23「奴隷」
先の女同士の戦士の闘いは凄かった。
凄いのは良いんだけど、今度は癒しが欲しい。
見ているだけで癒されるような。
例えば、もふもふの子猫とか。
そう考えると、獣人の猫族の少女達のユニットなんかどうだろう。
見ているだけで癒されまくりそうに思うけど。
観客も萌え死にそうな可愛さを振りまくなんて人気出そうだし。
しかし猫種獣人族の少女を、どうやって募集しようかが悩みだな。
王都内にも色々な種族は混在している。
混在していても、魔族に近しい種族が多い。
ゆえに先に募集したエルフ族や、ヴァルキュリアは魔族領にはいない。
もちろん人族や獣人族も魔族領以外の領地に住んでいる。
人族や獣人族などは魔族との関係が宜しくないと聞いている。
という事は、人族や獣人族の応募は望み難い事になるのかなぁ。
猫種獣人族の少女のユニットは俺の夢だな。
夢は実現化してみたい。
そんな理由で会議を開く事にした。
「猫種獣人族の少女のユニットですか? 可愛いですー」とルリア姫は言う。
「獣人族の募集は難しいと存じます」とツェベリは言う。
「獣人族の声帯は歌を歌うのに適さないかと」とルノアは言う。
うん、一つ重大な意見が出た。
歌を歌う事について、声帯が適さない種族というのはいる。
リザードマン・ドラゴニア・ドラゴニュート・ラミア・ミノタウロス・ケンタウロス。
大体これらの種族には歌は適さない。
ルノアの言うとおり声帯の構造が歌を歌うのに適さないからだ。
爬虫類系はともかく、獣人族にミノタウロス・ケンタウロスが入るように、
獣系も声帯の構造が歌を歌うのに適さないのだった。
その上、獣人族には国交も無ければ、魔族は好意的に見られていない。
そんな状態だと、不正規募集は不可能だろう。
うーむ。どうすれば………。
「歌の是非はともかく、どうしても手に入れるとなれば、奴隷を買うという方法も有りかと」
ツェベリが提案する。
奴隷か。
仮に奴隷を買って獣人族と軋轢が発生しないだろうか?
「何かが起きるにしても、その時その場でなければ判断は難しいかと」
ルノアが語る。
そうだな、まだ何も起こっていない状態で悩んでもしょうがないか。
声帯の問題もあるだろうが、取敢えずチャレンジしてみない事には結果も出ないか。
「うん。取敢えず奴隷購入を進めてみよう」
俺は決断した。
ルノア、ツェベリと俺の三名は王都内の奴隷市場へ出かける事にした。
「兄上様、ルリアも行きたいです。連れてって欲しいです」
ルリア姫が俺達に追い縋る。
王族の姫が風紀の悪い所に行くのって問題にならないか?
俺は王族の者でも隠居の放蕩者だから許されると思うけど。
「なら、ルリアは忍んで平民の姿で着いて行きます」
それでも姫を風紀の悪い所に連れて行くのもなぁ……。
「私とルノアの二人で買い付けてきましょうか?」ツェベリが提言する。
ルリアは俺に付いて行きたいだけだろうから、
俺が行かなければ、ルリアも行かないだろうな。
しかし、奴隷は俺が現物を見ながら決めたい所。
行くか止めるかをどうするか、悩ましい問題だな。
しょうがない、問題を先送りにする。
と見せかけて、後日ツェベリとこっそり買い付けに行くのだった。
ルリアには、ツェベリが買い付けて来たという事にする。
とうとう俺は『どこに行くにも妹が着いて来る兄ちゃん』になっちまったんだなぁ。
奴隷市場は王都の奥、いかにも風紀が悪そうな貧民区の近くに、それはあった。
何件かの奴隷商人の店がかたまって商売をしている。
その中で、大き目の店の主人に話を持ちかける。
「へい、いらっしゃい。 今日はどの奴隷をお望みで?」
年齢的に舐められないように、大人のツェベリに交渉をしてもらう。
「うむ、猫種獣人族の少女を数名欲しい」
「猫種獣人族の少女で御座いますか、一寸難しい注文で御座いますな」
基本的に国交が無い国からの商品や、奴隷の買い付けは無いに等しいから無理も無い返事だ。
もし人族や獣人族の奴隷がいるとすれば、どこかで攫って来たという事になる。
元々奴隷商なんて、合法の商売とは言い難いけど。
少なくとも、この国では禁止はしていない。
ツェベリは黙って奴隷商人の男に、金貨数枚入った袋を慣れた様子で手渡す。
袋の中身を確認した男は、俺たちを建物の奥へ案内した。
建物の奥の一室に置かれている檻の中に、四名の猫獣人の少女がいた。
年の頃は9歳児位だろうか。みすぼらしい身形で、檻の片隅で身を寄せ合っている。
部屋の中は薄暗く、奴隷の健康状態は判別し難い。
「あと20枚金貨を頂ければ、四匹全部お譲り出来ますが…」
そう交渉する男に、金貨21枚を渡す。
「金貨一枚を配送料として上乗せするが、届けられるか?」
了解する男に届け先をこっそり告げる。
一瞬目を見開くが、すぐに嫌らしそうな笑顔で返事をする。
「へへへ、承りまして御座いますよ」
翌日、別邸に奴隷が送り届けられた。




