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転生したら魔王の放蕩息子な件 魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語  作者: ぽてち
魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語
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34「宿場町ゾデロン」

俺たちはヘルトルの街へ向かっている。

その街が次の公演予定に入っているからだ。


ヘルトルの街はミクトラン山脈の麓に流れる、

ズルワ河とユミル河に挟まれた広大で肥沃な中州の高台に街があるという。


二つの河が運んでくる肥沃な土砂が堆積して出来た土地が中州。

さぞ豊かな街だろうと思うけど、そこはドッコイ。


二つの河は時々氾濫して、中州は洪水に見舞われる事がある。

この世界では、治水工事なんて物をしないんだろうな。

街壁の両側には、二体のゴーレムが控えていて、入り口の水門を開け閉めしていると言う。


中州が洪水に見舞われている間、誰もがヘルトルの街に行き来出来なくなる。

手前にある宿場町ゾデロンで足止め状態になってしまう。

そして、この情報の通り、俺達一行は宿場町ゾデロンで足止めをくらっている。


先にヘルトルの街へ向かったはずの楽団員たちもこの宿場町にいる。

彼等もしっかりと足止めをくらったんだな。


宿屋の二階から遠くに望めるヘルトルの街、

高台の下は水に埋め尽くされて湖のようになっているのが見える。



「兄上様、ヘルトルの街ってまるで湖上に浮ぶ街に見えます」


多分ルリアが想像しているより、酷い事になっているのかも。


「あ、兄上様、湖の中に馬がいます」


「ルリア様、あれはケルピーという魔獣ですね」


横に控えていたキスナエレアが指摘した。


ケルピーというのは川、湖に棲む下半身が魚の食人馬魔獣。

近づいた者を水中に引きずりこんで食らうと云われているそうだ。

水中の魔獣だから、中々退治し難い奴でもある。


大規模な氷結の魔法や、強力な雷撃の魔法を使えりゃ良いんだろうけど、

俺には残念ながら生活用の初級六種程度しか使えない。

ルリア達は中級程度を使えるらしい、ダメな兄ちゃんでゴメンな。


そんな具合で水が引くまで、何日も逗留を余儀なくされる。

何日も待っている間には、雨が降る日もある。

洪水の最中に雨まで降るだなんて、いつ水が引いてくれるのやら。

ヘルトルの街は自然から兵糧攻めにあっているようなものだな。

街に食糧問題って起きて無いんだろうか。


宿場町ゾデロンは今日も雨が降り続いている。

俺たちのような旅人はほとんど宿から出る事はしない。

街の人達は食事のための食料買出しで雨の中を出歩く事は珍しくない。




「雨宿りさせてください~」


一人の女性が雨宿りを求めて、俺たちの逗留する宿に飛び込んできた。

長い髪は、ずぶ濡れで雨具を着ていない様子。近所の人かな?

気の毒に思った俺は、彼女を宿の中へ招き入れ、乾いたタオルと温かいお茶を勧めた。


彼女の名前はグルアガッハの『パミルア』


……グルアガッハ?聞いた事が無い地名だな。


「ニホバル様、グルアガッハとは妖精の一種ですよ」


ツェベリが言う。

ほう、と言う事は俺は妖精さんを雨宿りさせたのか。


「え~妖精さん? 凄いですーサインくださいー」


ルリアがサインをねだる。

をいをい、サインをもらうなんて何時覚えたんだ?


「サイン? 何の事か解りませんが、雨宿りのお礼をするのは私の方ですよ?」


不思議そうな顔でパミルアが聞いてきた。

しまった!もし雨宿りのお礼に願いを叶えてくれる妖精だったら……。


サインの事が解らないパミルアは、雨宿りのお礼にとタリズマンを差し出した。

うん、こういう流れなら常識の範囲だろうな。

俺はありがたくタリズマンを頂戴した。


青みがかった小石に何やら模様が描かれている。

何かのおまじないかな?

それでも、妖精のお礼の品だから無価値って事はないだろうと思った。


パミルアは、雨宿りの最中、ツェベリ、ルリア、キスナエレア達と談笑している。

ほとんどは他愛ない世間話なんだけどね。

それでもけっこう盛り上がっている様子。


「ええー。皆さんは最近流行っている音楽の関係者なんですか、凄いです」


「ヘルトルの街で公演の予定なんだけど、洪水でね。街へ辿り着けないんだ」


「私も聴きに行って良いですか?」


「もちろんですよ。もし良かったら水が引いたら、私達の馬車に同乗すれば良い」


「王族の方に、それは失礼かと…」


「公演のお客さんなら、歓迎しますよ。大歓迎です」


遠慮がちなパミルアに馬車の同乗を勧める三人。

王族関係者の勧めという事で、断り切れなくなったパミルアは馬車に同乗する事になった。

それでも降り続く雨と洪水ですぐには出発できないんだけどね。



翌日、雨はあがって晴れ間がのぞき出した。

けど、降った雨で洪水の水嵩は少し増したようだ。

何時になったらヘルトルの街へ行けるのやら。

皆で宿場町の外、水辺のふちでヘルトルの街を眺めながら、ため息をついていた。


「ねえねえ、あなた達の中にどうして妖精が混じってるの?」


と話しかける者がいた。

振り向いても誰もいない。


え? もしかして幻聴が聞こえたとか?

そうだったらヤバイじゃん。


「違う違う、あたしはここにいるよ」


そう言われて足元を見ると、緑色の服を着た15cmほどの小さな少女が一人いる。


「あら、レケシナじゃない」パミルアが言う。


どうやらパミルアの知り合いらしい。

彼女はアルラウネの『レケシナ』

薬草の妖精らしい。


草木や花の妖精がいるとは聞く話だけど、薬草にも妖精はいるのか。

考えてみれば間違った話じゃないな。

薬草は傷薬として、よくお世話になっている。


「薬草の妖精さんでしたか、お世話になっています」


「私達はヘルトルの街へ行きたいんだけどね、この洪水じゃぁ」


「そんならウンディーネの『セベイア』に頼めば良いんじゃないの?何で困っているだけなの?」


レケシナに言われてパミルアがバツの悪そうな顔をした。

さては、こいつ忘れてたんじゃ?

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