159「国へ帰る」
「さて、帰りの荷物はこれで全部かな」
思った以上に荷物は多かった。
薬品と点滴用の注射器・注射針が二人七年分で箱八つ。
ニホバル王子への土産の調味料や米が二十五箱。
服や家財道具が十箱。
既に部屋一つが占領されている。
あちらには電気が無いから、家電品は全部置いて行く事にした。
全部を確認し終わったルリアは、赤い宝石の付いた指輪に帰還を伝える。
シレラ達にあちらの世界に送ってもらう為だ。
やがてポータルが開き、シレラ達がやって来る。
「ほー、結構荷物があるのであります」
「ルリアさんも、タリエルさんも、キスナエレアさんも、チズシアさんも頑張ったね」
「はい、みなさんのお力添えがあってこそでした」
ルリアとタリエルはシレラ達にお礼をした。
ノーチャには、キスナエレアがこちらに合流する時にお礼を言っている。
「じゃあ、ポータルをザウィハーのニホバルさんの館に繋ぐよ」
ポータルの向こうには、ニホバル王子達の姿が見える。
荷物は無事に運び込めそうな余裕が在りそうだ。
後は全員で荷物を運ぶだけの算段だ。
「兄ちゃん、ただいまー」
「おかえり、ルリア達、ご苦労様だったね」
「これでルリアもタリエルも、兄ちゃんのお嫁さんになれるもんねー」
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ニホバル王子は届けられた調味料に大喜びだった。
転生以来、ずっと想い焦がれてきた味を味わう事ができる。
「調味料用の棚を作ろうかな」
「ニホバル兄様、各種の調味料、ルリア姉さんから聞きましたよ」
「そうか、父上や母上に報告がてら、食事会しようか、今度はタリエルも一緒に」
「嬉しいです」
「その後はツェベリ、キスナエレア、チズシアも呼んでルリア、タリエルとも鍋を囲むけど良いね?」
「もちろんです」
今度は鰹節も有るし、醤油も出汁用昆布もあるし、カレールゥも化学調味料もある。
砂糖も有るから、美味しい物に仕上がる事間違いない。
良い包丁を手に入れなかった失敗に、ニホバルは後から気が付いた。
……惜しい事をした。
薬類はルリア姫の部屋へ運ばれて厳重管理される事に。
残るは衣類や日用品の整理に移っていく。
「あー、人形がある、珍しい物着てるね」
レケシウネが日本人形を見つけて興奮している。
人形の近くには、コロポちゃん用に買い集めた服や食器、
椅子やテーブル、着物も入っている。
「ねえねえ、ルリア、どれもあたしのサイズに合ってるみたいだけど、もしかして…」
「…それ全部、レケシウネにあげるわ」
タリエルがポツリと言った。
「え? 良いの?」
ルリアがレケシウネに沈痛な顔でホムンクルスのコロポちゃんの事を話す。
研究の一環でタリエルが創ったホムンクルス。
ルリア、タリエル、チズシアが可愛がって、数々の服や食器、ベッドまで買って来た事。
それなのにカラスに攫われ、亡くなってしまった事。
「そうなんだ、可愛そうに……、そうだ、あたしがタリエルにコロポちゃんの代わりをあげるってのはどうかな」
レケシウネは分裂した。
株分けをした模様。
株分けした妹は姫カットの髪型に整えられ、着物を着てみた。
緑っぽい黒髪の日本人形にも見える。
「この子がコロポちゃんの代わりになるよ、名前は…そうだね、コロポウネなんてどうかな」
「ありがとうレケシウネ、良いの? コロポウネ貰っちゃっても」
タリエルは涙ながらにレケシウネに感謝した。
コロポちゃんはコロポウネにパワーアップして、
帰って来てくれたと思うようにした。
「大事にしてくれたら、何よりだから」
コロポウネは食事はしないらしい。
日に一回、栄養のある水を飲むだけで良いのだと言う。
「本当は清流の水が好みなんだけどね」
そういえばレケシウネって、よくランウネルに足を突っ込んでいたっけ。
要するに植物の妖精だから、住環境も植物と同じ方が良いのか。
……清流が好みなんて山葵のような奴だ。
山葵って抗菌作用が強いけど、関係有るのかな。
妖精のコロポウネはカラスに負けないくらい強いと言う。
しかも薬草の妖精だから、怪我や病気の手当てに活躍出来る頼もしい奴だ。
タリエルの話し相手になってくれるし、時には草笛を披露してくれる。
カラス程度の敵なら、蔓鞭や蔓投網、葉っぱ剣、種の銃撃、
風に種を乗せての情報収集、根っこ攻撃、等々で戦える芸達者だ。
更に妖精ネットワークも使えたりする彼女のスペックは高い。
こうしてホムンクルスのコロポちゃんの遺品は、
薬草の妖精アルラウネの『コロポウネ』に受け継がれた。
「コロポウネにプランター用意した方が良いのかしら?」




