99「魔王戦」
「何者!」
魔王と側近達は色めき立った。
反乱軍がついに此処まで辿り着いたか?
見れば魔族が三人いる。残りの二人は人族だ。
勇者一行には見えない。
「魔王ダシハヴァン、世の為、人の為、お前を討ちに来た」
「ワハハハ、戯け者めが、やれるものならやってみろ」
突如玉座の間に現れた、五人組の闖入者。
大柄の男の魔族は巨大な斬馬刀を持っているが、
他の者の装備は貧弱と言って過言ではない。
剣はどれも鋼の剣に見える。
魔剣の類は無さそうだ。
市井で普通に売っている市販品のレベル。
鎧らしい鎧は大柄な男の魔族が着けているのみ。
五人の誰もが百戦錬磨の強者には見えない。
近くに居る将軍四名の実力なら、過剰戦力とも思える。
戦闘は打ち合わせ通りに、
将軍二人をゾルックが、将軍二人をミモが受け持つ形に持って行く。
「うおおおおおおお!」
斬馬刀を団扇のように振り回すゾルックの間合いに、二人の将軍は入る事が出来ない。
隙を回り込もうとしても、パハジルの援護魔法で邪魔をされる。
バギィン!
援護魔法を避けようとした将軍の一人は、一瞬の隙を斬馬刀で薙ぎ払われた。
1対1となると斬馬刀は隙が出来易くなる。
ゾルックはモーニングスターに持ち替えた。
彼が力任せに振り回す鉄球の先端速度は音速を超える。
そんな間合いに通用できる剣は無い。
牽制しようとすると剣は弾かれる。
将軍は剣を失わないようにと必死になる。
パハジルの援護魔法を避けながら防御に廻るしか出来なかった。
剣先を鉄球に掃われた将軍は、ついに体勢を崩してしまう。
崩れた体勢の背中に、音速を超える鉄球がヒットした。
ボグン
彼は背骨や肋骨が粉砕され、床に叩きつけられる。
完全に戦闘不能、命があるのか無いのかは定かではない。
すかさずゾルックはミモの援護に走る。
ミモは動き易いようにポンチョを脱いでいて、6本の腕と剣を露わにしていた。
ミモの受け持つ将軍達も、トリッキーに襲う6本の剣に躊躇する。
二手に分かれて切りかかろうとも、片腕の3本の剣が襲い掛かる事に。
6×6×6で216通りの剣筋に対し、6通りの剣筋で対応しなければならない将軍たちは焦る。
剣術に素人のミモでも、6本の剣を同時に扱えるアドバンテージは大きい。
戦場を駆け回って数多の戦績を挙げた彼らの歴戦の剣術でも、対処法が無い。
大上段から振り下ろして掛かって来た将軍の一人は剣を受けられ、
ミモの2本の剣の内1つの剣に首を切り裂かれ、床に転がった。
「グワ!」
残る一人は6本の剣を真正面から対応しなければならなくなる。
途惑いの一瞬後、後ろから来たゾルックに切り伏せられた。
四人いた将軍達はこうして前衛のゾルックとミモに敗退した。
「くっ! 将軍達が殺られたか、だがお前は何だ、剣戟が素人ではないか」
……そりゃね。自慢じゃないけどリザードマンの道場の子にも負けちゃうんだから。
「そりゃそうでしょうね。私の本分はダンマスだから」
「何、ダンマスだと?」
ダシハヴァンは訝しがる。
「証拠を見せようか、テラスの外を見るが良い」
ダシハヴァンは後退りしながらテラスの方へ移動する。
テラスの向こうには城下町が見えるだけの筈だが。
迷路のような城下町が動き出し、整然とした街並みに変わり始めるのが見えた。
ダシハヴァンは戦慄する。
「この力が欲しくはないか? 欲しくば私を倒してみろ」
「猪口才な」
次の瞬間、シレラの胸にダシハヴァンの剣が刺さり、背中へ抜けた。
「ダシハヴァン、お前の勝ちだ、スキルを委譲する…」
「「「シレラ!!」」」
後方に控えていたタリマが速攻でシレラを連れ後退する。
「魔王ダシハヴァン、お前が次のダンマスだ。
いつか誰かに倒されるまで、いつまでもダンジョンの中で捕食してやがれ」
魔王ダシハヴァンを襲いに来た一行は、悔し紛れの言葉を吐き残して、
後ろに隠された移転のトラップで逃亡した。
「フン、莫迦共めが…」
シレラは死に、魔王城はダシハヴァンのダンジョンになった。




