をユーガの炎に掻き消され、MPすら回収できない。
「何?、風魔法 フライ」
ヴリコラカスはユーガの攻撃が届かない空中に待避する。
(「MPを吸収できない?
どういう事だ?赤の炎が進化したのか?
どうする?氷魔法は論外、闇も効きが薄い、ここは土と雷を併用…だが少し火力不足か?」)
ヴリコラカスはユーガの能力を頭の中で復唱して、作戦を考えようとする。
一方ユーガはヴリコラカスの隙をじっと待っていた。
(「ちっ、本当だったら我が最高神様より賜りし、炎の神剣で炎への完全耐性がつくもの…だが今度はこちらの炎属性攻撃ではこいつには効きが薄い…グエルの奴め…よくもこんなものを創ってくれたな…」)
ヴリコラカスの得意とする武器は槍ではなく剣であり、教団から支給されている神剣は対氷神ように渡された物だった。
炎にほぼ完璧な耐性を有するユーガには悪手だと考えて、もう一つのこの槍を持って来ていた。
「一度装備を変えるか…」
ヴリコラカスはユーガが目を逸らす。
ユーガはその隙を見逃さない。
ユーガは自身の足へと赤と緑を噴出させ、二色の炎は混ざり…
ドカン
爆発を起こす。
ユーガはその勢いで空中にいるヴリコラカスへと突進する。
「な!?爆発で浮かび上がってきた!」
ヴリコラカスはすぐに浮遊している位置を変えて、ユーガの攻撃を回避しとうとする。
「無駄だ!」
ユーガは炎の噴出させ方向を調整する。
「更にもう一発!」
ドン
ユーガは炎を再び爆発させ突進の速度を上げる。
「空間魔法 ディメンションシールド」
ユーガの三色の炎はヴリコラカスの魔法を次々に燃やし尽くしていく。
そのままユーガの剣はヴリコラカスの心臓へと向かう。
ヴリコラカスは諦めずに防御魔法を発動し続ける。
「土魔法 トリプルサンドウォール
泥魔法 マッドプロテクト
空間魔法 ディメンションシールド
闇魔法 クワド・ダークネスウォール」
しかしユーガの炎が全てを焼却していく。
グサ
ユーガの剣がヴリコラカスの鎧を溶かし心臓に突き刺さる。
「ぐうう、離れろ!!!」
ヴリコラカスはユーガを引き離そうとユーガの顔と剣を掴んで押し返しそうとするが…
ヴリコラカスの手は灰になって崩れる。
「嫌だ!死にたくない!私は進化して神になるんだ!」
ヴリコラカスは必死に逃げようとする。
ユーガはそんなヴリコラカスに憤怒の顔を向けて、炎神法術を放つ。
「くらえ!!!!」
(火之迦具土・炎葬)
ヴリコラカスは三色の炎球に包まれる。
炎が消えると微かに灰が舞う…
ヴリコラカスは残骸すら残してもらえなかった。
「やっ…た…?」
バタン
ユーガは疲労で倒れてしまう。
こうしてユーガVSヴリコラカスの勝負はユーガの勝利で幕を閉じた。
来月からは日曜日の0時に投稿致します。
次回の投稿は3月10日(日)0時に投稿します。




