14「模擬戦③」
「ニホバル様、バウソナ様は騎馬兵と歩兵を用いる様子に御座います」
ツェベリから報告が入る。
騎馬兵と歩兵か。
ふっ。塹壕戦を仕掛ければ、そんなもの敵じゃないな。
早速自陣側に塹壕を掘るか。馬防柵は構えない事にする。
ただひたすら塹壕戦にて迎え撃つ。
「ニホバル様、穴に隠れて攻撃するなんて弱腰ではありませぬか? 勇猛とは程遠いかと」
部隊長のビガラスは不平気味に注進した。
こちらの陣営は二連勝して士気が高い。
ならば、同程度の構成で当たっても負ける気がしなかった。
だがニホバルは「要は勝てば良いんだよ」と不敵に笑う。
◇
バウソナはニホバルから二連敗を喫し、悔しさと怒りで体が爆発しそうな思いだった。
転生者であるニホバルと違い、バウソナは世界の戦争の歴史というものを知らない。
知らないが故に、ニホバルの戦術の先の先を考える事が出来ない。
歩兵が騎兵に翻弄されるのは、先の模擬線で思い知った。
しかし、馬上の騎兵が、必ずしも最強とは限らない。
相手が騎兵で来るなら、歩兵には兵を馬から引き摺り落とすための鉤付きの竿を用意しよう。
馬上の騎士を引き摺り落とせば、単なる歩兵に過ぎない。
ならば、敵の騎兵を削る作戦に出る事にする。
相手の騎兵が減れば、こちらの騎兵で翻弄出来る筈だ。
◇
「第三回模擬戦、はじめい!」ロンオロス王の号令が掛かった。
プオープオープオーと角笛が鳴り響き、バウソナ陣営は太鼓の音で進軍を開始した。
ニホバル陣営は穴に隠れ、動かない様子。
割と狭い穴に身を隠す兵達を見て、バウソナ陣営は、笑いを堪えるのに必死のようだ。
「臆病者めが。あの程度の穴など、馬で越えられるわ、今度こそ蹂躙してくれる」
いざ始まってみると、予想とは違う様相を見せ始めた。
バウソナ陣営は塹壕を越える事はおろか、辿り着く事すら許されなかった。
突撃して来る者は、兵も馬も格好の的となり、片っ端から狙い討ちにされ、
狙われる兵達には、身を守るのは盾のみ。
集中砲火相手に盾だけでは防御力不足。
一方的に飛び道具と魔術で攻撃され、塹壕まで辿り着く事は不可能だった。
攻める側は、塹壕という鉄壁に守られた守り専門の相手から、逆に蹂躙される。
対して、塹壕の中から敵を狙い撃つ者に、被害はほとんど無い。
飛び道具や魔術を一端は放った者は、頭を引っ込め、次の者と交代し一息つく。
ニホバル陣営はこのサイクルを延々と繰り返すだけ。
遠方からの敵の攻撃は地面に阻まれ、兵士達にたいした怪我は無い。
ヨーロッパで戦争が膠着した塹壕戦を舐めてはいけない。
攻める兵にとって、塹壕戦はミンチマシーンに変貌する。
その頃、膠着した塹壕戦をなんとか突破するために、毒ガスが作られたんだよな。
この世界の模擬戦に毒ガスは登場しない確立は高いと思うけど。
バウソナ陣営は三度目の敗北を喫し、兵士達の士気は益々ダダ下がる。
◇
「父上ー。父上ー。父上ー。父上ー。何卒、何卒、何卒」
そして第四回戦にもつれ込む。




