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61「出会い」

私は冒険者をやっている。

名をシレラ・サーリドという。


当初は仲間10人で、今いるダンジョンを攻略しに来た。

しかし罠に嵌り一人、また一人と仲間を失い、

ダンジョンの中に徘徊する魔物にも仲間を倒され、

這々の体で逃げている内に私一人だけになってしまった。


荷物や食料も乏しい状態で、マッピングする仲間も失い、

ダンジョンの中を彷徨っている。

どこへ向かえば出口に近づけるのかすら判らない。


ただひたすら魔物に出会わないように願うしかない。

一人だけで、武器も腰に帯びている剣だけが命を繋ぐ頼りだ。

魔術師の仲間もいない今、私一人でダンジョンを踏破するには大分心許ない。

手に持つ松明も後いくらも持たないだろう。


そんな警戒と緊張の末、目の前の小部屋へ踏み込んだ。


六畳間ほどの広さの小部屋だ。




そこに少女が一人いる。




私の目の前にダンジョンの中という場所に、

あまりにも場違いな雰囲気の少女が一人、部屋の中にいるのに気が付いた。


冒険者?

いや、ダンジョンを冒険するに、こんな少女を連れてくる者なんているか?

年の頃は12歳くらいだろうか。

服装を見ても冒険者という格好でもない。

簡素な貫頭衣のような服装だ。


貫頭衣を着たオレンジの髪の少女。

腰まで伸びる量の多い髪で、目が出るか出ないか位の前髪だ。


急に入り込んで来た私に驚いているようだけど、

怯えている様子は無い

と言うより、元々表情の変化が乏しい様子。


この子も誰かと来て迷子になったんだろうか?

服装からしてもしかして逃亡奴隷だったとか?

それにしては、よくこんな所まで無事に来れたものだ。


「あなたは、だあれ?」


はっ!


そんな問いかけに吾を取り戻し、名を名乗る。


「私はシレラ・サーリド。 冒険者よ」


「そうなの、おめでとう。ここはダンジョンの終着場所」


え?おめでとうって。

終着場所?


状況が今一つ理解できないから、まずは座って落ち着くことにした。

座って水筒の水を飲む。


はーー


少しだけ落ち着いてきた。


「あなたも飲む?」


言われるままに手渡した水筒で少女も水を飲んだ。


落ち着いたところで、名前を聞いたけど、少女は名前が無いと言う。

と、いう事はこの子は逃亡奴隷か?


何故ここに居るのか聞くと、

ここが少女の居場所でダンジョンを管理していると言う。

はあ?ダンジョンを管理?

益々訳わからん。


とにかく、ここに居ると何時魔物が来ないとも限らない。

とにかくダンジョンから脱出しないと。


この子もここに置いて行く訳にもいかない。

連れて一緒に出る事にした。


「何とか出口まで行くからね。一緒に来なさい。魔物に注意してね」


「ん、魔物は大丈夫。道はまっすぐ行けば良いよ」


複雑な迷路で大変な思いでここに辿り着いたというのに、

帰りはまっすぐ行けば出られるって?




一時間ほど歩いただろう。

半信半疑の気持ちで、言われたまま真直ぐに歩いた。




「うそ?!」



本当にダンジョンの出口が見えて来た。

なぜか途中魔物にも出会わずに。

苦も無く本当にダンジョンから出られてしまった。

攻略時の迷路の大変さも無く。

何かの魔法にかかったかの様に。

嘘のようだけど、本当に出られている。

攻略時の苦労は何だったのかと自分自身に一週間ほど問いただしたい。







ダンジョンから出て夜の森の中にいても、獣の危険がある。

シレラは少女を連れて、冒険を出発した街に戻ってきた。


「あ~ぁ、今回はパーティーが全滅して換金物も手に入らなかったか……」


財布を探れば、僅かながら安宿に少女と二人で2日は泊まれそうではある。

明日は街の近くでゴブリンでも狩れば、もう少し安宿に泊まれる位には稼げるか。

そんな算段をつけて、この街で一番安い宿に宿泊する事にした。



子供連れの女性。

治安の悪いこの世界では、美味しそうな獲物に見えただろう。

ガラの悪い男が二人シレラに話しかけてきた。


「おう、お姉さん、どこ行くんだい?」


「関係ありません。そこをどきなさい!」


「おっとぉ…、そういう訳にはいかないなぁ」


男達は下卑た笑い顔をしてニヤニヤしているが、目は笑っていない。

そんな様子からでも碌な者じゃない事はすぐわかる。

男は音も無く腰から刃物を抜いた。

強盗に早代わりか?


パーティーを失くし、男性のガードが無い今、危険な状況である。

気が付けば後ろにも一人男がいる。

何としてでも逃げなければ。


その時少女が呪文を唱えるように声を出した。


「ダンジョンクリエイト!&セットピットホール!」


「「「うおおお!」」」


男達は急に足元に空いた落し穴に落ちた。

おそらく手を伸ばしても穴の口に届かないだろう位穴は深い。



「さ、シレラ、今のうち」


「う、うん。今のは一体…」


「この街をダンジョン空間にして落し穴をセットしたの」


この少女が何を言っているのか理解が出来ないけど、逃げるなら今しかない。

詳しく話を聞くのは宿で落ち着いてからだろう。







シレラは宿で落ち着いて話を聞いてみた。


「早速だけど、あんた何者なの?」


「私はダンジョンマスター、ダンジョンの核なの」


少女はダンジョン核にして、ダンジョンマスターだと言う。

言うならば、ダンジョンを運営する者。

そのための権能を持っている。


その権能でこの街を一つのダンジョン空間にして、落し穴の罠を設置したという。

普通の魔法では在り得ない特殊能力をこの少女は持っている。

ダンジョンマスター故にダンジョンの中でしか権能は使えない。

しかし、どこにいてもダンジョン空間にする事が出来ると言う。


ん~。

それって考え様によっては凄いチート能力なんじゃないの?

ひょっとして、もう攻撃用の魔法使いも要らないんじゃ?


「で、これからあんた、どうするの? 親の元に帰る? 帰るなら送っていくよ?」


「親? 親は居ないし、あたしはダンジョンに居れば良いの」


……いや、ダンジョンに居ればってねー。


「そうだ! もし良かったら私と旅をしてみないかい?」


「シレラがそうするなら着いてく」


「じゃあ、あんたの名前決めないとね」


「名前?」


「うん、名前」


と言う流れで少女はシレラによって【タリマ】と名付けられた。


放浪の冒険者シレラはタリマとパーティーを組む事にした。

いずれはタリマの事を知る事もあるかもしれない。

そんな期待も持っている。

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