83「出発の準備」
次の目標は決まった。
【魔界】だ。
ここで言われる魔界は異次元にある訳じゃない。
何処かに隣接しているかと言えば、それも違う。
正確には隔絶された大陸にあるという話だった。
海を渡らなくちゃならないらしい。
そして私達は、そこへ行く道筋を知らない。
かなりの難問だね。
しかも結構危険な場所だとも聞かされた。
しかし、そこに行かなくちゃ件の賢者に会う事が出来ない。
出発するに当たり、老いたロシナンテはミモのお母さんが預かってくれる事になった。
ミモのお母さんの下で、老後の余生をのんびり送って欲しいと思う。
ゾルックさんは私達の車の小ささに呆れている。
何せ大八車だ。
馬車と言うには小さすぎる。
感覚的に例えるなら、軽自動車に乗っていたようなものかな。
魔界に行くなら、大型SUVの方が都合が良いのは、言われなくても解る事。
長旅に耐える頑丈な馬車と馬を用意してくれる事に決まった。
食料や水、野営用の道具の量だってハンパじゃない。
それは大丈夫なんだけどね。
だから馬車はやたらと大きくなくて良い。
そして道に明るくない私達を案内兼護衛で、ゾルックさんたち数人が付いてくれる事に。
そこまで何もかも協力してもらうのは心苦しいんだけど。
そう思っているとゾルックさん達は言う。
「ぜひ協力させて欲しい、貴女方は我らの恩人だ、恩返しをさせてくだされ」
強面の人に詰め寄られると引き難いものが有るね。
あちらは真摯に協力したがっているけど、顔が恐い。
馬車での移動を最短ルートを通れば、何十年も掛かるというものでも無いそうで。
問題は船に乗る関係で、馬車を預かってもらい、向こうでまた馬車を買わなくちゃいけない。
あ、それは私ら何の問題も無いんで。
差し当たって海辺の街セーズルアへ直行し、船をチャーターする計画が上がる。
こちらに渡った時の船は、長い事風雨に晒され使い物にならないだろうと予測される。
皆で協議した結果、来てもらうのはゾルックさん一人。
馬車は一頭立ての幌付きの中型馬車一台。
これくらいなら、過剰サービスに心が痛むのを軽減出来る。
ゾルックさん達はかなり心配してくれる。
ダンマスの力を知れば、考えも変わるでしょう。
危険な場所だって、こちらには一軍を凌ぐ戦力が有るし。
その晩は送り出し会が開かれた。
何事かと街の人が何人か集まって来た。
気の良い人達で、路銀を集めてくれた。
その上、神官達からも資金提供があった。
安全に事欠かない様にとの配慮だ。
「危険な旅で、来年これなくなる事が無いように祈っております」
神官達は本気で旅の安全を願っている。
それもこれもゾルックさん達が、街の人達から認められる努力をして来たからだろう。
こちらも頭が下がります。
翌日、私達は見送られ町を出発した。




