91「ファヒテバルの街へ」
一か八か、はたまた伸るか反るか、
この危険な光のダンジョンアタック、先に進むには避けては通れない。
タリマ達は腹を決めるしかなかった。
「決めましょうか、私はアタックに決める」
シレラは決断した。
「アタックに決めたなら、儂もパーティーに入れてくれんか? 研究の成果も見て見たいからな」
イモータルワイズマンさんもアタックに参加を希望する。
「わたしも」
「ミモもシレラに着いて行きたいのであります」
タリマもミモもアタックに挑戦する事に決めた。
「俺はお嬢さんたちを護らなきゃな」
ゾルックさんも追従する。
シレラ・タリマ・ミモの一行はゾルックとイモータルワイズマンを加え、
五名のパーティーとして光のダンジョンにアタックする事を決めたのだった。
しかしアタックの前に、もう一つ問題が浮上した。
磁性体塗料も全員にくまなく塗るには量が足りない。
試作品の盾も一つしかない。
盾は全員の手の数を合わせると、14個は必要になる。
重要な材料として磁鉱石が必要だ。
魔界では磁鉱石が手に入らない。
手に入る可能性が一番高いのは、鉱山の街ファヒテバル。
そこの場所はスルトヘイムからは遠い。
海だって往復で越えなければならないという難問が立ち塞がった。
「あ~あ、空を自由に飛べたらなぁ」
ゾルックさんはぼやく。
「私たちも磁鉱石って、どんなのか解らないのであります」
ミモも頭を悩ます。
「方法は無い事もない。儂も同行するのだ」
イモータルワイズマンさんは提案する。
彼の研究品の中には熱気球がある。
但し、火系魔法と風系魔法が無いと使い勝手は悪いと言う。
魔法はイモータルワイズマンさんが使う事が出来る。
人の中に入るには、素顔では不味いから仮面も用意すると言う。
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熱魔法で巨大な袋に熱波を入れていくと、やがて袋は膨らみ始めた。
パンパンにはち切れんばかりに空気が入る事は無い。
気球の下、わたし達の頭上に袋の穴がある。
その穴に袋に穴が開かないように熱魔法を打ち込むだけで浮き上がった。
後は空気が冷えないように、時々熱魔法を打ち込んで様子を見なければならないらしい。
地上の風景はみるみる小さくなり絵画のような感じに見える。
不思議と揺れも騒音も無く、安定して空を移動して行く。
「船酔いしなくて助かります」
空中じゃ移動の速度って、あまり体験出来ないんだね。
下に見えていた景色が、いつの間にか後方に行ったとしか言いようが無い。
私達が乗るゴンドラは植物を編み込んで作った物だと言う。
五人も中に乗っているけど、窮屈じゃない大きさだった。
風魔法で方向操作するイモータルワイズマンさん以外はする事がない。
私達に出来る事といったら、食事を楽しむ事だけだね。
そんな具合に気球の旅は快適だった。
やがてファヒテバルの街がある山々が見えて来る。
空の旅行って、思ったより早く移動出来たんだね。感動した。
実際伝書鳩レースにしても、鳩の速度はトンでもない速さらしいし。
数百キロ離れた場所に山を越え、数時間で戻って来ると言う。
空の上は曲がりくねった道が在る訳じゃないから、
障害になる物が無くほぼ一直線に行ける訳だ。
ファヒテバルの街近くになって、気球の上部から空気を抜いて降下を開始した。
落下速度ほど早くはない速度でゆっくり地上を目指していく。
操作が上手いのか、着地の時の衝撃はかなり少なかった。
ドスン!でもなくドンと言うか、トスン!といった感じかな。
「おっし! 無事到着だな」
大きな気球が、いきなり街の中に降りる訳にはいかないから、
街の外、なるべく近場に着地した。
やたらと人目に晒して盗まれたら大変だし、帰りにも必要になる熱気球だから、畳んで仕舞っておかないと。
空気を抜いて気球を畳んでダンジョン倉庫に入れる私達を、イモータルワイズマンさんは驚愕の目で見ている。
眼球が有るようには見えないんだけど。
「…ダンマスの能力とは、こういう事も出来るのか…」
「おうさ、ワイズマンの旦那、俺も驚かされっぱなしなんだわ」
男衆は呆然するばかりだね。
私達も気球には呆然としたけど。
街へは歩いていく事にした。
それほど遠くないし、馬車を出すのがめんどい。
街に向かって歩いていると、街の方から30人ほどの人達が駆けて来るのが見えた。
「おおい、こっちの方だ」
「どこだ? 何処に降りたんだ」
「駄目だ、見つからねぇ」
皆口々に叫んでいる。
残念でした、気球はもう畳んで仕舞っちゃったんだよね。
どこ探しても見つからないと思うよ。
たぶん街の中も、見慣れない物が来たって大騒ぎしてるんだろうな。
街中は思った通り、気球の噂でごった返していた。
まぁ、この世界そんなの飛んだのは珍しいからね。
それはそれとして、私等は磁鉱石を探さなくちゃ。
先ずは鉱石採集場へ行ってみる事にする。
あそこなら沢山集めて山になっているから、有るかなと思う。




