127「ザウィハー到着」
シレラ達はようやく首都ザウィハーに到着した。
「ほー、流石ニホバルさんの国でありますなぁ、アシャンレニルとは大違いなのであります」
「ニホバルさんに会うためには、城へ行けば良いのかな」
アサスウイアのウィラクバリラ女王から、伝令は来ているだろうからすぐに会えるだろうと皆は思っていた。
大体どこでも王城というのは首都のランドマークになっているから、見付けるに難しくは無い。
城門に辿り着いたシレラは守衛の兵に声を掛けてみた。
「私達ニホバルさんに会いに来たんだけど、呼んでくれる?」
王国の王子様に会いに来たと言う冒険者の女性達、ものの言い方から不信感を抱いてしまった。
本来なら社会的地位としては底辺にいる冒険者風情が、衣装にも気を使わず、王族に対する言葉遣いもなっていない。
ニホバル王子には、音楽関係で訪れる者も多いから、取敢えず城内の者に取り次いでみた。
対応に出て来たのは侍従長のベナリサだ。
「礼儀を知らない薄汚い冒険者風情が、王子様を名指しで呼んだですって?」
「摘み出しましょうか?」
アサスウイアのウィラクバリラ女王からの伝令は届いてはいた。
女王の伝言は大臣・王族に直通で伝えられているから、侍従長など城内の使用人が知る由は無い。
更にタイミングの悪い事に、ニホバルは領内の査察で出かけている最中でもあった。
侍従長のベナリサは、荷車に乗った冒険者の女達を眺め回して口を開いた。
「ニホバル王子様は只今外遊中であります。
御用がありましたら、冒険者ギルド長を通して面会願いを届けてからになさいませ」
顔を見合わせるシレラたち。
「アサスウイアのウィラクバリラ女王からの伝令は届いていないの?」
「伝令とは何の事でしょう? 私共には通達はありません」
どうしても入城も取次ぎもしてくれない様子。
「仕方ない、出直そうか」
シレラ達は引き返して宿屋を探す事にした。
街中で見つけた安宿に馬車を預け、酒場に情報収集に出かける。
「あんな対応されて頭にきちゃいますよね」
ピルアーナも気分を害している。
「大抵お貴族様ってあんなもの」
「せっかくここまで来たんだから、観光でもしようか」
「そうであります、その方が良いのであります」
「へいっ、エールお持ちしました、お客さんもしかしてニホバル王子様のお客さんかい?」
酒場で聞いた話では、音楽が始まったのは、この酒場からと酒場のオヤジが自慢していた。
看板の横には小さな看板で音楽発祥の酒場と書いてあった。
ニホバル王子の指導で、吟遊詩人を集めて始まったのだと言う。
「へー、あの格好良い演奏でありますか」
「そんなに良いんですか? 早く私も聴きたいです」
「ニホバル王子様を尋ねて来たんなら、貴族の邸宅がある地区の館に行った方が早いかも知れませんね」
「館?」
「そこが楽団の練習場にしているそうですよ」
「え? そうなの」
酒場のオヤジさんに地図を書いてもらい、シレラ達は行って見る事にした。
その館はすぐに見つかった。
守衛も門番も見当たらない。
「そういえば、どっかに出張中だって言ってたね」
「帰って来たら、今度はここに来れば良いのであります」
そういう話をしていると、館から走り出てきた者がいた。
表で立ち止まっていたシレラ達を見つけた養成所長のルノアだった。
「シレラ様方、遠い所をようこそ御出で下さいました」ルノアが挨拶をした。
ルノアにはシレラ達の事は伝令から聞いていた。
街に入った事を聞きつけ、迎えに出たルノアだったが、シレラ達が先に王城に行ったり、
街中を移動していたため、行き違ったらしい。
一行は館の応接室に案内され、この館を訪れていたアビスナ王太后も同席していた。
「あはは、それは済まなかったね」
「申し訳ないのであります」
「ごめんなさい」
「シレラ様と一緒のその方は?」
ルノアはピルアーナの事を知らない。
「あ、私はジンニーヤのピルアーナと申します。シレラさん達と同行して来ました」
「同行の目的は?」
「え?あ、それは…」
しばらく話の間が空いてしまった。
ピルアーナがここに来る目的を失念してしまったからだ。
「ああ、ピルアーナはハディゼキヌ領のユゲル君に、コンサートをまた観たいって頼まれて私らと一緒したんだよ」
「すいません、そんな大事な用件を忘れてしまって」
「ヘルトルの精霊使いに使命を奪われたから、記憶から抜けたんだ」
「まあ、それは大変な旅だったのですね」
やっとここまで来たけど、城で門前払いされた事も笑い話として話すシレラだったが、
「それは大変な失礼を致しました。無礼な対応をした者には罰を与えますので」
アビスナ王太后は、青褪めて酷く恐縮してしまった。
ルリアから、シレラ達の正体を聞いているアビスナ王太后には笑い事ではなかった。
わざわざ遠い所から訪ねて来た、異世界の女神様に無礼を働くのは以っての外なのだ。
しかも、その女神様は最強の戦女神だから、怒らせば国が無くなるだけじゃ済まない事態になり兼ねない。
幸いにもチャンディーは、そこまで心の小さな神では無い。
心が小さかったら、冒険者なんてやってられないのだから。
「ああ、ニホバルさんのお母さん、そこまでお気遣いは無用なんで」
「そうであります。 私達には笑い話なのであります」
「ん、そう」
恐縮したアビスナ王太后は、国王の別邸で一行に休んでもらおうと思ったが辞退されてしまった。
「あ、ニホバルさんのお母さん、私らは気侭な冒険者だから、街の宿の方が落ち着くのであります」
堅苦しいのは、本心から苦手なチャンディー・ヴィカラーラ様だった




