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転生したら魔王の放蕩息子な件 魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語  作者: ぽてち
魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語
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39「討伐軍」

アルパリヤ領の領主トリザパッツによる山賊討伐の山狩りが開始された。

テアヌソン山地は結構広く、約2500名の兵士や魔術師達が動員されている大掛かりな掃討戦だ。

つい最近壊滅したヌック村のある山を麓から、頂上に向けて捜索する計画になっている。

この山を1区画として、噂の山賊がいなければ、順次隣の山に移って行く手筈の予定。

平地で敵を前にする総力戦と違い、山を登る探索戦だから雄叫びは上がらない。


「ここら一体は魔族領境界線から離れていても、そんなに遠くない。山賊は魔族で間違い無いだろう」


山賊討伐戦の隊長ゼアンは当たりを付けていた。


ここしばらく数十年ほど大人しかった魔族であるが、ごくたま他領に入り込む魔族はいる。

今回の騒動も、そうした手合いの一つだろうと察している。

人族の王都アルパ王国の領地の一つ、僻地のアルパリヤ領は魔族領と近い場所にある。

近いから魔族の被害に遭い易いとも言える。それでも数十年来起きなかった事件だ。


報告にある魔族の山賊とやらは、所詮流れの食い詰め者だろう。

約2500名の兵士や魔術師達が動員されているのだから、恐るるに足りないはず。


討伐軍が山を登るにつれ包囲網は狭まっていく。




「兄貴、俺らに討伐軍が来たようだ。」


「山の麓に2000を越えるほどの軍隊が見えますな。160名しかいないこちらは分が悪い」


忌々しげにヘルデーヴァが言う。


「くそっ、ここまで後どれくらいになりそうだ?」


「たぶん夕方までには、アジトに来るでしょう」


ハルワックが言う。


「アジトから出ても、見つかる可能性は大きいな」


「敵の包囲網を突破すれば、脱出の可能性も出てくるが」


「敵の一番弱そうな所はどこだ? そこを突こう」


敵の兵士達は皆鎧で武装している。

こちらは咄嗟の逃避行だから、武具を持ってくる余裕は無かった。

手持ちの剣は手入れがままならず、正面から敵に当たるには心許ない。


出来れば、敵の弱そうな集団にゲリラ戦で奇襲を仕掛け、武器も奪えれば尚良しだ。

作戦は決まった。見張りの部下に当たりを付けさせる。


魔術師は兵士と違い、たいした剣は持たないし、鎧も着けていない。

それは防御力が低いと言う事だ。

呪文詠唱の時間さえ与えなければ、勝ちを拾うには困難な相手じゃない。

ゲリラ戦で攪乱し、急襲すれば呪文詠唱の時間など有るまい。


バウソナ達は、兵士より魔術師が多い集団を見つけた。

160名の手下達は一斉に分散し、木や草陰に身を隠す。

人の手が入らない山の中は、木々は乱立し、

鬱蒼と生える丈の長い草々は身を隠すには最高の場所だった。


たがて討伐隊は草を掻き分けながら登って来る。

出来れば声を出されずに倒しきりたい。

そのために敵が目前を通り過ぎるのを息を殺して身を隠す。

敵が背を向けた瞬間が攻撃のチャンス。


30名ほどで包囲し、後ろから手で敵の口を塞ぎ、短剣で首を切り裂く。

首や顔をガードする鎧なんて無いから、兵士の鎧なんて意味が無い。

鎧を着ない魔術師は尚更だ。咄嗟の事態に対応は出来ない。

敵の兵士達の剣は鹵獲する。


敵の包囲網の一角に穴が開けば、脱出のチャンスが出来る。

しばらく麓の方へ進み、再び身を隠す。

包囲網に穴が開いた事を知って、追って来た敵を同じ様に屠って行く。

この時点でバウソナ達の被害は20名ほど。減りはしたが140名は健在だ。



「賊だー! 賊がいたぞー」


少し上の方で魔術師であろう男が声を上げた。


「ちっ、見つかったか」


近くに居たヘンモレドスが、土魔法で男を狙い飛礫を飛ばす。

それを合図にヘルデーヴァ、ハルワックが土魔法でヘンモレドスに続く。


声を出した男は飛礫がいくつか被弾した。

仲間を呼ぶ余裕は既に無い。

反撃に移る。イフリートの召還だ。


「くそっ召還士だったのか」


男の周りの木々や草は炎に包まれる。

炎の中心に火の精霊イフリートが顕現し始めた。

人型で身の丈が3m位、全身を赤い炎で身を包んでいる半透明な火の精霊。

物質ではない火の精霊には物理攻撃は意味が無い。

正に生きている炎と言うべきだろうか。


バウソナ達一行の力では、炎の精霊に太刀打出来る者などいない。

イフリートに攻撃されれば、反撃など出来ずに焼き殺されるしかないだろう。

水系魔法を使っても、それこそ焼け石に水といった所。

火の精霊イフリートそのものの存在が無くならなければ火は消えない。


「ヤバイ奴を連れて来たもんだ。どうする」


たじろぐバウソナ達一行。


『案ずるなバウソナ。お前には我、魔神ツヴァパードが加護をしている』


どこからか声が掛かり、思わず振り向くバウソナだった。

しかし、後ろには誰もいない。

辺りが暗くなり、冷気が山を押し包み始めた。

空には厚く黒い雲が覆い始めている。


黒い雲の中には稲妻が走り、白や紫色の光が走り回る。

時折ゴロゴロゴロと雷鳴が鳴り響く。


黒い雲を割り、中から漆黒の巨大な腕がグワッと出てきて、イフリートを掴みあげる。

掴まれた手の中からイフリートは脱出できない様子。

半透明、半物質の精霊であるにも関わらず、強い力で握り締められ、圧迫され苦しんでいる。


「何だあれは、イフリートをいとも容易く握り潰そうとしているなんて……」


魔神ツヴァパード、バウソナ達は名前くらいは聞いた事があった。

魔族の神、それが魔神ツヴァパードだ。

イフリートを前にし危険な状況のバウソナ達は魔神ツヴァパードに助けられている。


巨大な手の中で、抵抗虚しく断末魔の声を上げるイフリート。

魔神ツヴァパードの握る力は、更に増す一方だった。

次の瞬間、イフリートは遂に魔神ツヴァパードに握り潰されてしまった。


イフリートは倒され、バウソナ達は何とか生き延びるのだった。

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