16「重臣会議」
父王ロンオロスと城内の重臣たちによる会議が開かれていた。
議題については、先日様々な能力を見せた第一王子ニホバルについてだ。
『魔王たる者は強く、強力な力で民衆の信頼と忠誠を得る者であれ』
今までは、皆誰でもその様に思って来たし、代々続く伝統でもあった。
しかしニホバル王子は、それら伝統とは異なる可能性を見せた。
結果、臣民達にも、兵士達にも人気が有る。
力で引っ張って行くとは違う方法、それは民衆から好かれる王の可能性。
若くして隠居に封じた事は間違いであった。
しかし、ニホバル王子は王位継承権には関わりたくない様子。
既に重臣達の何人かはニホバル王子に取り入ろうと画策し、行動に走っている。
しかしツェベリを筆頭に侍女隊に皆防がれている。
このニホバル王子を如何に処遇すれば良いのか。
それが今回の会議の議題だった。
「王様、ニホバル王子様はまだ未成年でもあります。今事を急ぐ必要は無いかと」
大臣のジフソンが提言をする。
「うむ。その通りではある。その通りであるが、次世代王を決め、教育などの準備は必要ではないか?」
「我々魔族の寿命は長う御座いますぞ。何も焦らずとも良いのでは?」
大臣のセホイドも進言する。
ロンオロス王は自分に万が一の、何かがあった時の事を心配していた。
不慮の出来事というものは、王の権力でもどうにもならないからだ。
病に倒れる可能性、戦で倒れる可能性、事故での崩御の可能性。
そういう場合、下手に世継ぎ争いでも起これば、王国全体が迷惑をする。
場合によっては、国内の分裂という事態もあり得るからだ。
そうならないための王権序列であり、次世代候補擁立制度なのだった。
大臣達の提言も、もっともな事である。
可能性とは、今現在起こっている事ではなく、将来あるかもというだけの話。
今現在心配するべき事なのかどうか。何かあれば、その時に対処すれば良いだけの事。
ロンオロス王が事を急いたのは、先日のニホバル王子の成果が影響をしていた。
あれほどの才能を見抜けず、王位継承権から外し、若隠居までさせてしまった。
若隠居で放蕩に目覚めてしまったニホバル。
ニホバルは才能が有りながら、既に政事に興味を失っている。
そんな状況にしてしまったのは、父王ロンオロスなのだと自責の念に駆られている。
今では、どうやって償えば良いのか解らない。
そんな心情で開いた会議が、この重臣会議の正体であり、煮え切らない王がいる。
そうなると会議は小田原評定に堕してしまう。延々と答えは出ないものだ。
◇
第一王妃アビスナの部屋に、第三王姫ルリアが訪れていた。
ルリア姫にも既に自室と護衛の侍女が宛がわれている。
そして、勉強を始める年齢に達していた。
勉強を始める年齢ともなると、人の話や噂は理解出来る年齢だ。
ルリア姫には血縁の兄王子がいる。
その兄王子が最近噂になっている事は、ルリア姫の耳にも届いていた。
それは悪い噂ではなく、良い噂だから興味を掻き立てられる。
母が誇らしそうに語る兄王子は、ルリア姫にとっても誇らしい兄上かもしれない。
ニホバル王子が王権を失脚して以来、兄弟間のカーストで血縁のルリア姫は下に見られている。
だから他の兄弟とは仲がそれ程良くないルリア姫であるから、噂の兄に思い焦がれたりする。
「母様、私も兄上様に会いとう御座います」
「そうですか、実は私も中々ニホバルに会えないのです」
実のところ、アビスナ妃は中々ニホバル王子に会えないでいる。
ニホバル王子はアビスナ妃にとって、よく解らない事に忙しいからだ。
何やら噂が立ち上り始めた頃から、ニホバル王子は多忙を極めている。
やっている事の一端を知ったのは、先日の演奏会の事だったほどに。
ルリア姫たっての願いだし、アビスナ妃もニホバル王子に会いたい気持ちがある。
いつになれば、ニホバル王子に会えるのでしょう。
そう思いながら、傍らに控える侍女に面会の伝言を伝えるのだった。




