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128「ニホバル王子」

四日過た日に、ニホバル達が帰って来た。

今回は領内の街での打ち合わせがあり、話は上手く纏まっての凱旋だ。


「お帰りなさいませニホバル様、先日シレラ様達が訪ねて御出でになりました」


「え!シレラ様が」


ニホバル達が出立した後に、アサスウイアのウィラクバリラ女王からの伝言が届いたとも言う。

ニホバルは焦った。


異世界の女神が、出張中の留守に訪れてくれたのだ。

シレラ達は、アビスナ王太后の招待を断って、街中の『剣と轍亭』という宿屋に宿泊しているという。

どうやらニホバルが帰って来るまで、ザウィハーに滞在しているらしい。

シレラ達が王城を訪れた時に、無礼を働いた者がいたという話がされた。


「これはやばい、すぐにでも無礼を働いた者を連れて謝りに行かなければ」


シレラ達に誰が対応に出たのか調べられ、当時の守衛と侍従長のベナリサが連れて来られた。

ベナリサが言うには、みすぼらしい冒険者の娘達が、無礼な態度でニホバル王子様を名指しで呼んだと言う。

故に失礼な冒険者に対し、けんもほろろに対応したのだと言う事だった。


「君はなぜシレラ様にそんな無礼を言うんだ」


ニホバルはベナリサを問い詰めた。

公には言えないが、シレラ達は身分を偽った神という事をニホバルは知っている。

神は神でも時空の支配者、最強の戦女神という事も。


王族が「様」付けして言うのは、身分が同等かそれ以上の相手、

なのにニホバル王子様はあの冒険者をシレラ様と呼んでいる。


「薄汚い身形の冒険者が高貴な者とは露知らず」ベナリサは謝罪した。


そもそも冒険者は食い詰め者、正規の職業に就かない者、傭兵を受ける者等々

社会の底辺の者ばかり、貴族や王族と対等ではないというのが普通の認識だ。

しかも荷車に乗ってやってきた姿は高貴な者とは掛離れている。

確かに「神」は高貴なる者かと問われれば、人族のヒエラルキーの外の者であるのは確かだけど。


取敢えずベナリサと当事者の衛兵を連れて宿に謝罪に行く事にした。


「ルリアもまたシレラ様たちと会いたいです」


ルリアも付いて来た。


丁度タイミングも良く、シレラ達は宿屋にいた。


「異世界でのお礼と、今回の無礼のお詫びに参上しました」


ニホバルはしきりに頭を下げて謝罪を繰り返す。

ベナリサと当事者の衛兵は訳が解らないでいる。

なぜ一国の王子が冒険者如きに平身低頭になっているのかと。


「ああ、ニホバルさん、もう良いよ、私らもう怒ってないから」


「むう、この人達はニホバル王子様に何と言う口を…」


「お黙りなさい!」


ベナリサはツェベリに一発貰って口を噤む。

二人はツェベリに促されて最上級の謝罪をするのだった。


「それより、ピルアーナがニホバルさんにお願いがあって来たんだけど、聞いてもらえる?」


「は、はい、何なりと」


ピルアーナの願いはハディゼキヌ領でのコンサートをユゲル君に頼まれたからお願いしたいとの事だ。


「ダメですか? お金だったら私が何とかしますので」


……ピルアーナさんはお金持なのかな?


皆は街の外に連れて行かれた。


「んー、これで良いかな?」


街壁の近くに埋まっていた巨大な岩石を、ピルアーナは金塊に変えた。


「ニホバル王子様、これで費用は足りるでしょうか?」


何十㌧あるのか判らない純金の巨大な塊だ、足りない訳が無い。

鋳潰して金貨に鋳造したら、何百万枚になるのか判らない分量がある。


「シレラ様達の頼みだから、無料で良かったんですが……」


「足りないようでしたら、お申し付け下さい」


ハの字眉でピルアーナは恐縮して頼んでくる。


ピルアーナからのお願いとして金塊を受け取り、

ニホバル達は公演スケジュールの組み直しに掛かるのだった。

シレラ達一行を館に案内して、各部署の説明を始めた。


「何でもニホバル王子様は多くの精霊達を使っているとか」


ピルアーナは不思議に思っていた。

精霊使いは1柱の精霊を使うのがやっとのはず。


「ああ、それなら彼女達に聞いてもらえば」


リャナンシーのルノア

サテュロスのメフルア

土精霊ノーム『ラゴ』

水精霊ウンディーネ『ランウネル』

風精霊シルフ『ユネペイア』

光の精霊『カンデラ』『ルーメン』『ルクス』

火の精霊サラマンダー『ウラークル』

薬草の妖精アルラウネ『レケシウネ』

たちが紹介された。


「ひえ!こんなに沢山の妖精や精霊達が仕えてるんですかぁ」


ピルアーナは仰天するしかなかった。

精霊の皆は、今の仕事が好きで、ニホバル王子に協力をしているのだと口を揃えて言う。

精霊達は誰もニホバル王子からマナの代償を受け取らない。

自分達の仕事で、喜んでくれる人達の心が嬉しいし、誇らしいのだと言う。


その理由はピルアーナにも、十分に納得出来るものだった。

精霊達から好かれるニホバルと、友達のシレラ達を誇らしく思えた。


「準備に三日ほど掛かりますので、準備出来たらハディゼキヌ領へ向かいましょう」


ハディゼキヌ領へ公演を伝える伝令をツェベリが手続きを始めた。

その後応接室に通されたシレラ達は、旅での数々の話題で盛り上がる。

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