第38話:崩れた均衡
(イグラシアの王宮…秘密会議室)
此処は王宮の図書館に隠されている秘密の会議室。
此処は王から信頼された者のみが入れる。
今代の王アリゲトロイが信頼した者達4名が無駄に広い円卓に集まっていた。
闇ギルド「レオパダン」ボスで獅子の獣人族ガレオン。
彼は以前まではイグラシアの闇ギルド全体を指揮っていた逸材だ。
中立派の実質No.3、蛇の獣人族トンギ・ヘビジタ
旧守派の情報を流す見せかけて、保守派の情報を入手していた二重スパイだ。
スラム街を指揮ってる、鷲の獣人族サイクロ。
戦闘向きじゃない事で差別されてる獣人族や人族が逃げ込んくるスラムを守る大黒柱的存在。
そして唯一の場違い感が歪めない人物。
ニワトリの獣人族トリスタン・ニィーワ男爵。
彼はアリゲトロイの幼少から付き合いでこの仲では最も信頼してる人物だ。
しかし彼は王の友人としてだけでなく、下位貴族や商人などの不平不満などを集めるなどの縁の下の力持ちを担っている。
四人はアリゲトロイを持っていた。
壁が開き、アリゲトロイが入ってくる。
「わりぃ遅くなった…」
アリゲトロイは顔が鰐だけどクマが出来ていて疲れた様子だ。
「大丈夫か?アリィー」
トリスタンが椅子を引いてアリゲトロイを座らせて気遣う。
「あぁ…」
アリゲトロイは力のない返事をする。
「別にいいけどよ、アイツはどうしたんだ?」
ガレオンはアリゲトロイの事は気にせずに此処に本来集まるべきに一人がいない事を気にしていた。
「ん?あぁ、アイツならペンドラゴンからの生徒の監視と護衛を任せてある…」
アリゲトロイは疲れすぎて、誰が集まっていないかも把握出来ていない。
「護衛なんているのかよ?改革派の人間をあんな風にした化け物なんだから」
ガレオンは鼻で笑いながら皮肉を言う。
アリゲトロイは睨むだけで何も言わずに変わりにトンギが説明する。
「彼がやったというのはあくまで仮説ですよ。滅多な事は言わないください。」
「はいはい、そうですね」
ガレオンは不貞腐れたように返事をする。
「皮肉を聞いてる場合ではありません。本題に入りましょう。会議はどうなったのですか?」
トンギは不安な顔でアリゲトロイに質問する。
「…話は難航している…、どの派閥にとっても邪魔だった奴らが消えてくれた…だが消したと思われる人間が…」
アリゲトロイは言い淀む。
「ペンドラゴン国民なら話は別というわけだね?」
話の内容を察したトリスタンが話を補足する。
「あぁ…その通りだ!」
アリゲトロイは椅子の背もたれに首を置く。
「ペンドラゴンじゃなきゃ…目を瞑れはしなくても穏便に済ます事が出来ただろうが…」
アリゲトロイは手で眼を覆う。
「諦めて許しやればいいだろ?」
サイクロは押し黙って四人に対して匙を投げる。
「ペンドラゴンとの問題はそう簡単じゃねぇんだよ…」
「えぇ…あの国とは「戦火」が出てくる前から揉めているんです。」
「俺らスラムの人間には関係ない話だな」
「あぁ?てめぇもイグラシアの人間だろうが!イグラシア国民としての誇りはねぇのかよ!?」
ガレオンはサイクロの他人行儀の言い方に不満に思う。
「ふん、こんな時だけだイグラシア民かよ。流石は元おぼっちゃま…俺らが、無駄に!誇り高きイグラシア人だと思ってらっしゃるようで」
サイクロはここぞとばかりにガレオンを挑発する。
「なんだと!?」
ガレオンは立ち上がり“獣化”を発動する。
サイクロもそれに迎え撃つように“獣化”する。
「止めろ…」
アリゲトロイは“獣化”をしていないが二人の勢いを完全に止めた。
アリゲトロイは姿勢を正すとサイクロの方を睨む。
「サイクロ…弟には俺が頼んで闇ギルドをやってんだ。弟を侮辱するのは止めろ…」
ガレオンは弟と呼ばれた事に不満そうな顔をするが否定はしない。
何を隠そうアリゲトロイとガレオンは異母兄弟である。
アリゲトロイはある理由で家族である王族を姉弟四人を残して皆殺しにした。
アリゲトロイはその四人にそれぞれに特殊な役職に就かせていた。
「…」
サイクロはそんな事を既に知っているが知らん顔でアリゲトロイを無視する。
「はぁ…」
アリゲトロイはサイクロにも思うところがあるのでこれ以上彼を追求しようとはしない。
「それで結局議題はどうなったのですか?」
トンギは三人を気にせず話を戻す。
「…5時間話合って結局何も決まられなかったよ…」
「そうですか…ペンドラゴンの方からは?」
「子供二人に連絡用の魔導具を持たせてるわけもないから、普通に使者を送ったよ…昨日送ったから早くても明日…遅ければ明後日以降だ」
「そうでしたか…それで我々に何をお望みで?」
トンギはアリゲトロイを試すような不適な笑みを受けべる。
「ふん…望みも何も、中立派は腹ん中で何て言ってるんだ?」
「ふふ、中立派の3割は本当にペンドラゴンに責任を取らせるつもりです。4割はペンドラゴンの小さき英雄を讃えてもいいと思っています。2割は領民次第。1割は金が貰えるならペンドラゴンを許してもいいという感じですね」
