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〈幻の国〉レモネリアの伝説

 ずっと昔、海のそばに、レモネリアという名の小さな王国がありました。

 おいしい水と穏やかな気候に恵まれて、人々は幸せに暮らしていました。商人や旅人の船が多く訪れて、国は栄えていました。

 王は国民を愛し、その意見を取り入れながら国を導きました。また、国民も王を信頼し、大切にしていました。

 あるときレモネリアの人々は、感謝の気持ちをこめて、王のために新しい城を建てようと決めました。うわさが広まり、材料を売りに来る人や手伝いに来る人で、国はますます栄えました。

 白銀に輝く城は、三年ほどかけて、やっと完成しました。壁や床のあちらこちらに、貝殻や、宝石や、星のかけらが埋めこまれて、それはそれは美しい城となりました。王はたいそう喜んで、よりいっそう国民のために尽くすようになりました。

 平和で豊かなレモネリア。その歴史はずっと続くかと思われました。

 ところが。

 ある夜、突然、たくさんの星が降ってきたのです。赤く燃える、大きな星が。

 逃げる時間はありませんでした。家は焼けて崩れ、人々の命は一瞬にして絶たれました。

 そんな中で、国の象徴である白銀の城だけは、炎をはね返し、熱を吸いこみ、ただひとつの傷さえつきませんでした。

 城の中にいた人々だけは助かったのです。王と王妃、その世話をする者たちや料理人、そして、体の弱い王子がいました。

 王は愛する国民を守れなかったことを嘆きました。そして、つぐないの旅に出ることを決めました。困っている人々を救うために力を尽くせば、いつか天国で国民と再会できると思ったのです。

 王子は、しかし、王についていきませんでした。外の空気を吸うと咳が止まらなくなってしまう王子。迷惑をかけてしまうとわかっていたのでした。

 みなが旅に出て、王子はひとりになりました。たったひとりで、毎日毎日、レモネリアの国民のために祈りを捧げました。

 王子は城にこもりきりだったので、その存在を知らない者さえいましたが、それでも王子は、王と同様に心から国民を愛していたのです。

 国が滅んで、およそひと月。

 美しい城とともに、心優しい、けれど孤独な王子は、永遠の眠りにつきました――。


 

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