71「アルバイト」
私達はレベリングしながらも、やっとファヒテバルの街に到着した。
この街はドワーフの工房がある事で有名な町だ。
人族以外にドワーフ族が住まう山間の街。
山間に在る理由は、鉱山があり、良質な鉱石が産出されるからだ。
その鉱石を使ってドワーフの匠達が剣や防具を作っている。
その剣や防具を商人達が買い付けに訪れる。
そして買い付けに訪れる商人達は人族ばかりじゃない。
エルフ族や他所から来るドワーフ族もいれば、獣人族だっている。
雑多な種族が闊歩する街だからミモもそれほど悪目立ちはしないだろう。
そんな算段もあるし、もう少し良い剣や防具だって欲しい。
それでこの街にやって来た訳だ。
宿にロバと車や荷物を預け、店々を覗いて回る。
いわゆるウインドショッピングってやつだね。
買わなくても、見て歩くだけでも楽しい。
「あ、あれ、兜があるよ」
角や棘が付いてる兜だったら、ミモの角は誤魔化せるかな。
某世紀末覇者が被っているような兜。
そう考えながら、ミモを見ると。
「兜なんて頭が蒸れそうでイヤでありますなぁ」なんてぼやく。
そんな事言われても、戦闘時に頭守らなくて良いんかい?
どうしてもと言うなら鉢金という手もあるけど。
他にはレッグガードやガントレットも出来れば欲しい。
以前なら子連れの女が街中を歩いていると、禄でもない男に絡まれる事があった。
今は体がデカくなったミモが一緒にいるから、そういうのは来なくなった。
ポンチョの下で四本の腕を組んで隠しているから、余計に大きく見える。
そう、あそこに見える熊の獣人に匹敵するくらい。
タリマは露店で売っている美味しそうなものに目が釘付けだ。
旅の途中は甘い物なんて食べられなかったから無理は無い。
店で売ってるのは、カステラボールのようなお菓子。
甘い匂いが堪らないね。三人それぞれ30個入った袋を抱え、食べながら歩く。
目に付く服屋に入る。
ミモの服を何とかしなくちゃ。
何せ海のダンジョン内で倒れた冒険者から剥いだのを着ているから、大きくなったミモはズボンなんかツンツルテンになっている。
ズボンの裾は脛の中ほどくらいにある。
男物のズボンが七部丈の様になっている。
そんなファッションもあるとは思うけど、冒険者のファッションではない。
上の服だって問題だ。
以前のピンクのポンチョが残っているけど、今は胸元カバーのように。
だから、背格好に合う冒険に耐えられる丈夫な服を買わなきゃ。
腕の問題があるから、チューブトップの服になる。
無ければ私が何とかしなくちゃいけないけど。
ズボンにはナイフホルダーが付いている。
色々見て廻ったけど、それに決め店内で着て店を出る。
ポンチョを着てるから、新装が見れないのが残念ではある。
次にブーツを買う。
今のミモに合うのは男用の物しかない。
脛に鉄を貼った頑丈そうなのを買ってみる。
と来れば、次は剣。
剣や鎧兜というのは結構高い。
さすがに資金不足が心配になるほどに。
鉄の剣だって金貨3枚くらいする。
出来れば鋼の剣が欲しいところ。
それ以上の高級品はとてもじゃないが手が出ない。
私達は剣を鞘付きで合わせて8本は買いたい。
それを買うと資金の残りはカツカツ。
いや、宿屋や旅の食料や必要品を買うと赤字になる。
どうするか悩ましい所。
「お嬢さんたち、もし資金に困るってんなら鉱山でアルバイトしてみる方法だってあるぜ?