「そうか…反対していない3割をどうにか引き込めないか画策しろ」
「仰せのままに」
「次にガレオン、闇ギルドはどれくらい制御にある?あとペンドラゴンに反感を持ってる奴はどれくれいいる?」
「…」
ガレオンは先程のイラつきからアリゲトロイを無視する。
「ガレオン!」
「ちっ…改革派に寝返った奴らはほぼ壊滅してる。辞めたら奴らの8割強は吸収出来ているが残り2割ほどは他国に逃げたり盗賊になってるな…反感を持ってる奴は全部を把握していないけど…ペンドラゴンとの戦争の所為で親死んで闇ギルド落ちになった奴も一定数いるからな…無視はできないな…」
「そうか…じゃあその数を調べてくれ、あと無理かもしれないが懐柔出来ないかやってみてくれ」
「…あぁ…」
「サイクロ、スラムの方はどうなってる?」
「ふっ…うちは全員がペンドラゴンの小さき英雄を讃えてるよ。特にガキ共がな、ペンドラゴンに行きてぇって奴らまでいやがるよ」
「わかった…」
「更に追加して言うとペンドラゴンと事を構えるなら反乱が起きるぞ?」
ガタン
ガレオンとトリスタンがアリゲトロイを守るように立ち上がり、サイクロを睨む。
「それを君が指揮するのかい?」
トリスタンがサイクロに問いただす。
「そうなるな…」
サイクロは包み隠さず答える。
アリゲトロイが二人の前に手を翳し止めていた。
ガレオンは手だけ獣化し、トリスタンは投げナイフを数本取り出してした。
「サイクロ、何とかペンドラゴンとは和平を結ぶつもりだ。だから何とか彼らを止めていてくれ」
「安心しろ、奴らにはペンドラゴンとイグラシアが争って兵隊が減ったら事を起こすと言ってある。それまでは何もしねぇよ」
「そうか。助かる…」
こうして秘密の会議
は暫く重い空気まま続いていく。
◇
(ホノカ視点)
あぁ、やらかした…
怒りを抑えきれずにだいぶ暴走したな…
所々の記憶が曖昧だ、改革派のガキ共の記憶を消したのもその親共の身体を消したのも覚えてる…
だがどうやったのか全然覚えていない…
あとガキ共を逃がさない為に結界を張って、その結界からコルナ嬢達を転移させて回復もしたらしいんだけど…
これもどうやってやったか覚えてない…
何とか思い出したいのだが思い出せない…
何故思い出したいかというと俺が改革派を潰し過ぎた所為でイグラシアも流石に混乱しているらしい…
何とか思い出して数人は戻そうと思ったんだけど、自分で何をしたのか覚えていないので解除が出来ない…
「大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…」
「あまり悩まないでください…彼らの行った事は暴挙以外のなにものでもないのですから…彼らの自業自得です…」
「ありがとう、でもマイナ、俺の事なんかより自分の事を労ってくれ、ゆっくり寝ていてくれ」
「はい…」
マイナは横になり目を閉じた。
ショウリとマイナには暫く休んでもらっている。
傷は俺が回復したようだけど精神的に疲弊している。
ショウリはそこまでじゃないが特にマイナが心に傷を負ったみたいだ。
彼女はこの二日間真面に飯を食べれてない…
勿論マイナは冒険者として盗賊とか戦い命のやり取りをして来たが…
相手に相手のなりの正義があり、言葉と剣の攻撃は初めてで彼女の心に大きな負荷がかかったみたいだ…
本来俺が傷つくべきところなんだけど、
悪いが俺には何とも思えない…
彼らが間違っている思わない…
だが国同士の戦争に俺らの意志が通るわけがない…
第三者にその意志を…感情を利用されるのが落ちだ…
今回みたいに…
そして俺らが気にしても戦争の悔恨と憎悪は消える事はない…
「はぁ…」
マイナ悪いな…
俺はマイナの頭に手をのせる。
時間神法術 メモリアルデリート
マイナの記憶を一部消去した。
彼女が自分で乗り越えるべきことなのかもしれないが…
俺には彼女を助ける方法があるのに黙って見てることは出来なかった…
まぁ、これは俺のエゴだよな…
あとでマイナに知られても、恨まれるのが俺だけならいい…
だからこれでいいんだ。
いや相談するべきだったかな…
◇
(グエルの隠し研究所)
グエルに第7使徒から連絡が来ていた。
「何の御用でしょうか…?」
グエルは映像越しにも関わらず第7使徒に対して平伏していた。
「イグラシア付近で神の痕跡が見つかった」
「まだ生き残りが?」
「その可能性は低い…確認されたエネルギー量は少なく恐らく第11使徒アーゼルが召喚した物の副産物だろう…
観測器に調子が悪くイグラシア付近としてわからないが注意しろ」
「はっ…」
「知らせは以上だ」
ブツン
通信が一方的に終わる。
グエルは隠し扉から学園の自室に戻る。
(「恐らく彼だろうな…」)
グエルは神の痕跡の正体に目を星をつけていたが、報告しなかった。
「今年の学園行事で終わりかもしれないな…」
グエルは悲しそうな顔で窓から学園行事の準備を行っている生徒たちを見つめる。
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