76「リザードマンの街」
私達って皆剣を持ってはいるけど、実は誰も習った事無いんだよね。
冒険者だけど、剣士じゃない。
かと言って丸腰って訳にもいかないから剣を持っている。
扱い慣れてれば無手勝流でもと、たまには振って練習をしたりする。
ミモの場合、六刀流+暫馬刀+モーニングスターだから、どうすりゃ良いのか解らない。
そんなの教えられる人っているんだろうか、きっと無理だよね。
そんな事を思いながら、街道をそれた草むらで剣を振っていた。
いつの頃か、そんな私達を見ている人がいる。
爬虫類人族の剣士、種族はリサードマン。
微笑ましそうな顔をしている。
素人娘達が剣を練習してるのが見えたから、見物に来たらしい。
中でもミモに興味があるみたいだ。
何せ六本の腕で六本の剣を振ってみたり、2m以上もある暫馬刀を振ってるのだから。
そんな剣士は他に見た事は無いのだろう。
いや、普通いないよね。
「おじさん、こんにちはー」
出来れば教えて貰えないかなー。
そんな気持ちで挨拶をする。
彼は良い人だった。
名前はゴヴァン。
剣の太刀筋は基本六つあると言う。
左袈裟斬り・右袈裟斬り・横薙ぎ・打ち下ろし・振り上げ・突きの六つ。
剣の打ち合いと言うのは、この六つの太刀筋の掛け引きだと言う。
剣戟はいかにして掛け引きで勝利するかが問題になる。
そのために人同士で練習が必要なのだと教えてくれた。
そんな彼でも、六刀流はどうしたら良いのか解らないらしい。
六つの太刀筋の六乗分ある太刀筋は捌きようが無いらしい。
見た目もトリッキー過ぎるし。
それは二刀流にも言えるかな。
まあ、私達は痛い思いするのは嫌だから型ばかりを練習する事になる。
基本、獲物が狩れれば良いんだから。
「良ければ我が街の剣術道場を見学してみるかね?」
ゴヴァンさんはリザードマンの街を案内してくれると提案してくれた。
リザードマンという種族は狩猟と戦闘が得意らしい。
言われてみれば、農耕するリザードマンとか、商人のリザードマンとか、
工芸品を作る職人のリザードマンなんて聞いた事がないな。
つまり、典型的な体育系の脳筋種族ってか?
そもそも爬虫類って肉食獣だ。
爬虫類人のリザードマンも基本的に肉食だろうと想像できる。
と言う事は、リザードマンの街では、美味しい肉料理が豊富なんじゃ?
絶対に居ないよね?菜食主義者とかヴィーガンのリザードマンなんて。
ゴヴァンさんの住むリザードマンの街の名はヒオグゲグ。
言われるように、戦士の姿が多い。
他種族との交流だって有るから、街の中はリザードマンしかいないという事は無い。
体育会系の文化と言うだけで、それなりに文化はある。
野蛮人じゃないんだよね。ゴヴァンさんだって結構紳士的だし。
ワニだって鳥が乗ってても追い払わないようだから、やたらと襲う事はしないだろうし。
肉食種族だろうけど、それなりにも平和を愛する種族かもしれない。
剣術道場へ見学に来た。
リザードマンというのは、元々体表が硬い。
それでも木剣で打たれれば痛い。
場合によっては骨折だって有り得る。
そこで頭や腕に布を何枚も重ねて防具にしている。
実戦だったらきちんとした防具を着けるんだろう。
今回見学する稽古は年少者が多かった。
こうやって子供の頃から鍛えるんだから強いよね。
他種族の子供も居るけど、リザードマンの子供は頭一つ分は強い。
ゴヴァンさんの紹介と勧めで、道場の子供達の練習に混ぜてもらえる事になった。
私達は残念ながら、小さい子供達に勝つ事が出来なかった。
面白いゲストとして、ミモの六刀流や斬馬刀の演舞を披露する事に。
無手勝流だから、人に見せられるような物じゃないけどね。
例えば二刀流で、二本の腕で剣を持つ膂力で一つの剣が振るえるなら、
6×6で36通りの太刀筋で対応出来る。
6通りの太刀筋で36通りの太刀筋に対応するのは確かに理論的に厳し過ぎる。
で、六刀流ともなれば、6×6×6×6×6×6で46656通りの太刀筋になる。
46656通り対6通り。
計算上では絶望的な差だね。
道場の上級生が試してみた。
対するミモは無手勝流の素人。
結果はミモの圧勝に終った。
全ては計算通り。なんちゃってね。
対人戦を始めて見たけど、威力の凄さを実感した。
次いで多対1で対応すると、後ろに回り込まれた子にパシパシ叩かれて、
ミモは簡単に音を上げた。
弱点は在ったか、しかも打たれ弱いと来たもんだ。
気も弱いけど。
道場生達の尊敬の眼差しを集めつつ、私達は食事に行く事に。
想像した通り、肉料理のレパートリーが豊富だった。
資金は無い訳じゃないから、ちょっと贅沢をする。
ハンバーグとステーキが一緒になったセットを頼んでみた。
ナイフを差し込むと、肉汁がジワ~と染み出してくる。
上に掛かったデミグラスソースも絶品。
野菜が少ないのは物足りないけど。
上手い、
上手いよ~。
口の中に幸福が広がる。
三人で夢中になって食べた。
一人、静かに、豊かでなんて言ってられないよね。
表の露店で更に肉ダンゴも買って食べる。
次には鳥の唐揚げも狙ってみようか。
今日はもう、お腹に入りそうにない。
さすが肉食種族の街、肉料理の美味さは他の追随を許さない矜持があるよね。
今回の話は正に飯テロ回だな、草生える?




