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転生したら魔王の放蕩息子な件 魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語  作者: ぽてち
魔族の国の駄目な放蕩王子だから好きにさせてもらおう物語
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19「バンシー」

「ニホバル様、街にバンシーが出たとの報告がありました」


ツェベリから報告があった。

バンシーは死人が出る兆候として、嫌われている妖精だな。

ヨーロッパでは、大戦中に空襲警報のサイレンを【バンシーの叫び】と呼んだとも言う。

一応国内の異変に気をつけないといけないな。


ふとニホバル王子は思い止まって考えてみた。

バンシーが泣き叫ぶから死人が出るのか?

考えを変えればバンシー自体は不幸を齎すと言うより、不幸に対し警戒警報を発する者という可能性も考えられる。

嘆きの妖精と言われているが、警戒警報なら無視出来ない存在だ。


ツェベリにバンシーを連れて来るように頼んでみた。


「戦闘侍女隊の者に告ぐ、ニホバル王子様の命令でバンシーを捕獲せよ」


「「「「はっ!」」」」


颯爽と街中に出撃して行く戦闘侍女隊の面々。


「いたか?」


「こちらに逃走中のバンシーを発見!」


「二班は逃走先へ回り込め」


「結界発動しました」


仮にも妖精の一種であるバンシーは、壁を抜け、家々を抜け、戦闘侍女隊の包囲網を逃れまくった。


「うお! 誰だ!」


「逃げるなバンシー! こちらは包囲済だ」


「ヒイイイイイイイイイイィィィィィィ」


突如家の中を走っていくバンシーに驚く家庭が続出する。

戦闘侍女隊の一糸乱れぬ連携と、結界の魔法陣のトラップで、最終的に逃げ切れなくなり御用になった。




しばらくして戦闘侍女隊にバンシーが捕獲されたと報告が来た。

いや、バンシーは犯罪者でも何でもないんだから、捕獲は気の毒だと思うぞ。

かと言って話をしようにも、簡単に従うとは思えないけど。


さっそく応接室で面談を行う。

決して尋問ではない、面談だ。


逃走防止の結界の張られた応接室で面談は始まる。


警戒するバンシーを前にニホバル王子は話を始める。


「手荒な事して悪かったね、悪意は無いんだ君と話しをしたい」


「私とですか?」



バンシー名前は『テナモゼ』、種族は妖精種。

黒衣の女性の姿であるが、外見は人とそれほど変わらない。


「人が亡くなる時にバンシーは泣き叫ぶらしいね」


「あの、私は悪気があって泣き叫んでいるのではないのです」


聞いてみた所、バンシーのテナモゼは、命の有り様に非常に敏感らしい。

敏感過ぎて誰かが亡くなる事が事前に解り、悲しみが止まらなくなり、泣くのだそうだ。

事前であっても人の悲しみの感情がバンシーの心を襲うらしい。


うーん、まさにオペラ歌手とか、ロック歌手とか、メタルボーカルとか、

声を張り上げて歌うのに適材なんじゃ?

会場の興奮や歓喜だって、感じてもらう事も出来るだろう。

ならば、いくつか任せたいものがある。


いくつか歌のジャンルがあると、さすがにテナモゼ一人ではカバーしきれない、

歌手志望のバンシーがもっと欲しいね。


「君に任せたい仕事を思いついたんだけど」


「バンシーは不吉な者として嫌われていますが、大丈夫でしょうか?」


ツェベリが心配そうにしている。

テナモゼも申し訳無さそうに言う。


「ツェベリ様の言われる様に、私のようなバンシーでは……」


しかし俺は人の評価は種族だから、ではないに違いないと考えている。

人は何をしたかで、人から評価される。

テナモゼの努力次第で人の聞く耳、いや、見る目は変わるに違いない。


「そういうものなんでしょうか?」


「うん、そうだと思っているよ君に何かあれば護ってあげても良い」


「そうまで仰るのなら、協力するのも吝かではないのですが」


取敢えずテナモゼには、一通り歌唱の訓練に入ってもらう事にした。

もちろんルノアの力でテナモゼもグングン実力を上げて行く。



「兄上様、テナモゼ様の歌は凄いですね。遠くからも聞こえます」


ルリア姫がテナモゼの人間離れした歌唱力に感心をしていた。

彼女はバンシーだと教えられ、二度ビックリする。



やがて訓練の終ったテナモゼに、ザウィハーズの面々をバックバンドに加え、練習を開始する。

さすがに屋外じゃリュートの音は力不足が否めない。

しかし、この世界には魔術が在る。

風の魔術で音量を拡大し、拡散する事が出来るから、十分だった。

バンシーであるテナモゼの声量ある歌声が拡大するから、益々凄い事になる。



やがて舞台衣装も出来てきたテナモゼの地方公演も始める事になった。

テナモゼの歌は人々を昇気させ、歓喜させ、感動を呼び、人気も上がる。

とにかく彼女の歌は高音の伸びが凄いのだ。


……ああ、こういう感情は心地良いですね。


「不吉なるバンシー」という認識は、「世界の歌姫」に切り替わって行く。

そんな彼女の姿に憧れるバンシー達も現れるのだった。


そんな具合にボーカル不足は次第に解消していく。

すると今度は、バックバンドの不足という問題が立ち上がってくる。

バックバンドユニットも増設しなくちゃ。

王妃の別邸は益々芸能事務所の様相を帯びてきた。


俺の予定では、今後、獣人族ユニットやセイレーン等も考えている。

獣人の猫族の少女ユニットというのも面白いだろうな。



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「兄上は、この国をどうするつもりなのだ! 魔族の国は昔から勇猛なる軍事国家のはずだぞ」


バウソナは益々苦々しい思いを募らせるのだった。

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