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84「魔界へ」

ゾルックは魔界へ向けたこの旅で、彼女達に良い所を見せてやろうと気張っていた。

一族の流浪の旅を終らせてくれた恩人達に恩を報いてやろう。

夜だって寝ずの番を一手に引き受けてやろう。

獣や盗賊に襲われたって、俺が退治してやる。

トゥラザト一族の意地と、如何に俺が頼りになるか見せてやろうじゃないか。


そんな彼の思いは敢え無く打ち砕かれる。


ゾルックは驚嘆した。

タリマのダンジョンマスターたる能力に。


膨大な食料もモンシェナと呼ばれる子馬も道具や資金までもが、

馬車ではなく、タリマが創りだした異空間倉庫に仕舞われ、

馬車の中にはそれほど積荷が載っていない。



旅路はやがて夜を迎える。

よし、今日はここらで野営だな。

そう思っていると。


「ゾルックさーん、泊まる所創ったよ、ゾルックさんは一番奥の部屋ね」


三部屋のダンジョン空間が出来ていた。


へ? ゾルックは呆気に囚われる。


入り口に一番近い部屋は馬と馬車が仕舞われる。

後は、女子の部屋とゾルックの部屋。

部屋の中では焚き火も出来るし、適当な所で毛布に包まって寝て構わなかった。

この中では、誰も寝ずの番をしなくて良いのだ。

入り口を閉じるから、盗賊や獣の心配も要らない。

これが彼女達が大八車の旅で何一つ不便をしなかった理由だった。


俺の見せ所が何も無いじゃないか。

そういう意味での落胆と、それなりの快適な旅だった。

これがダンマスの能力なのか……。



途中で狩をして食料の調達の手間は無く、

やがて一行は海辺の街セーズルアに到着する。


ゾルックは筋骨隆々の大男である上に、背中に翼がある。

頭には羊のような角。

セスァレナの街以外では魔族と騒がれるのはまずいから、

ミモのようなポンチョを着、頭を覆いのあるターバンで隠す。

背中の翼は布で包み、荷物を背負っているかのように装っている。


次にはこの街で交渉をして船を頼まなければならない。

帆のある船なら、一ヶ月位で魔界のある大陸へ着けるだろう。


来る時使った帆も無かった難民船は遭難したり難破したりで大変だったな。

ゾルックは苦しく辛かった過去を偲び苦笑いをするしかなかった。


一行は港湾施設のある埠頭で、二本マストを持つカラベル船の船長と話を付ける。

話し合いの場所は酒場だった。


「何だって?魔大陸へ渡りたい?あんた等の安全の保証は出来ないぜ?それでも行くのか?」


渡航の建前は、私達四人だけという事にしてある。

馬車や荷物は異空間に隠してるからね、問題ナッシングよ。


渋る船長に、片道金貨10枚で無理を通してもらう。

甲板は作業の人が忙しく動き廻るから、出来るだけ船室から出ないようにと念を押された。

但し、絶対に出るなとは言われない。

どうしても甲板から海に身を乗り出さなきゃならないアレがあるからね。

そう、船酔い。

船に慣れない人は大抵酔ってゲロる。

そこまでは禁止出来ないからしょうがない。


しかし、この船長さん昼間なのに良く呑むね。

ゾルックさんも場の雰囲気を和らげるために一緒に呑んでいるし。

ここの酒代も私等持ちなんだけど。



そして私達の船酔いの旅が始まる。

う~ん、これはキッツイ。

私もタリマもミモも吐くだけ吐いて、船室で横になるしかなかったね。

そりゃもう女子力ダダ下がり。

ゾルックさん一人平気な様子だけど。


そんな旅が一ヶ月続いた、

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