終話:終わり良ければ…
ホノカはポーラからの急な知らせで王国に戻っていた。
ホノカはポーラに引っ張られながら王宮のオーレンの寝室に着く。
ガチャン
ポーラが寝室を勢いよく扉が開ける。
「オーレン!」
ホノカの目の前には床に伏せ、痩せこけたオーレンがいた。
横にはオーレンの兄妹がいた。ブレンもオーレンと同じくらい痩せこけているが毅然としていた。
「?、ホノカ?」
オーレンはホノカの声に気づき目を開ける…
「オーレンどうしたんだ?」
「すまないが二人だけにしてくれないか?」
オーレンはホノカの質問にはまだ答えずに2人になろうとする。
「かしこまりました…」
ポーラと護衛、オーレンの兄妹は部屋を出る。
ブレンは少しふらつた足取りだった。
カッ
オーレンは二人だけになると急に目をかっ開ぐ。
ホノカはオーレンの様子に驚く。
更にオーレンは布団から飛び出て…
「お願いしまぁー〜す!」
オーレンはベットで泣きながら土下座をし始めて。
「どうかポーラちゃんを王宮から連れてっていてくれ!!!」
ホノカにポーラを王宮から連れていくように懇願し始めた。
「お、おい、どうしたんだ?一体…」
ホノカは戸惑いながらオーレンに懇願の理由を聞く。
オーレンはホノカに顔を向けて話始める。
「ポーラちゃんの食事をペンドラゴンで負担する事は出来ませぇん!!」
「え?」
「君から貰った食費もとうに使い切って…も、もう王宮の食事は女性陣の食事しか残っていません…どうかどうか…」
オーレンは話しながら再び頭を下げる。
「そ、そんなに食べてるのか?」
ホノカはポーラの食事量がストレスで増えるのは知っていたが俄には信じれず困惑している。
コクコクコク
オーレンは話すことなく首を縦に振り続けて、ポーラの昨日のメニューの消費した材料を報告し始めた。
「昨日だけの食事ですら…牛1頭と豚5頭、鶏10羽、パン21斤、ジャガイモ10玉、キャベツ6玉…」
「もういい。わかった…」
ホノカは報告するたびに余計に痩せこけていくオーレンに居た堪れずに話を遮る。
「ここ数ヶ月分の食糧は俺が確保してくる。ポーラのオーバーした食費も払うよ」
オーレンは涙でパンパンに腫らせた顔を上げる。
「ありがとう〜ー…」
オーレンは泣きながらホノカに感謝する。
「俺の方こそ妹の事ありがとうな…」
ホノカは妹の面倒を見てくれたオーレンに感謝し返す。
「そういえば女性陣だけって言ってたよな…?」
「う、うん…そうしないとポーラちゃんの食べる量を確保出来なかったから…」
「はぁ…すまない…いろいろ…」
「うん…でも…従魔の子達にも言ってあげて…」
「な!?」
「彼らもポーラちゃんの為に暫く水しか飲んでいないから…」
「わかった…教えてくれてありがとな」
ホノカは迷惑をかけ過ぎ頭が痛くなり顔を覆う。
「いいよ…君たちはこの国の恩人だから…このくらいは礼をしないと…」ニコ
オーレンは痩けた顔で痛ましい笑顔見せる。
「よし決めた」
ホノカはその笑顔を見て急に何かを決め始めた。
「ん?何を?」
「晩餐会を開くぞ」
「いいけど…晩餐会って誰を呼ぶんだい?」
「王宮…いや王都のみんなだ」
「え!?」
「でもそんなに食べさせられないよ?食糧とか料理人とかいろいろね!」
「俺に任せておけ。お前ら王宮に人呼んでおけよ?後は全部俺に任せておけ!」
「わ、わかった…」
疲弊しきっているオーレンはホノカの自信を信じることしか出来なかった。
「あいつらも呼ぶか…」ボソ
「?」
ホノカの準備に時間がかかり時刻は夕方ちょい過ぎになっていた。
王宮の前には人だかりが出来ていた。
ペンドラゴン国民は何が行われるか聞いておらず奥の者達は不安になっていた。
オーレンが体調不良という噂が流れているからだ。
実はこの噂ゲオルグ復権派が流した噂なのだ。
王宮内の本来の謁見の間には調理台が設置され、その前には食卓がありオーレン達王族とポーラ、従魔が座っていた。
そして別件で体調を崩しているガルルグもいた。
大臣や役職持ちも勿論この場にいるが…
オーレンよりはマシなだけで彼らも痩せていてこの事に意を唱える気力はない。
女性陣も集まっていて男性陣より食べているけど微妙に痩けている。
皆んな栄養が足りなくボーっとしている。
「よし…」
漸くホノカが現れて調理台の前に立つ。
「みんな!集まってくれてありがとう!」
ホノカは少しぎこちない笑顔を見せて挨拶し始める。
「皆んな俺の妹ポーラのために無理させてすまない…そしてありがとう!