女の力じゃ無理が有るとは思うけど」
武器屋のオヤジが良さそうな情報をくれた。
鉱山のアルバイトが嫌なら、街の外で稼がなければならない所。
しかぁ~し、こちらには秘策があるのさ。
女には無理だろという顔をしている店のオヤジの言葉に従い、
冒険者ギルドへアルバイト申し込みに行こうか。
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私達は鉱山に入る事になった。
この世界で鉱山の採掘は力任せに穴を掘るだけではない。
ロックイーターという魔物がいる。
この魔物は岩石層を喰いながら、穴を掘り進む性質がある。
魔物が掘り進む坑道だから、計画された様な綺麗な掘り方はされない。
だから、坑道はダンジョンのようになってしまう。
当然、ダンジョンと来ればタリマの出番。
ロックイーター自体は凶暴な魔物じゃない。
岩石を喰う奴だから、肉食でも草食でもない、石食とでも言うのかな。
それでも命が危ないとなれば抵抗するから気を付けなけりゃ。
私達はカンテラで明かりを確保し、坑道をどんどん奥へ奥へと進む。
時々ロープに引かれる台車を見かけた。
採掘された重い鉱石は、こうやって運び出さないと量を持ち出せない。
所々に鉱石の集積所に山と積まれていた。
そこは休憩所としても使われる、いわば飯場と呼ばれる。
鉱石の採掘というのは、重い鉱石を運び出さなきゃならないから重労働だ。
いくら掘る作業を魔物がするにしても。
私達は更に坑道の奥深い所に降りて行く。
途中熱波が漂う溶岩溜まりが見えたりするが、更に降りていくと氷結する広場が見える。
屈強な男達が、ここで鉱石層を手掘りしている様子が見える。
台車の始発点はここにあって、積み込んだ台車と空の台車が交互に行き来していた。
ロックイーターが掘った坑道が更に奥へ続いている。
もう何km歩いて降りて来たか判らない。
外の様な景色の変化も乏しいから、時間の経過が解らなくなって来るけど仕方ない。
私達はロックイーターが造った坑道を降りて行く。
やがてロックイーターが見えてきた。
口と排泄部がある芋虫のような姿、目は無い。
喰い散らかしを残し、排泄部からも鉱石の屑を排出している。
鉱石を見れば、暗闇に薄っすらと青く光っている物や緑がかった光る物、赤っぽく光る鉱石が有ったりする。
これらのどれかがアダマンタイトなのかも。
それら鉱石をタリマが創った1部屋だけのダンジョンを倉庫として運び入れた。
やっぱり鉱石って重いものだわ。
少し運び込んでいるだけで大汗かくし、手や体が疲れでだるくなる。
手に力も入らなくなるけど、ミモはまだまだ大丈夫そう。
私達もSTやVTを上げなくちゃ。
ダンジョン倉庫が一杯になった頃、積み込み作業に音を上げた私達は地上に還る事にした。
何百トンあるのかね。
いくら有っても私達には重さは関係ないけど。
関係するのは出し入れする時だけ。
タリマのダンジョン空間は異次元にある。ポータルを開けばそれで良いだけ。
だから移動時は手ぶらで動ける。
とは言っても、帰りの上り坂坑道も辛かった。
だって疲れてるんだもん。
そこでタリマのダンジョンクリエイトで出口まで空間短縮する。
地上での搬出作業に力を残しておきたかったからだ。
地上に出ると、翌日の夕方だった。
集めた鉱石をどこに置けば良いのか聞いて、
早朝人目の無い時に集積場の空いた場所に降ろす事にした。
タリマのポータルを人目に見つかると面倒だからね。
「おいぃ、一晩でこれほど運び出したのかい」
集積場長のおっさんは目を見開いて驚いている。
普通なら、工夫が10人掛かりで三日は掛かる作業量らしい。
中にはアダマンタイト鉱石やミスリル鉱石など混ざっていると言う。
ホント、キツかった。
きついけど、力仕事は良い金になる。
一人頭金貨40枚の報酬を受け取った。
もう一回やれば、旅の資金はかなり余裕になるだろう。
もうやらないけど。




