18「ガールズユニット」
「兄上様、兄上様、今日はどんな練習をするのです?」
「ん?今日も来たのかい?ルリア」
ツェベリの防御壁が機能しなかったようだ。
第一王妃アビスナが王妃カースト降下以来、ほかの兄弟達から浮気味な事もあり、
王族は学校へ通う事も無いから、同年代の友達も出来ない。
そんな理由でニホバルの所へ来るのも、仕方なしと判断されるようになった。
本日は人化したドラゴンの娘達が応募して来ている。
彼女達は、歌も楽器も踊りも適正が無さそうで悩んでいた。
繊細な事が苦手なのが判ったのだった。
それでも音楽を気に入っている様子。
音楽関連の仕事に就きたいと熱望している。
いわゆる下手の横好きって奴だな。
ドラゴン娘達をどうやって扱えば良いものやら……。
「兄上様、それなら各部署のマネージャーにしたら如何でしょう」
ルリア姫がアイデアを述べる。
音楽活動に関わりたいドラゴン娘達は、そのアイデアを受け入れた。
ザウィハーズ、オーガ太鼓隊、ハーフリンク合唱団達に強力なマネージャー軍団が誕生だ。
これにより魔族領内に複数同時期の公演派遣が可能になった。
各部署にマネージャー達がつき、ニホバルの負担は大分軽減された。
娯楽という物を嫌う人は少ない。
誰でも心浮き立つ娯楽は大歓迎される。
魔族領各地でコンサートが公演され、好評を博している。
噂も更に広まり、魔族領以外からも公演のオファーが届き始めた。
そうなれば、資金的にも余裕が出来始める。
事業拡大に着手し易くなるという事になる。
公演で更に人気を集めるには、やはりガールズユニットが欲しい所だな。
前世を知る俺にとって、人気の目玉となると思い浮かぶのはそれだ。
魔王領のユニットならば、さしずめMOU48って所か?
可愛いのを取り揃え、歌と踊りで観客を魅了する。
そんな計画で衣装を50着発注し、人員を募集したい所だ。
しかし、人員募集をどうしようか。
取敢えず城内を見ると、メイド達は容姿の良いのが揃っている。
そりゃあ城仕えのメイドだ。
高いレベルで厳選され、抜擢されてきた者達ばかりだから当然だ。
父王の許可を貰い、メイドたちに話をしてみた。
ところが反応は思わしくない。
「お、王子様、お許し下さい~」
「私共は王室就きの王城メイドなのです。そういう破廉恥な衣装は…」
「私達は街娼ではないのです」
皆、口々に嫌がっている。
「お前達、黙りなさい! ニホバル様の御要望なのです。従えないのですか?」
「そうですのよ。兄上様が皆に酷い事を命じている訳ではありません」
ツェベリとルリア姫が舞台衣装を着て俺を擁護する。
ツェベリの年齢でその衣装はどうかと思うが…
その身長と戦闘侍女の筋肉質な体型は似合わな過ぎる。
ルリア姫は幼く、完璧にサイズが合っていない。
ガールズユニットの為の募集をしても良いのだが、
城就きのメイドクラスの容姿の良いのを集めるのには少々難儀する。
事が動き出せば、事情も変わるかも知れないが。
後日、父王から呼び出しが掛かった。
「城の者たちから訴えがあっての、何でも街娼の格好をさせようとしたとか」
「王様、それは間違いで御座います」
再びツェベリとルリア姫が、相変わらず舞台衣装を着たままで俺を擁護する。
二人は衣装を脱いでも良いのに、なぜ着てる?
もしかして気に入ったとか?
その姿を見て父王は何も言わなかった。
「もう良い……」
ガールズユニットをどうするか、作戦会議を開く事にした。
王都以外で探すなら、日頃運動量が多く、体の引き締まった種族は良いかも知れない。
樹上で生活し、狩猟で生きるエルフ族のユニットならば?
そういう意見も出た。
エルフ族のユニットねえ…。
早速、森の種族であるエルフ族に特使を向かわせてみた。
『歌と踊りで観客を魅了する、年若い女性グループを作りたい。希望者あらば、ハユバムのニホバル王子の下に集うべし』
特使には、その様な書状を持ってエルフ族の元へ赴いてもらった。
やがて120名ほどの興味を持ったエルフの娘達が集まり、面談を行う事にした。
思った通り、容姿の良いが結構揃っている。
それでも衣装が似合うかどうかが、判断基準になるけど。
結果、48名+リザーブとして10名を厳選した。
それがスターティングメンバーになる。
さすがに狩猟民族だけあって、歌は上手くはなかった。
だが、リャナンシーのルノア養成所長の力でメキメキ歌唱力が上がっていく。
踊りの振り付けは、俺の記憶から引き出して指導する事になる。
「さすが兄上様なの」
「そうですね。ニホバル様は誰に教えられずとも、このように多才なお方なのです」
ツェベリとルリア姫は練習場の隅で感心をしている。




