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90「イモータルワイズマン2」

「ふむう…、ダンジョンマスターにはそれほどの能力がねぇ…」


さすがの賢者にもダンマスの謎は解き明かせなかった。

現時点ではまだ情報が足り無すぎるのが原因だ。

しかし、それを知る術は今の所皆無。



その代わり、光のダンジョンについては詳しく知っていた。


「光のダンジョンは正に光の地獄ぞ」


「光の地獄?」


「地獄って暗い所かと思ってたであります」


シレラ達はキラキラ光るオーロラのようなダンジョンをイメージしていたけど、実際はそうではないらしい。

荷電粒子やプラズマが吹き荒れ、球電やブラックドッグ、ウィルオーウィスプ等が襲って来ると言う。

ブラックドッグは周りが強い光で明るいから黒く見えるが、生きて動くプラズマの怪物だ。


「荷電粒子? プラズマ? 球電? 何の事か解らないけど」


シレラ達にとっては、ウィルオーウィスプなんてスライムに並ぶヒトダマの雑魚魔物だと思っていた。

しかし光のダンジョンの中では別物だという。

光のダンジョンの中のウィルオーウィスプはプラズマの塊だそうだ。


同じくプラズマの塊であるブラックドッグは、石を投げると爆発するとの事。

石で爆死する魔物ってなんだそりゃと思うけど、爆発する魔物なんてそうそういない。

剣で戦おうにも、金属の剣に飛んで来て感電して体の中から焼かれてしまう事になる。

音よりも速いから、逃げようにも逃げられないと言う。


「ひえ~」


「恐い」


「プラズマって?」


空気が荷電を帯び、固体、液体、気体以外の第四の形態になった物がプラズマで、

落雷が空気中を漂うのが、球電になるという説明を受けた。

光も強く、裸眼で入るとすぐに目を焼かれ失明してしまうのだとか。


「一筋縄には行かないんだな」


「とんでもないダンジョンがあったもんだ」


話しだけでゾルックさんは冷や汗をかいている。




「とにかく常人が無防備で入れる所ではないのだな」


イモータルワイズマンは語る。

遠い昔、イモータルワイズマンがまだ不死の体になる前に、彼の仲間が光のダンジョンにアタックを計画した。

しかしそのメンバーは、入り口で瞬時に全滅してしまった。


それほどまでに危険なダンジョンに挑むには、生身では不可能だ。

ならば不死の体を得ればどうだろうと、不老不死になる研究を始めた。

魔物の中には死後も生きて活動する者がいる、そうアンデッドだ。

生きている死者とも言うべき魔物の体を得ようと彼は研究をした。


やがて研究は実を結び、アンデッドの体を得る事に成功した。

しかし不死の体を得ても、光のダンジョンの中では保ちそうには無い事が解った。

生きている死者アンデッドだって死ぬ事があるのだから。

アンデッドの体が焼き尽くされ、灰になってしまっては再び死ぬしかないのだ。


魂の寄り代である死者の体が保たなければ意味が無い。

ゴーレムでさえ強力な電磁力で、体内の魔法器官を狂わされてしまう。

何人たりとも光のダンジョンは、侵入者を許さず何もかも焼き尽くす。

故に光のダンジョンは前人未到の最凶ダンジョンだと彼は判断した。



それでも彼は光のダンジョンを攻略する事を諦めていない。

どういう装備があれば踏破出来るのか研究を続けて来た。


『荷電体は如何にすれば避けられるか』


荷電体とは何か、電磁場とは、それらはどういう性質を持つのか。

鉄の剣は荷電体に触れると、電流が流れ電磁場を発生する事を突き止めた。

鉄の芯に銅の線を巻いた方が、より多くの電磁場を発生できる。

試行錯誤の末、電磁場を展開して身を守る方法に至った事を語る。


荷電体であるプラズマのダンジョンだ、電流は空間からいくらでも受ける事が出来る。

ならば、もっと効率良く大きく電磁場を発生させる事が出来れば良い。

その理論の下、試作品開発をたった一人で研究開発をしてきたのだ。



イモータルワイズマンは部屋の奥から試作品を持ち出してきた。


電磁フィールドを発生させる盾。

ダンジョン内の電荷を大地に流す鎖。

体に塗る磁性体の塗料。


「これらは実地検証はまだ行ってはいないから、安全の保証は出来ないのだがね」


光のダンジョンの入り口は、スルトヘイムの山で一番高い山の頂上に出るが、

ある条件が整わない限り、入り口は見つけられない。


「じゃあ光のダンジョンに行けないのでありますか?」


「大丈夫だ、その条件は儂が知っている」


「そっか、イモータルワイズマンさんは行ったんだよね」



シレラの感だと、光のダンジョンの彼方に答えに近づく何かが在るに違いないと告げている。

ここは引くか、進むか、どちらかしか選択肢は無さそうに思える。


「虎穴に入らずんば虎子を得ずかぁ」


さて、どうする?

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