第7話:ヨトゥンへ出発
旅に必要な荷が揃いホノカ達は等々この港町から旅立つことになった。
入国した初日にあった議会の関係者やケイガ達『猛虎』もホノカ達の見送りと手伝いに来ていた。
ホノカとケイガ達は白熊が引く馬車ならぬ熊車に準備してもらった荷物を積めていた。
熊車は白熊が引くとあって馬車の約2倍ほど大きさで設計されていた。
そんな大きい熊車にいそいそとホノカ達が荷物を積めているころリントは…
親戚の船長に黙って置いて行かれてためブツブツと愚痴を言い続けているだけになっていた。
ポーラはそんなリントを見てホノカに質問する。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんのお友達病気みたいだよ?」
「…いやあいつは気にしなくていい」
ホノカは少し考えた結果、ポーラとリントをあまり関わらせたくないので適当な事を言う。
「?、んー、わかった!」
ポーラはリントが可哀想だと思ったが兄の言うことが正しいと判断した。
それを見ていたケイガが荷物を置きホノカに話かける。
「あのお坊ちゃん連れてって大丈夫なのか?」
「連れて行きたくはないけど大丈夫ではあるかな…」
「はは…お前が大丈夫ならいいけど、ああいう奴は気をつけておけよ」
「え?」
「兄貴のダチにもああいう奴がいたんだ…問題事を何故か察知してその場から消えたり、おいしいことを嗅ぎつけて周りを扇動したりする。妙に頭のキレる奴が…」
「?、でもあのアホとはだいぶ違うと思うけど…」
叔父の言っている人物像とリントの人物像が違くホノカは混乱した。
「雰囲気だよ雰囲気!」
「は、はぁ…」
ホノカは叔父のこじつけに少し引いてしまう。
「まぁ、気をつけろよ」
ケイガは甥への忠告で満足して再び荷を積み始めた。
(「叔父さんもああいう事言うんだな…」)
ホノカは叔父が人を見た目や雰囲気とかで人を判断するタイプではいと思っていたので意外な一面に少し戸惑う。
こうしていくうちに巨人が用意してくれた荷は全て積め終わった。
積められた荷は熊車の屋根がはみ出しいる。
ガイムンが荷を積み終わったホノカを労いの言葉と軽食を持って来てくれた。
「ご苦労様、件の少女の話を聞いて急いで食糧を追加したのだが…余計なお世話だったか?」
ガイムンはポーラのレストランでの話を聞いて食糧を追加してくれていた。
更にガイムンはしゃがんでポーラに軽食を渡す。ポーラはガイムンに可愛いらしく感謝する。
「いや、丁度良いくらいかな」
(絶対足りないと思うけど…)
ホノカは心の中で苦笑する。
「そうか、それなら良かった…
打ち合わせに入る前に君に忠告したい事がある」
「…なんだ?」
「事を起こすなら帝都以外で事を起こしてくれ」
「え?事を起こすなじゃくて?」
ガイムンは頭を抱えながら悲しそうに話を続けた。
「あぁレストランでの一件を聞いたからね…、君が家族を侮辱されたりしたら止まれないと思ったのと…ヨトゥンでは他種族の肩身はかなり狭い…いや、
迫害は我々も手を出したくなるからね」
「…そんなに酷いのか?」
「あぁ君が想像する以上にね…だから暴れて構わない、でも帝都以外でやるんだ…いいね?」
「やけに帝都を強調するな」
「あぁ…我々もヨトゥンの蛮行を見かねて何度か戦ったんだが…帝都を破ることが出来ずに体力、魔力、物資枯渇し撤退を余儀無くされるんだ」
「それは結界か何か貼ってあるのか?」
「それは勿論、ヨトゥンの武器だ。ヨトゥンの武器は今までの魔導銃や魔導具より、かなりエネルギー量が多く長期間戦線で戦えるんだ」
「なるほど…」
ホノカは魔導銃自体がゲームのとき廃れたアイテムなので正直脅威には思わなかったガイムンの真剣な表情に納得したフリをする。
「武器を製造しているもは帝都だ。
だから帝都は危険だ。暴れるならそれ以外で頼むよ」
そんなホノカに気づいたのかガイムンはホノカに念をおす。
「あぁ、わかった…」
「では打ち合わに入るよ?」
ホノカとガイムンの話が終わると関係者が集まり打ち合わせに入る。
「まず君達を案内してくる方を紹介しよう」
ガイムンの言葉に雪豹の獣人がホノカ達の目の前に現れる。
「!?」
ケイガは彼の獣人を知っているからか目を丸くして驚く。
「彼女は牙の民でA級冒険者でもあるセルム・スノルドだ」
「はじめまして、今回は案内を任せていただきます。セルムですよろしくお願いします」
セルムは単的に挨拶を済ませる。
「続いて君たちの護衛にX級冒険者カイジン殿。」
「「!」」
カイジンは話す事なく手を振るだけで挨拶を済ませる。
「彼女はわざわざ君達の護衛に名乗り出てくれたんだ」
(「その所為で他の希望者が棄権したんたが…」)
ガイムンはヨトゥンの戦力を知っているため、カイジンだけでは少し心配だった。
「旅路は一度牙の民の集落を経由…
その後、首都は通らず雷の民の集落を経由…出来ない場合遠回りしエリド公国を経由してヨトゥンへ向かってもらう。」
