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86「ズンナ翁2」

セスァレナの街に魔族が三人やって来た。

彼らはトゥラザト一族ではない別の流浪の一族の者だった。


人族から恐れられる彼らを迎え入れる街は無い。

未来の見えない苦しい流浪の旅、食料にも事欠く暮らしは彼等を荒ませていた。

旅人を見れば、襲い、殺し、奪う。

そんな事を繰り返して来た魔族の者達。

セスァレナの街は、そんな彼等の目に止まってしまったのだ。


略奪目的で街に侵入しようとした彼等を阻む者達がいた。

見た目は人族じゃない、彼等と同じ魔族の者達。


「何だぁ?オメエらは、俺達と同じ魔族じゃねぇのか?」


「ここはお前等の縄張りだってのか?」


「俺たちの邪魔をするってんなら、同じ魔族だって容赦しねえぞ」


魔族たちは不満や脅しの文句を口にする。


「待て! 我等はトゥラザト一族だ。 お前等は何処の一族だ?」


トゥラザト一族、聞いた事があった、彼等と同じ頃魔界を脱出して来た一族に

その名を聞いた事があった。その程度の認識でしかなかったが。


「我等はここセスァレナの街に、迎え入れられ定住出来ている。

 我らも流浪の者だったから、お前達が荒れるのも理解している。

 だが、この街で暴れるのは止めて欲しい。

 食料なら我等が都合つけてやろう、どうだ?」


対応に出たのはトゥラザト一族の元副団長をしていたフォット。


街にやって来た魔族はウンラー、グタド、ケフダーの三名。


「トゥラザト一族、聞いたくらいはある。俺達はトゥシァバ一族だ」


「食料をくれるだと?」


「お前達がこの街に定住しているだって? 支配したのか?」


「あんたがトゥラザト一族の団長か?」



「団長は今旅に出ている。俺は団長の代わりをしているフォットという者だ」


見ればフォットは良い身形をしている。

彼の言うには、この街を支配しているのではなく、受け入れてもらっていると言う。

魔族が人族に受け入れられていると言うのは信じがたい話だった。

こいつ等は流浪の旅を終らせ、街に定住している。

トゥラザト一族を羨ましいと思った。


「なあ、同じ魔族のよしみで俺達もあんた等の仲間に入れちゃくれねぇか?」


「仲間にか、そうだな……。

 我らの鉄の掟や街の決まり事を守るなら、話を取り次いでも良いが」


トゥシァバ一族がトゥラザト一族の鉄の掟を守らなければならないという事は、

トゥシァバ一族はトゥラザト一族の下につく事を意味していると彼らは考えた。

我らはトゥラザト一族の(しもべ)になるのが条件なのか。


そう考えたウンラーは渋々と返事をする。


「しばらく一族の仲間と相談させてくれ、返事はそれからだ」


「お前の言う鉄の掟とは何だ?」



「我らの鉄の掟とは【街の人から魔族は恐いと思われるな、気の良い隣人となれ】だ」


「え?」

「え?」

「え?」


何だそりゃ?

ウンラー達は面食らった。


「他にも決まり事は有るが、街のモットーに和合を以って尊しとすべしと言うのがある。

 守る気になったら俺を訪ねて来るが良い。

 嫌だと言って攻めて来るなら、我らトゥラザト一族がお前達の敵に廻る」


「そうか、俺達は族長と話し合って来る。また俺達と話をしちゃ貰えまいか」


「良き付き合いになれる事を願っているぞ」


三人の魔族たちは暴れる事無く街から去って行った。






「ズンナ様、ミモの衆の人が戦う事無く魔族を説得で撃退した様子ですよ」


「うむ…。儂もこんな状況を初めて見たわい。

 ミモの衆とは、もう魔族じゃないのかも知れぬな」


「私は早くこの事を里の皆に話して聞かせたいと思いますよ」


「良くぞ言ったエメスナ。 これが見聞を広めるという事ぞ」


この街の神殿で祀られている六本腕の女神は、多くの手で遍く衆生を救うという言い伝えを聞いた。

今見た様子だと、本当に女神の威光が在るのかもと思わせる。

降臨した女神とは、あの時のポンチョの娘じゃなかろうかとも推測出来るが。

まだまだ残る謎にズンナ翁の好奇心は膨らむ一方だった。


「世の中というものは、面白く飽きないものよのぅ」





後日、トゥシァバ一族の一同が再びセスァレナの街を訪れ、

街長や神官達、街の有力者や識者達と話し合いの場が作られ協議が始まった。

トゥラザト一族のこの街での今までの功績も大きく、信頼もあるから話し合いが難航する事は無かった。

話し合いの末、トゥシァバ一族280人もこの街に受け入れられる事になった。

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