92「磁鉱石」
磁鉄鉱 (じてっこう、magnetite、マグネタイト)は、酸化鉱物の一種。
鉄分を含むため黒い色をしている。
磁性を持っているのが特徴で、そのものが天然の自然磁石となることがあり「マグネタイト」とも呼ばれている。
火成岩中にごく普通に含まれる他、変成岩、堆積岩、超塩基性岩などの少量成分鉱物としても産する。
まれにほとんど磁鉄鉱からなる溶岩の存在もあると言われている。
自形は八面体、斜方十二面体をはじめ複雑なものが多いが、結晶片岩や超塩基性岩中のものは単純。
磁鉄鉱が自然磁石になるには、とても大きな電気エネルギーが必要で、鉄鉱の上に雷が落ちたりする事で、自然磁石になる事がある。
イモータルワイズマンさんは磁鉱石について説明してくれるけど、賢者じゃない私達には良くわからない。
で、具体的にどうやって探すのかと言えば、黒い石を探して鉄片を当てて判断するのだとか。
「最後の説明だけは、何となく解るかな」
私達はそれぞれ鉄片を持って、また採掘場へもぐる事にした。
「但しイモータルワイズマンさんは宿屋に居残りね」
骨の体じゃ力仕事は無理そうだし。
「待て、いくら儂が骨だといっても鉄片くらい岩に当てる事は出来るのだな、儂も連れて行け」
イモータルワイズマンさんはやる気のようだ。
私達は坑道長さんに挨拶して中に入ろうとした。
「おお、あの時の娘さん達だね。今日も稼ぎに来たのかい?」
気軽な挨拶が返された。
やべっ! そういえば資金に余裕無かったんだっけ。
磁鉱石探しついでに稼いで行かなくちゃ。
今回はゾルックさんという男手もあるから、あの時よりは稼げるかな。
私達は坑道に入って行く。
途中マグマ溜まりのある場所で磁鉱石発見!
パワーの有るゾルックさんでも延々掘れる訳でも無かったね。
そう思うと坑道で働いている人達のスタミナは凄いと思う。
この場所で採れたのは84kgほど。
更に奥へ降りて行き、ロックイーターの喰い散らかしを調べると、
ここでも143kg程収穫できた。
「ふむ、これくらい有れば儂の方は十分かな」
最終的に不純物を除去するから、実質136kgになるらしい。
「後は今後の費用の荒稼ぎに入りますか」
ロックイーターのいる周辺から岩屑の大量収集を始めた。
この作業に二日掛かってしまったけど、異空間倉庫はビクともしない。
採掘場長さん指定の砕石収集場で、岩屑を掻き出すにも結構時間がかかる。
ボタ山四つ分位はあるだろうか。
「ふう、今度は結構な量になったよ」
「あんた等の仕事はいつも豪快だねぇ、いっそオラんとこに就職しないか?」
採掘場長さんは就職も斡旋するのかな。
「ごめんねぇ、私等は冒険者やってる方が良いんだ」
「そっか、その気になったらまた来いや」
今回は一人頭金貨95枚の報酬を受け取った。
もちろんワイズマンさんにも配当は有る。
隠遁生活中の彼には収入が入ったのが嬉しいようだ。
仕事の打上げ会に酒場へ行く。
「う~ん。久しぶりに働いた気分だな。仕事の後のビールが旨いんだよ、これが」
ゾルックさんは渇いた喉に冷えたビールを流し込む。
実に美味しそうだけど、私達には苦いだけで美味しさが解らないんだよね。
見るとイモータルワイズマンさんも一緒になってビールを煽っている。
ビールが何処に消えていくのか骨の体だから解らないけど、周りに何か付いてるから大丈夫なのかな。
「儂の方もビールは久しぶりなのだな。
力仕事して汗をかいた後なら尚旨かっただろうになぁ」
お金が入り気も大きくなった二人は、上機嫌で呑み明かしてグダグダになる。
まぁ、あれほど呑んでも金貨一枚に届かないから安いものだけど。
二人が酔いつぶれる前に宿をとる事にした。
男二名、女三名の二部屋。
宿は安宿だから、防犯はかなり甘い。
寝静まった客室から盗みを働こうと不埒な輩が忍び込んできた。
不幸にも忍び込んだ先は、ゾルックさんとイモータルワイズマンさんが泊まっている。
……この街の宿は警戒心が薄くて助かるぜ。
足音を忍ばせて部屋の中に入り、金目の者を物色しようとした。
暗がりの中に何かがいる。
よくよく目を凝らして見ると、危険極まりない者が目に入る。
背筋に冷たいものが走り、恐怖で体が硬直しそうになった。
「う、何だこれは」
部屋の中には、
壁にもたれ掛かって寝ているゾルックさんと、
床に転がって寝ているイモータルワイズマンさん。
「魔族じゃねえか、しかも白骨死体が転がってやがる。
誰か魔族に食われたのか? 気付かれたらヤバイぞ」
恐怖に駆られた盗人は急いで脱出した。
宜しくない目的で忍び込んだから、事を大袈裟にする事は出来なかったのは幸いだった。
翌日はドワーフの店から、イモータルワイズマンさんは何か買い物をしている。
盾製作にもう少し材料が欲しかったらしい。
ゾルックさんは土産に酒を一樽購入した。
多分、帰りの気球の中で呑む気だろうな。
私達は適度な食料を買い込み準備は終わった。
街を出て、先日着陸した場所で気球の用意を始めると、
探索に残っていた人が、気が付いて集まって来る。
「おい、あんな物どこに隠してたんだろうな」
「ああ、俺たちじゃ見つけられなかったのによ」
感心されたり、不思議がられたりしたけど、
幸い寄って来て邪魔する者はいなかった。
かくして私たちは、再びスルトヘイムへ向け出発した。




