67「ワイバーン」
しまったね、
昨日は二人のレベリングで一日を使っちゃった。
その日稼ぎが無いと、宿屋の費用とか食費、ロバの餌や道具代とか支払いが逼迫してくる。
さすがにレベル3や7の者をいきなり強い魔物が出るような所に連れて行く事は出来ないけど。
そんな訳で一日スライム相手に頑張ってもらった。
頑張った甲斐でレベル9になった。
そろそろ、少しでも稼げながら、二人がレベルアップ出来そうな狩場を探さないと。
そう考えて街から遠出してみた。
山の方へ行けば、もっと獣だって出るだろうし。
何とかなるかも知れない。
街道から外れ、ロバの引く車が通れそうな所をトコトコ入って行く。
木や草に覆われた獣道はロバは大変そうになってくる。
大八車とはいえ、荷物や人が載った車を引くのは更に無理になってくる。
そこでロバと車をタリマのダンジョンに仕舞って徒歩の移動になる。
少しレベルが上がったミモは音を上げる事は少なくなった。
もう少し鍛えて戦力になってもらわなきゃ。
草木を抜けて、少し開けた場所に出た。
やっと空が見える場所に出たのは良いけど、
山の方上空にワイバーンが飛んでいるのが見える。
「う! ヤバイね。見つからなきゃ良いけど」
ワイバーンっていうのはドラゴンの一種。
弱い方のドラゴンと言っても、一匹出ただけでも、
軍隊が動いて多数の被害を出しながら、撃退するのがやっとな奴だ。
私達のレベルじゃ手も足も出ないに違いない。
そんなのは火を見るより明らか。
息をひそめて飛び去るのを待つしかない。
空を飛ぶ猛禽は異常に眼が良い。
どこに獲物が逃げようと逃しはしない。
それはワイバーンとて同じだった。
小ぶりな森から出てきた三人を目聡く視界に入れている。
息をひそめ隠れているつもりの三人は、ワイバーンにとって敵じゃない。
三人は餌になる単なる小動物にすぎない。
上空を旋回しながら近づいて行く。
あれ!こっちに来るよ。
やっぱり見つかっちゃったんだ。
ヤバイ!
ヤバすぎる!
どうしよう。
もう100メートル位に近づいてる。
飛行の速度は速いから、走って逃げてもダメだろう。
かといってワイバーンと戦えるような装備も力も無いし。
近づくワイバーンにシレラは恐くて硬直する事しか出来なかった。
その時
「空に空気のダンジョン創った」
タリマのスキルが発動だ。
え?
空に空気のダンジョン?
そんなのも創れるの?
なにそれ。
空では動きが阻害されたワイバーンがジタバタしてる。
飛翔でダンジョンから出られない様子。
「落とし天井!ダウンバースト!」
え?
空で落とし天井?
何も無い空中なのに?
いつの間にか上空には巨大な積乱雲が形成されている。
その巨大な積乱雲から、密度の濃い空気の塊が凄い圧力で落とされる。
DodooooooooGWooooooooooo------
強烈な爆風がワイバーンもろとも地面に叩きつけられた。
地表に叩きつけられた空気の塊は爆風となり、周囲の木々を薙倒す。
爆風は風速60mといった所か。
爆発並みの威力だった。
巨大なエアハンマーで地面に叩きつけられたワイバーンに為す術は無い。
飛行機ですら落とすダウンバースト。
何者だろうと逃げる術は無いだろう。
一撃でワイバーンはお陀仏になっていた。
土埃が過ぎ去り、倒れた木に必死にしがみついていたシレラは我を取り戻すまで時間を要した。
産まれて初めて体験した爆風。
良く生きてたもんだと思うしかない。
そうだ、タリマは?ミモは?大丈夫?生きてる?
我に返ったシレラは二人の安否に気が行くようになった。
「うっひゃー! 凄まじい術でありますなぁ……」
ミモは助かったようだ。
そして術の発動者のタリマは動じていない。
タリマのスキルレベルはどれほどか知らないけど。
スキルを使ってもレベルは上がらないようだ。
三人は埃やゴミを叩きながら集まった。
ワイバーンは6mをゆうに越える大物だ。
売ればかなりの金額になるだろう事は想像に難しく無い
故にギルドに持ち込んだら素直に換金してくれるだろうか。
売るとなると悪目立ちするだろうなぁ。
ワイバーンはタリマの異空間倉庫に収納して街に帰る事にする。
今日は大物過ぎる大物が狩れてしまったから、後は何する気にもなれなかった。
普通ならシレラ達のギルドレベルで狩れるような獲物じゃない。
もちろん街にいる冒険者たちでも似たか寄ったかの連中だし。
「な! なんだってー! ワイバーンを引き取ってくれだってー?」
「おい、ワイバーンだと。 誰だ?誰がそんな大物仕留めたんだ?」
「まさか、あそこにいる姉さんじゃないだろうな?」
そう、子供連れの女がワイバーンなんて誰が狩れると考えよう。
「いやね、幸運にも死んでたワイバーンを拾っただけなのさ~」
適当に誤魔化す。
案の定、冒険者ギルドで悪目立ちしてしまった。
ワイバーンは金貨200枚になった。
今後の事を考えると、早々に街を出た方が良さそうだ。