「質問していいか?」
「構わないよ」
「雷の民の集落を経由出来ない場合って…雷の民とは話がついていないのか?」
「…話が出来ないと言った方がいいかな…」
「そんなに危ない奴らなのか?」
「いやそういう訳ではないが…まぁ、彼らはどちらと言えば閉鎖的ではある…でも話通じない訳ではないんだ…ただ…」
「ただ?」
「問題は彼らの住む『雷の丘』は標高が高いうえに氷の大陸の唯一雷雨が広範囲で数週間にかけて降り続け、止んでいるのもたった二日と中々の危険地帯なんだ…この話が決まった時に使者を向かわせたのだが雷が止まずこの日が来てしまったのだ…」
「氷の大陸にはそんな場所があるのか?」
ホノカは自身には無い知識に驚いてしまう。
「あぁ…それ故に雷の丘はヨトゥンの目の前にあるのに侵略されていない土地なんだ。」
「そうか…ちなみにそれは自然現象なのか?それともその雷の民がやっているのか?」
「…いや、それはわからない」
ガイムンはホノカの問いに対してほんの一瞬だけ迷った。
「…そうかわかった…」
ホノカはスキルを使用していた為、
ガイムンが嘘をついたのに気づいたが敢えて解いた出さなかった。
「質問はもういいかな?」
「あぁ…」
「じゃあ、私は他の仕事があるので見送りはせずに失礼するよ…」
ガイムンは逃げるようにその場を去っていく。
ホノカはその後ろ姿を暫くみて、彼が去るのを確認する。
「叔父さん」
「どうした?」
「牙の民とか雷の民とかって何ですか?」
ホノカは『牙の民』や『雷の民』がゲームには無い知識だったのでケイガに質問する。
ケイガはガイムンの様子に対して聞かれると思っていたので安心する。
「あぁ、氷の大陸にはな神や英雄の子孫が部族をつくり、その一族が更に武勲を残していった超有名一族なんだよ」
ホノカはその話を興味を持ち目を輝かせる。
「じゃあ『牙の民』はどんな英雄の一族なんですか?」
「んーたしか…」
「我らの先祖は神々の戦争でこの氷の大陸で雷神さま共に悪しき神とその眷属達と戦ったんです」
セルムはケイガの代わりにホノカに自身のご先祖の話を語った。
「「どうも」」
ホノカとケイガは教えてくれたセルム会釈をする。
ペコ
セルムは会釈をして先程いた場所にすぐ戻っていく。
ケイガはセルムの後ろ姿を不安な顔で見る。
「なんだったんだ?」
「優しいだけじゃないですか?」
ケイガはセルムの行動を不思議に思ったが、ホノカは特に何も思わなかった。
「んー俺の知ってるアイツらは鬼人並みの戦闘狂でそれなのに騎士道に近い考えを持っていて、戦いおいて兎に角五月蝿いし、こういう道案内とか採取みたいな仕事はやろうとしない戦闘馬鹿民族…だと思っただけどな」
牙の民にしたら散々な言われようだが、彼らはそういう一族なのには間違いはない。
ケイガは自分やホノカが目をつけたられのかと思ったのだ。
「皆んなが戦闘好きとは限らないから」
ホノカは苦笑いしながらケイガを落ち着かせる。
「お前は他の牙の民や鬼人族に会ってないからそう思うんだよ…
一回鬼人族に会ったことあるが…アイツらに戦い挑まれたら最後、戦うまで地の果てまで追ってくるんだ…思い出した寒気が…」
実体験のあるケイガにとっては逆効果だった。
「はは…」(そこはゲームと全く一緒なんだな…)
ホノカ達の少しの談笑が終わるとセルムとカイジンが御者台に乗り、ホノカやポーラ、ポーラを温める要員のタヌ太郎、コン次郎、ウル四郎、おまけのリントが乗る。
これだけの大人数だが中にはかなり余裕がある。
ケイガとカイジンは別れの挨拶を済ませる。
「じゃあ」
「甥っ子を頼むぞ」
「任せなって故郷では貴族の護衛をこなしてきたんだから、あとはその甥っ子君もいるし」
「そっち心配はしてねぇよ…
俺が頼みたいのはホノカが怒りに支配されそうになったら止めてやってくれ…アイツ家族を騙したり利用しようとした奴に尋常じゃない怒りを表すんだ…
ヨトゥンでそれは足を掬われるし…
何より甥っ子のあんな顔して欲しくないんだ…」
ケイガはホノカの殺気に満ちた表情を思い出して拳を強く、強く握った。
「はぁ…それは難しいね…」
カイジンはケイガのまさかの頼みに正直気が重くなる。
「あぁ…」
「でも頑張ってみるよ」
カイジンはケイガの悲痛な表情に負けて頼みを了承してしまう。
「助かる…」
「すみません…そろそろいいですか…?」
セルムは気まずそうに質問する。
「あぁ、悪い」
ケイガは熊車の邪魔にならないように後ろに退がる。
「行け!」
セルムは白熊に指示を出し、熊車を出発させる。
ホノカとポーラは窓から顔出す。
「「行ってきます!」」
ホノカ達は二人で手を振って挨拶をする。
「気をつけて行くんだぞ!」
ケイガは手を振り返す。
ホノカ達は中継地点である牙の民の住む集落へと向かう。
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