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93「魔の山へ」

スルトヘイムへ直行した私達はイモータルワイズマンさんの庵へ向かう。

さすがの彼でも盾14個の製作は時間が掛かる。


「10日ほどはみてくれ」


と彼は言う。

精緻な作業なので、私達は役に立てそうには無かった。


「イモータルワイズマンさんに盾の料金払わなきゃね、いくらで良い?」


「払わんでも良いのだな、既に十分な金を貰っているからな」


「そうなの、悪いね」


こういう所が研究者とか学者肌なんだろうね、きっと。骸骨だけど。


待っている間、ゾルックさんは残っている樽の酒をチビリチビリやり始める。


流浪の頃は、呑みたくとも呑めなかったんだろう。

今は一族が定住出来た嬉しさと感謝を返す意味で、私達の護衛に付いてくれている。

彼も男気に溢れる善人なんだと思える。

のんびり待つ間、酒を呑んだって良いじゃないか。




私達は格納以来出番の無いモンシェナと、馬車を引いてくれる馬の世話くらいしかする事がない。

子馬じゃ大人の馬の足について行けないから、一緒に歩かせる事が出来ないんだよね。

事が終って落ち着いたら、またお世話になろうじゃないか。



庵にいた子供は小間使いとして雇われているとの事だった。

イモータルワイズマンは庵を留守がちにする事が多く、留守番も任されているとか。


因みにイモータルワイズマンさんの昔の名はパハジルというらしい。


「早く言ってよね、今まで長ったらしい名前で呼んでて損した気分だ」


これから彼をパハジルさんと呼ぼう。

試しにパハジルさんと呼んでみると、


「ああ、懐かしい呼ばれ方だ…」


なんて感慨に耽っている。

どれだけ長い事、名前で呼ばれてなかったんだ?

孤独を愛するにも程がある。





そんな具合にのんびりと10日間が過ぎた。


「盾が完成したぞ」とパハジルさん。


彼の会心の作らしい。


盾は磁場を持っている。

光のダンジョン内では、周りの電荷を吸収して電磁場を形成するという設計だと自慢する。


電磁場とは、電磁バリアー。

電荷を持つプラズマを退け、バリアーに対する影響はローレンツ力で弾くという優れ物。

同時期に体に塗る磁性体塗料も、同じ理論で電磁場を発生するという説明を受けた。


「うん、私等には相変わらず解らん説明だ」


要するに盾と塗料があれば、理論上大丈夫だろうと言う事か。



そして実地検証を行うために、光のダンジョンの入り口を探す事に。

第一目標はスルトヘイムで一番高い山、その山の頂上を目指す。

3000m級で一番高い山ってどれくらい高いんだろう。

山の上だから気球は使えない、着陸できる場所があると思えないからだ。

そうなると歩いて昇るしかなさそうだね。


私達は登山準備に取り掛かる。

パハジルさんは、これも持って行けと道具を持って来た。

高山では空気が薄くなり、高山病にかかり易くなると言う。

その場合に必要な空気を呼吸する道具らしい。


気温も低くなるから、防温装備も必要になるという注意も受けた。

登山って思ったより重装備が要るんだね。

タリマのポータルがあれば、どれほどの量の装備も持って歩かなくて済むから良いけど。


装備が整い終わった頃、私達は馬車で出発した。

最初から歩きじゃ大変だから、目的の山の登山道の行ける所まで馬車で行く予定だ。

馬車での旅は半月ほど掛かり、山の麓の邑で宿泊した。


山に積乱雲がかからないとポータルは開かないらしい。

それまでは、ここで山の様子を見ながら待機しなければ無駄足に終る。


「天候任せになるのかぁ」


「しかたないのであります」


いっそタリマの力で、ダウンバーストをした時に出来た積乱雲じゃ駄目かな?とも考えた。

しかし他のダンマスの影響下での物なら難しいだろうとの結論になった。


結局、麓の邑で山の天候を見張る日々が続く事になる。

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