15「模擬戦④」
「バウソナ様は車に鉄の盾を取り付けた車を押して来るそうです」
ツェベリから報告が入る。
ふむ。
戦車か、歴史的にそうなるだろうなぁ。
ならば、こちらは制空権を奪取する。
近代戦では、制空権を取られたら、負けが決定するからな。
こちらの陣営はペガサスナイト・ドラゴンライダーという飛行ユニットで構成する。
城内には、そういう部隊は存在しないため、ペガサス・ドラゴンを狩りに行く事になった。
模擬戦で指示を下すニホバルの陣営に極秘指令を出す。
「山間部にペガサスやワイバーンを狩りに行きたいと思う」
「ペガサスとワイバーンでありますか……」
部隊長のビガラスは乗り気にはなれなかった。
ペガサスは逃げ足が速く、狩るのはとんでもない手間が掛かる。
ワイバーンは気性が荒く、狩るとなると結構な犠牲が出る。
ペガサスやワイバーンを狩るには、山間部でも深部を探索しなければならない。
その手間を考えると二の足を踏むのは仕方ない事だった。
配下の者に魔獣使いもいない。
ペガサスやワイバーンはまともに討伐を考えると、手強い相手だが、
捕獲の時点でニホバルが、片っ端からチャームを掛け従順にするとしたらどうだろう。
他には捕獲用の網の罠を張り、獲物を追い込んで捕獲する。
多少の勝算が立ったのだろう。
部隊長のビガラスは了解し、魔獣討伐の名目で街を出発した。
ビガラス達の活躍で、ペガサスを6頭、ワイバーンを8頭無事に捕獲出来た。
捕獲の度にニホバルは捕獲用の網の外から、片っ端からチャームを掛け従順にさせた。
結果は思ったより上手く、事を進める事が出来た。
従順なペガサス・ワイバーンを自陣営に呼び込み、兵士達を騎乗させ訓練を施した。
作戦は、模擬戦が始まるまで、陣営の後ろに布で覆った檻を配置しておく。
塹壕の中には、騎乗員以外の残りの兵士達が待機し、囮になる。
攻撃はヒットアンドウェイ戦法で、波状攻撃を仕掛ける。
飛翔し、上空から敵軍に攻撃を仕掛け、そのまま飛び去り、
旋回をしてきて再アタックを繰り返すという寸法だ。
こちらは連戦連勝の上、秘密兵器もあるため、兵士達の士気も高い。
◇
「兄上の軍が穴から出ないなら、こちらには穴まで近づける秘密兵器がある。いよいよ兄上の最後だ」
バウソナ陣営の後ろには、布で覆った物体がいくつ控えていた。
塹壕の方には、ニホバル陣営の兵士達の頭が見える。
その風景を見たバウソナはほくそ笑む。
「いよいよだ。いよいよ兄上が敗北する。」
「第四回模擬戦、はじめい!」
ロンオロス王の号令が掛かった。
プオープオープオーと角笛が鳴り響き、バウソナ陣営は陣の後ろに控えていた物体の布が取り去られる。
情報どおり、バウソナ陣営の秘密兵器は鉄の盾を取り付けた台車だった。
それを確認したニホバル陣営も檻の布を取り去った。
バウソナ陣営の兵士達は、顔面蒼白になる。全身から血の気が引く思いをした。
バウソナ陣営の鉄の盾を取り付けた車を押す兵士達は、塹壕に突撃をするが、
ニホバル陣営は上空から攻撃を仕掛けてくる。
上空からの猛攻に弓矢と魔術で対抗したが、反撃は当たり難い。
飛来速度の速い敵軍に波状攻撃を掛けられ、抵抗虚しく敗れ去る。
そして結果は、
バウソナ軍の全戦全敗の記録を達成した。
◇
「父上」
「もうよい。
バウソナよお前はニホバルに全て敗けたのだ。これは決定事項だ。
ニホバルから余は、後方にて指揮を執る王は、必ずしも強くなくても良いのだと教えられた」
諸戦の間、総大将たるニホバルは自陣を動いていない。
ニホバルの完全勝利にロンオロス王は、時代は動いているのだという事を思い知った。
見事な作戦を練り、采配を奮い、連戦を勝利したニホバルを、このまま隠居させておいて良いものだろうか。
家庭教師たちの意見や見解を元に決めた王位継承権だったが、隠居に封じたニホバルに見事に覆された。
ニホバルという才能が埋没したままで、我王国ハユバムの未来は見えぬ。
何なら、ニホバルをもう一度王位継承権第一に昇格させるか。
ロンオロス王はニホバルにもう一度、王位継承権第一に昇格させる事を通達した。
しかし、ニホバルからの返事は
「辞退しとう御座います。俺にはまだまだやりたい事がある。政事ならば
バウソナにお任せ下さい」
というニベも無い返事だった。
これも若隠居させて、放蕩者にしてしまったからだろうか。
ロンオロス王は苦悩に苛まれた。




