27「勇者来襲」
魔族領の山岳地帯を行く一行がいる。
パーティーリーダーのグレイド、格闘士のデゾント、剣士のムバドア
アーチャーのタッド、魔術師のトイミラ、治療師のプナリアの六人パーティーだ。
「なあ、グレイド、魔族の王都まであとどれ位だ?」
格闘士のデゾントがチームを率いるグレイドに語りかける。
彼らは人族の王から、魔族領で不穏な動きありとの情報で派遣された勇者一行。
人族の世界では『勇者』と呼ばれる者は割といる。
何も魔王を討伐したという事ではなく、勇敢な行動で人々の模範になる業績でも勇者の称号が与えられる。
火災の現場で逃げ遅れた人を救ったり、戦争等で武勲を挙げたり等。
人々の憧れる業績を揚げるのに、上級の冒険者が得易い立場にある。
社会的に上等な立場ではない冒険者になりたがる理由の一つだろう。
彼らがどういう業績で勇者の称号を得たのかは判らないが。
「さすがに魔族領ね。魔獣も段々強くなって来てるわ」
魔術師のトイミラが言う。
魔族領は魔素の濃い地域にあるためか、大型の魔獣や強力な魔獣が多く生息する。
最も山岳地帯なら余計に無理も無い事だが。
「最近も魔王は海の方で、勢力を広げたと言う情報もあったな」
剣士のムバドアが言う。
魔族が力を蓄えている、というのは由々しき事態だと人族サイドは考えている。
しばらく大人しくしていた魔族が、人員を集め、勢力の拡大に出た。
またしても各地の征服でも企んでいるのか? 皆内心恐々としている。
遥か昔、人族は魔族から襲撃を受け、蹂躙された歴史がある。
人族の記憶には、魔族は不倶戴天の敵である。
「魔王の暴威が、世界に吹き荒れるのは怖いわ」
治療師のプナリアが心細そうに言う。
魔族が人族より強い種族という事は広く知られている。
姿形も様々で人族には無い能力を持つ者も多いと聞いている。
ましてや、そういう種族を束ねる魔族の王が更に強いと言うのも周知の事実。
「これ以上、魔王が力を蓄える前に俺達で討とうぜ」
アーチャーのタッドが言う。
彼はリーダーのグレイドと並び立つ義侠心に篤い男だ。
自分の正義を信じ、仲間達とともにこれまで頑張ってきた。
そんな性格だから、仲間からの信頼も篤い。
グレイド達一行は、人族の王の元を出発して以来、
数々の魔物や魔獣を倒し続け、力をつけてきた実力者ばかり。
山越えの途中に出没する魔獣程度に手こずる事もなく、
一行は山岳地帯の道無き道を突き進む。
やがて見晴らしの良い所から眼下を望めば、麓から先は広大な平野が広がるのが見える。
平野まで降りれば、山岳地帯は抜けたと考えて良いだろう。
「あの平野の先に、魔王がいる魔族の都があるのね」
プナリアが地図を見ながら確認をする。
魔王城のある首都ザウィハーまで、あと少し。
だが、その都は敵の本拠地。
都市内を突破するにも、恐らく容易には行かないだろう。
道中の魔獣をも凌ぐ強敵が待ち構えているかも知れない。
魔王城首都ザウィハーは街の外周を堅牢で高い壁に囲われている。
大概の魔獣や野獣は、あの壁で侵入を防がれているのだろう。
東西南北に六箇所ある門には、守衛が街に不審者が出入りせぬ様に、
行き交う人々をチェックしているようだ。
「やはり本拠地は警戒厳重だな、先ずは門を潜り抜けなければ、街には入れないという事か」
「いや、仮に街中に入れても、俺たちは人族だ。 魔族の中に入れば、イヤでも目立つに違いない」
「街中に入れなければ、魔王に辿り着けないわ」
「こりゃぁ、思った以上に手強いな」
さすがに勇者一行といえども、魔王の王都魔族の住民全部を敵に回して闘う訳にはいかない。
勇者一行は、たったの六人のパーティーでしかない。
軍隊を引き連れてやって来たのでもないのだから。
どうやって門を潜ろうか、しばらく様子見をしていると、
門を潜る人々は魔族だけじゃなかった。
魔族寄りだろうけど、様々な種族がいる。
グレイド達は、人族と判らないような格好をすれば、門を潜れるかもという気がして来た。
顔を布で巻いたり、仮面を被ったり、武器は背中の荷物に紛れ込ませる。
最悪の場合、門番と戦うことになるかも知れないが。
決心を決めて一行は門を潜る列についた。
やがてグレイド達に順番が回って来た。
「ん? 見ない顔だな、お前達、通行許可証はあるか?」
通行許可証だって?早速しくじったか?
一行に通行許可証が無さそうだと門番は判断をした。
「ひょっとして、お前達はニホバル王子様の関係者か?」
最近は王都の外からの入場者が増えている。
そういう場合、街で発行される通行許可証なんて持っていない。
門番は直感した。また王子の道楽の関係か。
「そうなのか?」
事の様子が解らないグレイド達は、とりあえず首を縦に振る。
意外にも門番はあっさり通してくれた。
「おい、何なんだ? 王子の関係者って」
「タッド、俺に聞くなよ。 俺だって解らないんだからよ」
「でも、王子に会えば、何かしら事が進みそうな気がします」
トイミラが提案をした。
王子と言えば魔王の息子に違いない、王子に近づけば魔王との距離は近くなるかも。
「そうだな。 その意見に激しく同意だが、その王子というのは、何処にいるんだ?」
一行は露店で何か食べ物を買いつつ、それとなく聞き出してみる事にした。