そんな皆んなにお礼をしたい!
今日は俺がつくる料理を堪能してくれ!」
「「「え?」」
(「英雄様に料理させるの?」)
(「我々を満足させられる料理何てできるのか?いやこの際食えるなら何でもいい…」)
(「飯飯飯飯飯飯飯」)
ホノカの言葉を聞いた者達は困惑していた。
(「影神法術クワトロ“リアルシャドー”」)
ホノカは四人の分身体を造り出す。
「「「え!?」」」
「「「は?!」」」
分身体が現れた事に驚愕する。
「右から1号、2号、3号、4号だ。
わかったか?」
コクン×4
「じゃあ1号、2号は料理の手伝いをしろ。此処にいる2号は出来た料理を運ぶの同時進行だ。3号、4号はペンドラゴン領内に料理を運んでくれ」
コクン×4
「よし料理開始だ!」
ホノカはアイテムボックスから調理するモンスターを出していく。
「あれはスカーレットブル!」
「それよりレッサーコカトリスがいるぞ!」
「あれはワイバーンフィッシュか?本でしか見たことないぞ…」
調理されるモンスターはこの世界でA、Sレートを誇るモンスター達ばかりで皆を驚かせていた。
「ってあれ!?」
ホノカは数秒のうちに料理を完成させて2号は料理を運んでいく。
食堂に変わった謁見の間に料理が並ぶと…
ガツガツガツガツ
オーレンとブレン、従魔達は食前の挨拶をする事なくホノカの手料理を食べ始める。
「…」
オーレンの姉に当たるトリア・ペンドラゴンは二人を見て少し引いてしまうが、二人が自分達の為に無理しているを知っていたためオーレンの変わりに挨拶をする。
「それでは皆さん、英雄ホノカ様いただきましょう!」
「「「「「いただきます!」」」」」
待たされた者達は尋常ない速度で食べ始める。
皆が久しぶりの食事で喜んでいる頃ガルルグは不安な様子を隠せないでいた。
「悪いが…私は失礼する…」
ガルルグは杖を使いこの場を去ろうとする…
「ちょっと待ってくれ公爵」
ホノカは料理しながらガルルグを呼び止める。
「英雄殿…王族の私ですら見たことない豪勢な料理感謝するが…私は…コルナ…娘の事でとてもじゃないが食べ物が喉を通らない…」
ガルルグは娘の事を気にして食事をまともに摂れていなかった。
「あぁ…知ってる。でも少し待ってくれ…もうそろそろなんだ」
「?」
ガルルグはホノカの言葉を疑問に思う。
ヒュン
「!?」
ガルルグの目の前にコルナやその護衛、ショウリ、マイナ達が転移して来た。
連れて来たのは五体目のホノカの分身体だった。
「お父様…?」
コルナはガルルグの姿を見て涙を溢す。
「コルナ…」
「お父様!」「コルナ!」
二人は互いを抱きしめ合い泣きながら親子の団欒し始める。
「お父様痩せ過ぎです!」
「あぁすまない!でもお前の事が心配で…」
「それで死んじゃったらどうするんですか!もう私にはお父様しかいないのに!!」
「あぁすまない…すまない…」
二人は久しぶりの親子の会話を泣きながら笑い、二人の張り詰め顔が解されていく。
「親子の団欒中悪い…飯食ってからにしないか?」
ホノカは二人に料理を薦める。
「あぁ、そうさせて貰うよ…娘にこれ以上心配させたくないからね…」
「私もいただきます…」
二人は王族の席に座っていく。
ショウリ達は既に分身体に案内され食事をしていて、
案内を終えた分身体がホノカの元に戻って来ていた。
「お前は5号だな。お前も3号と4号と一緒に王国領内に飯を運んでくれ。あれ」
ホノカは豚の丸焼きを指して指示をする。
コクン
5号は豚の丸焼きを持って転移していく。
分身体達が運んだ料理は順調にペンドラゴン領内に運ばれていった。
運ばれた場所は…
ホノカ達の故郷トライーガ領。
トライーガ自警団がホノカの手料理を泣きながら食べていた。
ストデウム学園。
夕食は本来食べ終わっている時間だが、皆英雄の料理を気にせず食らっていた。
