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82「セスァレナ再び」

セスァレナの街へまたやって来た。

暴動寸前のところを智の迷宮の力で誤魔化して脱出したんだよね。

だから今回無事に街に入れるだろうか、おっかなびっくりで入る事になる。


しかしこの街は以前と違う風景が。

そう、所々に魔族の人がいたりする。

冒険者に依頼を出したのが実を結んだのが判る。

難民魔族たちはこの街に定住出来た様子がうかがい知れる。


宿を取るのが先か、神殿へ行くのが先か。

そんな事を考えながら、広場の方へ近づいた時、

一人の魔族の男がこちらに走り寄って来る。

旅団の団長をしていたゾルックさんだ。


他の人達にも情報が伝わった様で何人か集まって来る。


「よくぞ参られた! 我ら一同貴方様方に感謝をしているのです。

 貴女様方を歓迎しますぞ」


口々に謝辞を語りだす。

日頃人から感謝されるような事をしていないから、身の置き場が無いよ。


私達は、この街で一番高級な宿に案内された。

そこで改めてゾルックさんやミモのお母さん達と話をする事になった。


この街では彼等を魔族のトゥラザト一族と言う人はいない。

神殿でミモに似た神像に祈りや、感謝を捧げる彼等を見る街の人には、

同じ神に祈りを捧げる信心深い人達だと思われている。

時折口に出されるミモという言葉で、彼等はミモの衆という認識になってしまったらしい。

それについては誰もトゥラザト一族という事にこだわりは持っていなかった。

そのため、彼等を魔族とかトゥラザト一族という認識は薄れ始めている。

彼等も魔族ではなく、セスァレナの街の一員になりきろうと頑張っている。


そして彼らは鉄の掟を制定したと言う。


【街の人達から魔族は恐いと思われるな、良き隣人となるように努力せよ】


それが彼らの鉄の掟だった。


酒場では気前良く振る舞い、良く笑った。

気軽に話しかけられる彼らは街の人々に馴染んでいく。

今では神殿の衛兵を務める者も居るらしい。

その姿はおもちゃの兵隊のようで微笑ましいとか。



シレラは今回の訪問の事情を話すと、ゾルックさんは言う。


「魔界で噂を聞いた事がありますぞ、その賢者は何処かに庵を構えたという」


あれ?

ゾルックさんは件の賢者の事を知っている。


一族が魔界から脱出した頃は、ミモはまだ物心が付いていなかった頃だったらしい。





翌朝、シレラ達の来訪を聞きつけた神殿の神官達がやって来た。

一年後の約束にはまだ早いが、冒険の旅の都合が有るだろうから、

今回の来訪は又と無いチャンス。

故に時期を前倒しして例のイベントを開催したいと願われた。


シレラとしては、神殿の教典の内容を見てみたかったから、

教典を見せてもらう条件でミモに賛同を得た。


【女神チャンディー・ヴィカラーラ様、再び降臨! 女神様からの祝福を】


そんなキャッチフレーズを揚げ、今回は広場を蓮台に乗って廻ってもらう企画もあるとか。

更に最後に一言挨拶も頂ければという事らしい。

正に客寄せパンダだね。

ミモの喋り方で大丈夫か?



民衆からは生きて実在する女神に見えた。

そりゃ六本腕の女性って、ここには女神しか居ないからね。

蓮台に乗って広場を一周すると、感極まった人たちから歓喜の声が上がる。


そして最終日、何か挨拶の言葉を言わなくちゃ。

ミモは上がりに上がって考えた。

そして神官たちの恩枠を越えて、偉そうな事を言ってしまう。


「皆さん、お集まり頂きありがとうなのです。皆さんに於いては和合を以って尊しであります」


おお、和を以って尊しと為す。

聖徳太子の言葉だっけ。




おおおおおーーーーー!!




人々は過剰な感動の渦に巻き込まれたようだ。


【和合を以って尊し】


神官には神託として響き、街のモットーとして受け入れられた。



「ミモ様、本日は有難う御座いました。出来れば来年もまたお願い出来ませぬか?」


神官も感動の渦に巻き込まれたようだ。目がウルウルしているからね。


そして私達は約束通り教典を見せてもらった。

しかし、魔界の賢者についての手掛かりは無かった。

やっぱりゾルックさんの情報が一番信憑性が高いね。

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