6 そして魔女はドアを開ける
今回はフルーラ目線で進んでいきます。
ホワイトデー?何それ?
彼がここに来たのは本当に急だった。
「誰かいませんか!」
「うるさいなぁ、ここが誰の家かわかってるのかい?」
急に押しかけてきたその少年はボロボロで、そして...
「君は?!」
「俺を弟子にしてください!強くなりたいんです!」
僕は分かっていた、この子がここに来た理由を、強くなりたい理由を。だけど断らなくてはならない、それが決められた事なんだ。
「その様子だと僕のこと知ってるみたいだけど、僕は弟子を取る気は無いよ。悪いが他を当たってくれ」
「でも、俺は!」
「しつこいよ...」
気は進まないが彼はここで消えてもらうか?罪になる訳では無いが...まだ子供だ、さすがに可哀想か。
目の前で頭を下げ続ける少年に目を向ける。
「この周りは魔獣も出るからね、今日ぐらいは泊まっていったらどうかな?ただし、明日になったらすぐ出ていってくれ、これが条件だ」
「なら...あんたに用はない」
この返事も分かっていた。彼にとって私は強くなるための道具でしかないのだから。
だが、魔獣が出るというのは嘘ではない。この歳の子供が1人で明日を迎えることは難しいだろう。
『ウォォォォォン』
「...分かった明日すぐ出ていくから今日だけ泊めてくれないか?」
「僕には用がないんじゃなかったのかな?」
「くっ、お願い...します」
「いいよ、1晩だけだからね」
ここで泊めるという選択をしなければ、僕と君は出会ってなかっただろう。
ただこの選択が正しかったかと言えば分からないけれど。
「倒れるように眠ってしまいましたね」
「当たり前だろう、あそこからこの家までどれだけ距離があると思ってるんだ」
空間魔術など使えるわけが無いのだから、徒歩で来たのだろう。
「それより...彼をどうするつもりですか?」
「明日すぐに追い出す、あとは知らないよ」
「それならさっき追い返しても同じだったのでは?」
確かにそうだ、なんで泊めた?可哀想だから?この後、彼がどうなるか分かっていて明日追い出すのに?
「気まぐれだよ」
「そうですか...」
沈黙がしばらく続いた後。
「ならいっそ弟子にしたらどうです?気まぐれで」
「弟子にしてどうする?力を与えれば彼は復讐のために使うだろう」
「ふふ、『僕は弟子を取らないんだ』とは言わないんですね?」
全くこいつは鋭いとこをついてくる。別にあの少年の一族が嫌いなわけじゃない。
ただこの国の決まりは従わなければならない、ただそれだけの事だ。
「匿ってどうする?わかるやつらには一瞬でバレるぞ?」
「学園に入れてはどうでしょう?今代の魔王はそもそもあの政策に反対だった方ですし、それに」
「あそこなら老害どもの目も届かない、か」
ん?もう朝か、この子のせいで眠れなかったじゃないか。全く迷惑な"弟子"だよ。
「とりあえず僕はこの子の事を見極める。ノエルは僕がいいというまで待機していてくれ」
「承知しました」
良く考えれば初弟子か、少しぐらい師匠らしくするかな。
そして魔女はドアを開ける
「おーおはよう、よく眠れたかな?」
老害ですがなんと4人います!
おー怖
今のフルーラはルイのことが大好きです