ギードラの実家の少数民族の村。しかもハーグとギードラ、ギードラの妹夫婦が丁度里帰りしていた。
強き者の恵みを村総出で寒い中外で祭りのように祝い始めていた。
ギードラの父は職場の同僚とホノカの料理を堪能しています。
グレンダの実家ムーン辺境伯領。
初孫は会話をしてくれなかったが、それでも初孫の手料理を食い、泣いた顔を抑えながら食べてる先代の当主。
義兄に似た格好良く育った甥に自身の生まれたばかりの子供見せれなくて悲しんでいるが、今度会ったとには息子を見せると決意した現当主。
王都周辺に隔離された邸。
此処にはゲオルグが監禁されていた。
最初は自身の王位を奪った息子の友達が持ってきた料理を警戒していたが匂いに我慢出来ずに食べていた。
王国はこうして寒い冬を家族で過ごしていく。
(光神法国の領内の地下施設)
謎の装置が開く。
「ぐ…ぐぞが…」
装置から痩せ細った老人が手を震わせながら身体を起こす。
この老人こそが本来のアーゼルだ。
アーゼルは死んで幽霊になったわけではなく、装置を使い幽体離脱をして、他者に乗り移っていた。
「馬鹿め…私は何度でも蘇る…」
アーゼルは様々なところにぶつかり、よりかかりながら進んでいく。
「はぁ…遠い…」
普段動かない老体なのでたった数メートルでも、数十メートルにもか感じられる。
「やっと…は…はぁ…はっはぁ…」
アーゼルは横になった冷蔵庫のような物に立ち止まる。
「くぞ…重い…」
アーゼルは細い皮だけの腕で冷蔵庫を開ける。
「ひっひ…」
アーゼルはリアクターのような物を取り出し不気味な笑い声を上げる。
「ふ…、ふ…ふ…」
アーゼルにとって重いリアクターをアーゼルは米俵を持つ小学生のように無理して抱えて運び始める。
「これ…さえ…ふー、あれば私は…不滅…はぁ…なのだぁぁ!」
アーゼルは先程寝ていた所に一度リアクターと置く。
唯さえ痩せこけたアーゼルは滅多にしない運動して死にそうになっていた。
アーゼルは装置から使い切り軽くなったリアクターを取り出し捨てる。
ガコン、ガラガラ
床には使い切ったリアクターが何本も捨てられていた。
「ふー…ふー…」
アーゼルは装置の上で引き摺りながら動かす。
カン…ゴロゴロ…
何者かが散らかったリアクターを蹴ってしまう。
「ん?」
アーゼルはその事に気づき音の鳴った方を見る。
アーゼルが見た方にはローブを着た凸凹三人組がいた。
「教団の者か?」
真ん中の男は何も言わずに書類をアーゼルに見せる。
アーゼルは老いた身体でその書類を奪うように受け取る。
アーゼルは書類を見て怪訝な顔をする。
「第8使徒のところの奴らか?」
コクン
真ん中にいた者が肯定する。
「少し待ってろ…仮の依代を用意する…」
見栄はりのアーゼルは自身の老いた姿を他者に見せたがらない。
「…ない」ボソ
真ん中から男の声が発られた。
「何?」
「その必要はない」
男は剣を抜く。
「何のつもりだ!!!」
男はアーゼルは無視する。
「“混色の炎”」
男の眼から紫の炎が、腕から緑の炎が、そして炎魔法の赤き炎を剣に纏う。
「敗者に要はない…」
「止めろ!!!!!!私は神に選ばれしし…」
アーゼルの制止を無視して男は斬りかかる。
「ギ、ガアアアア!」
ゴォオオオオオ…
男の炎は一瞬でアーゼルを丸焦げにする。
「任務完了」
男は立ち去ろうとする。
すると男の大柄な仲間が丸焦げのアーゼルを手を前に出して近づく。
「止めろ…腹を壊すぞ」
男が大柄な男を止める。
注意された事により大柄な仲間は悄気てしまう。
「戻ったらもっといいもの喰えるだろ…
ゲート」
男の細長な仲間が転移ようのゲートを創り出す。
「帰るぞ」
三人はゲートへ姿を消した。
※イグラシアの国交は四章に持ち越します。
三章無事(?)に完結致しました。
しかし四章が全然進んでいないため暫く休載致しましす。
ストックが10、11話ほど出来次第に連載を再開致します。
 




